正しい血圧値を測っていない人が多い
高血圧の患者さんが、血圧を毎日測って記録することは大変大切です。高血圧ではなくても、時々健康管理のために血圧を測っておくことは意味あることです。しかし私の多くの経験から、患者さんの血圧の測り方に問題が多いことに注目しています。
血圧を正しく測っていないために、以下のようなこと等が起こります。
・「自動血圧計はでたらめで、高くなったり低くなったり、ぜんぜん信用できない」
→ 測り方が間違っていること、血圧に変動があることを理解する
・「血圧が心配で血圧計を買って測ったが、いつも信じられなく高いから測らなくなった」
→ 実際に高いのだが、測り方に問題があるので、真実の値以上に高い値を測定している
・「測ったらすごく高い値だったので、何度も測ったら、どんどん高くなっていってしまう。心配になり焦って受診した」
→ 興奮して不安になったため血圧が異常に上がってしまった
・「先生が測る値と、自動血圧計の値がだいぶ違っています。どうなんでしょう?」
→ 白衣高血圧を含め、そんなことはよくあるものです
正しい血圧の測定が出来ない原因は3つ
以上の患者さんの訴えは、どれも理由のあることで決して間違いではありません。しかし、正しく血圧を測ってなかったか、その値の意味をよく理解できなかったために起こった問題であると言えます。その問題点は大別して3つあります。
1)自動血圧計を正しく装着していないので、間違った測定値を見ている。
2)血圧値は正しく測られているが、血圧は心理的な要因で大きく変化することを理解していない。
3)測定時、マンシェットが腕を強く締めすぎて痛くなり、その痛みで血圧が上がる。
この問題に対する解決方法をお話します。
1)マンシェットを正しく装着する
下の写真をよく見てください。椅子に座って、このような姿勢で、腕に巻く部分(マンシェットといいます)をこの図のように装着するのが正しい方法です。そしてマンシェットの位置・高さ・巻き方を、使用説明書に書いてある通りに、よく読んで間違えないで、正しく巻いてください。これをいい加減にしていると、表示された血圧の値は間違ってしまいます。
椅子に座り、この姿勢で、マンシェットをこの位置に巻いて、測るのが正しい測り方です。
2)血圧は心理状態で大きく変動するもの
血圧は機械のように一定値ではありません。いつも変動しています。極端にいえば、心臓の動き一回毎に、血圧は変わります。何度測っても血圧は同じ値にはなりませんし、全部違っています。それが普通です。
さらに、動いたり、運動したり、興奮したり、怒ったり、本を読んだり、笑ったり、泣いたりと、ほんの些細な感情の起伏でも血圧は大きく変化してしまいます。
最初に測った血圧が予想外に高く表示されると、驚いて不安となり感情が高ぶってしまうので、そのあとに繰り返し何度測ってもさらに高い血圧になってしまうのです。
不安感が血圧を押し上げてしまったのです。ですから血圧は正しい値を示しているのですが、本人はそんなはずはないと血圧計を信用しなくなってしまうのです。
3)測定時の、最高上昇値の設定を低くする
設定してある締めつけの最高血圧が、200mmHgくらいになっているのだと思います。測定の時に締めつけで毎回腕が痛くなる方は、その設定を低くすればいいのですが、そう単純ではない場合がありますので、一度医師に相談してください。
間違った血圧測定をしないために
この3点は、高血圧の患者さんが自分で家庭血圧を測定し始めて、最初に経験する通過儀式みたいなものです。
当院の患者さんは、血圧測定で私からいろいろな指導や注意を受けますので、正しい血圧を測って、正しく意味付けできるように徐々に成長していきます。この過程を上手く通過できないと、血圧に対する誤った固定観念が出来上がって、かえって有害となってしまいます。そんな患者さんに何度もお会いしています。こんな固定観念にとらわれた患者さんの考え方を直していくのに、かなり手間がかかりますので、やりきれなくなる事もあります。
最近は精度の良い使い易い自動血圧計が安く多種類売られていますから、誰でも手軽に自分の血圧を測ることができて、大変良いことだと思います。しかし、以上の3点はいつまでたっても無くなりませんから、血圧を測り始めて測定方法で悩んでいる方は、一度医師に相談して、血圧測定についてよく指導してもらうと良いと思います。
この写真の様な姿勢、腕の高さ、マンシェットの巻き方・位置を参考にしてください。