要約:
原因は?気をつけることは?
過敏性腸症候群は、精密検査である下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)を行っても、異常を認めないすなわち器質的疾患がないにも関わらず、腹痛や下痢、便秘、ガス、腹部膨満感等の症状を来す疾患です。言い換えれば大腸カメラで異常が何もないと確認することも大切な診断の一つです。
ストレスが多い人が排便障害で悩んで医療機関を受診した場合、すぐに過敏性腸症候群だと決めつけるのは危険です。器質的疾患、すなわち慢性的な腸炎や悪性腫瘍(癌)などが背景に隠れていないか一度きちんと検査することも必要ですので、これは主治医と相談するべきでしょう。
過敏性腸症候群の原因はまだ詳しく解明されていませんが、主にストレスや心理状態乱れから自律神経異常が起こり、これが腸の働きに異常をもたらすと言われています。
脳と腸は自律神経で繫がっているため、ストレスを感じると腸の蠕動が盛んになり腸で水分吸収が正常に行えず下痢となる場合や、逆に腸の蠕動運動が減少することで腸管内に便が停滞貯留することで水分が吸収されすぎて便が硬くなり便秘を引きおこします。
日常生活ではストレスにより暴飲暴食になりがちだったり、不規則な生活や睡眠不足などで排便サイクルが乱れている可能性や、腸内細菌バランスが崩れていることがあります。
食事では乳酸菌飲料やヨーグルトや食物繊維の摂取などで軽度改善を認める場合もありますが、症状によってはかえって悪化する場合もあるので自己調節は難しいのが現実です。
過敏性腸症候群を治すには?
過敏性腸症候群の患者さんは医療機関を受診せずに症状を我慢していたり、市販の薬を使ってる方も多いのです。元々ストレスを感じやすい性格の人がこの症状を起こしやすいため、ストレスを感じにくくするということやストレスを解消するといったことが根本的治療にあたります。
根本的治療法としては心療内科で認知行動療法を行うことも実は大切だと考えます。心療内科を受診することに抵抗がある方も多いですが、診察を受けた後にはほとんどの患者さんが行ってよかったと言われます。
対処療法として、内科では過敏性腸症候群の専門の内服薬が幾つかありますので、これがうまく合えば症状はかなり改善します。内服薬を使用しながら医療機関を定期的に受診していくうちに生活環境が変化し、根本的原因であるストレスが解消されて内服薬を必要としなくなるケースもあります。
排便は毎日行う生活習慣なので、排便障害を改善するということは大変重要なことです。一人で悩まずに、専門の治療を受けることをお勧めいたします。