患者さんは言葉には出しませんが、医療機関に熱く期待している事があります。当院はその期待にどのように対応してきたかをお話しします。
このテーマで1回目が、「◆124 「安全と確実」は、医療への真剣な期待:当院の場合」 です。
2回目は、◆129 「早期発見・早期治療」は、医療への大きな期待です。
3回目は、◆133 「個人情報の守秘」は、医療への当然の期待です。
診療の基本的な考え方
病気の検査や治療には多くの種類と方法があります。当院では独自に基準を設けてその基準に合致したものだけを採用し診療を行って来ました。
その考えの基本は、医療の「安全と確実」です。この2つをいつも最優先して薬や検査の選択にこだわってきました。「最新の方法」、「話題の薬や検査」、「費用が安い」、「手軽に早くできる」、「辛くない」、「患者さんが好む」、「よく効く治療だと評判」などの情報は十分考慮しますが、それを選択の最優先とすることはありませんでした。
「安全と確実」は、医療機関に最も強く求められる原則だと考えます
医療の「安全と確実」が、医療機関に最も期待されることだと考えてきました。しかし当院で考える「安全と確実」な医療は、時に患者さんが好むものではなかったり、お手軽でもなかったり、話題性のある最新の方法ではなかったり、楽ではなく辛くて苦痛を伴うこともあったり、費用も安くはなかったりします。そんな時でも、理解していただけるよう十分な説明をしてその検査や治療を患者さんにお勧めしてきました。
医療内容が「安全で確実」か、これは医療の専門家でも評価が難しい問題です。当院で実施する医療は、当院のような第一次医療診療所レベルとして、患者さんに十分お勧めできるものと考えています。医療内容は現段階で可能な限りに「安全で確実」であると私たちは思っています。しかし高度医療、先端医療、専門外医療、高度に侵襲的な医療、入院医療は当院では対応できません。このような患者さんは、出来るだけ早く適切な医療機関をご紹介しております。
先端医療や高度に侵襲的な医療では、「安全と確実」について、当院のような第一次医療機関とは全く基準が異なります。そのような役割を担う高度医療・先端医療機関では、当院とは異なるレベルの「安全と確実」の基準で診療していると思います。
「安全と確実」、当院での場合
「安全と確実」を基本とする当院の診療方針の、具体的内容をいくつかご紹介します。
■ミスをしない仕事の緊張感と、ミス発見回避システムの構築
医師、看護師、事務員すべての職員でミスがないよう常時緊張感を持って仕事をしています。非常に軽いミスであっても、そのようなケースが発生すれば、その事例を当事者が詳細を記録し、全員参加の朝のミーティングで報告し検討し次回の発生を予防します。
また、ミス発見回避のための作業システムとしての構築は、どこかでミスが発生しても、それが別のどこかで内部発見され、訂正され、患者さんにまで大事が至らないように、多重に仕事内容を内部チェックする事前のミス発見回避システムの考えを組み込んでいます。
■専門医が広く認める治療や検査
古い伝統的な治療や検査であっても、最新の治療や検査であっても、専門医がその治療や検査の安全性と確実な効果を広く認めていることが条件です。
■自分自身にも不安がないこと
自分自身が患者になった時でもその治療や検査に不安や抵抗を感じないこと。一般には優れているとされる薬や検査でも、患者の自分には使いたくない場合は採用しない。
■新発売の直後は採用しない
全く新しいタイプの新薬なら、発売されてから少なくとも半年以上は重大な副作用報告が無いこと。新しい検査機器なら最低、厚生労働省から健康保険適用を受けていることが条件です。
■画期的であっても、当院で納得できること
脚光を浴びている画期的な新しい治療や検査でも、私たちが安全性と有効性がまだ不確実と思うなら患者さんに勧めないし、依頼されてもまだ使わないと説明します。
■世界最初に開発した会社製品(先発品)を優先
同じような薬や検査なら、その薬や検査法を世界で最初に開発した会社の製品を優先する。それが「安全で確実」です。
■信頼性に疑問ある会社の場合
製品の信頼性に疑問を持つ製薬会社や医療機器会社なら、その会社の商品は原則として使わない。
■当院での施行にリスクがある検査や治療の場合
当院での実施にリスクがあり、十分な自信が持てない治療や検査が必要な患者さんは、別の病院に紹介します。
■薬剤採用には7つの条件
薬剤の採用については、効果を評価する上で当院では7つの条件を考慮しています。この基準に耐えられる薬だけが意味あると考えます。詳しくはここをお読みください。→◆049 良い薬 その見分け方
■院内薬局を維持する
薬局も、薬の「安全と確実」の観点から院内薬局を維持します。院外薬局の方が当院にとって経費節約の点で有利なことは確実です。しかし経営の大きなコスト増因子を許しても、患者さんに手渡す薬の「安全と確実」を、自院責任で保証するために院内薬局を維持しています。
多くの患者さんを、多くの病院に紹介しました
開院以来20年、当院ではこのような方針で診療してきました。結果的に毎年たくさんの患者さんを多くの高度医療機関や専門病院に紹介することになりました。毎年1月には院内掲示板に、前年の患者紹介した病院名と患者数を全て公開しています。
それらのお蔭だと思いますが、これまで患者さんに大きなご迷惑をかけずに済んでおります。また重大な医療上の問題は一度もありませんでした。「安全と確実」を更に徹底向上するために、職員一同今後も緊張感を持って診療していきたいと考えております。