小児期の肥満による成人期の社会的アウトカム
小児期(10歳)に肥満であることが、成人(30歳)してからの社会的状況にどのように影響するかという興味ある研究があったので紹介します。2005年のイギリスからの報告で少し古いのですが参考になるかも知れません。研究者らは、小児期と成人期の肥満が、成人期の様々な社会的アウトカムにどの様に影響を与えるかを調べました。
その研究データから得られた結論は、小児期だけの肥満で成人期で肥満がなければ、長期的な社会的影響は少ない。しかし女性では、小児期から成人期まで肥満のままでいると、成人期の雇用が不利になり結婚相手にあまり恵まれない可能性が高い。しかし男性ではそのような傾向はない、ということが示唆されました。
この研究の方法は、10歳および30歳時のデータを提供できた8,490人を対象としました。このうち、4.3%が小児期に肥満であり、16.3%が成人期に肥満でした。小児期に肥満であった人の52%は成人期でも肥満のままでした。
分析では、1)単純労働の仕事に就いている、2)就職したことがない、3)現在失業していて職を探している、4)16歳以下で就学を止めた、5)結婚したことがない、6)現在パートナーがいない、7)心理的に病的な状態である、8)長期的に罹患している(家庭または仕事での活動が制限される)、という様々な社会的帰結を評価しました。
結果は、小児期だけの肥満では、これらのいずれとも関連がなかった。しかし女性では、小児期から成人期まで肥満が続いた場合では、就職したことがないこと、および現在パートナーがいないこと、で有意に関連していた。
出典:小児期の肥満による成人期の社会的アウトカム Adult Social Outcomes of Childhood Obesity [New England Journal of Medicine 2005 July 15]