画像:不思議の国のアリス
私のコラムでは、これまで多くの高血圧の話題を書いてきましたが、そのテーマの中心は「見せかけの高血圧」のような本物の高血圧ではない一時的な「偽物」の高血圧でした。何故この様な偽物ばかりを書き続けているのか疑問に思われた読者もいると思います。今日はそんな疑問にお答えします。
血圧は、診察室でも家庭でも、正常値に保つ
この地で25年間開業し地域の患者さんを診察してきました。高血圧はありふれた病気で当院でも一番数が多い病気です。降圧薬でシッカリと治療し、ほとんどの患者は診察室血圧はほぼ正常にコントロールされています。診察室血圧の正常とは、当院では130/80mmHg以下のことです。当院では年齢を問わず正常血圧が一番良い状態であるとの考えで長年この原則で治療してきました。
血圧が低くなりすぎてフラフラする人がたまにいますが、大多数の患者ではその治療で重大な問題を起こした人はいませんでした(◆高血圧 薬で下り過ぎると危険ですか?)。
厳格な高血圧治療だけでなく、体重、糖尿病、高脂血症なども厳格な管理を徹底して、患者の脳卒中発症率と心筋梗塞発症率は全国平均を大きく下回り、介護認定される人の割合も当市の平均値を大きく下回っています(◆診療実績2012年:月刊 ”血圧”「町のお医者さん」掲載記事)。通院中の超高齢者(85歳以上)も多くが元気でクリニックへ定期的に通ってこられます。年齢を問わず正常血圧まで下げておく当院の治療方針に間違いはなかったと確信しています。
急に血圧が上がるのはよくある事
長年の診療経験で多くを学びました。すでに血圧治療中の患者でも、時々一時的に血圧が高くなることは全く普通であることも知りました。高血圧の薬剤治療中の患者で診察室の血圧がいつも安定し正常であるにもかかわらず、突然何の理由もなく高く出ることがあります。例えば、いつも診察室血圧が120/70mmHgの人がある時150/85mmHgになっています。
そんなケースでは必ずその原因を患者と一緒にその場でしばらく考えることにしています。そんな経験を長年繰り返しているうちに「見せかけの高血圧」シリーズでお話ししたような事が普通のことだと知りました。患者もそうなりやすいタイプがいるのは事実です。そんな患者には時々高くなっても心配しないように、またその時の対処法などを話しています。一時的に高くなっても患者は安心しています。
また、血圧が急に高くなったと心配して当院を初めて受診される患者の中にも、高い血圧は一時的に上がっただけの「見せかけの高血圧」の人がいます。その割合は、印象的に1~2割程度でしょうか、決して少ないわけではありませんが、そんなに多いほどではありません。
大多数の高血圧は「本物」。偽物は例外
そのような私の経験をまとめて整理して話したのが「見せかけの高血圧」シリーズでした。私のコラムを読むと高くなった血圧は「見せかけの高血圧」ばかりで、本物の高血圧などいないのではないかと思ってしまうかも知れません。しかし決してそうではありません。高血圧の大多数は本物です。誤解なさらないで下さい。
本物の高血圧を治療中の人であっても、時々「見せかけの高血圧」になることも珍しくありません。そして一部の患者はその高くなった血圧の理由が分からず不安で悩んでしまいます。その悩みがまた血圧を高くするという悪循環に陥るります。そんな患者も多く診てきました。
当院だけでなく全国にもたくさんいるはずですから、そんな患者は私のこのコラムを参考になさればよいと思い書き続けてきました。遠方の人から私のコラムが大いに参考になったとお褒めと励ましのお言葉が届きます。
「見せかけの高血圧」だけに注目しない事
「見せかけの高血圧」だけに注目して、本物の高血圧を治療せず放置するような間違いはしないで頂きたいと思います。本物の方が圧倒的に多いのです。本物と偽物を区別して下さい。
「見せかけの高血圧」は高血圧の中ではむしろ例外だと思って下さい。しかし誰でもいつでも起こりうることです。もしあなたがそうなった時には、私のいう「見せかけの高血圧」の考え方を参考にして「こんなこともあるのだ」と理解し冷静になるようにして頂ければよいと思っています。