高血圧　それでも長生きできますか？　◆622

高血圧は年齢以上に体の劣化と老化を速める病気です。加齢とともに老化は進行しますが、その速度を速める因子があります。高血圧はその中で最悪因子の一つです。

一般的に高血圧では実年齢より老化が進んでいますから長生きできる可能性は低くなります。たとえば年齢が６０歳でも体の中は７０歳と考えれば理解しやすいでしょう。

長寿とはただ長い時間を生きたことではなく生活の質でも人生最終期まで自立して健やかに生きることが大切です。この面でも高血圧は不利な病気でしょう。もし長く生きても自立した幸福な高齢生活は可能性が低いと予想します。

人生は一回きりです。高血圧治療の最終的成果は誰も断定的には分かりませんが、高血圧の影響を知らず後悔するより、知って可能性の高い道を選んで下さい。

高血圧は血管を劣化させる病気です。全身の血管を劣化させる因子はたくさんあります。年齢、高血圧、高コレステロール、高中性脂肪、高血糖（糖尿病）、高尿酸、肥満、喫煙、ストレス等々ですが、年齢を除けば恐らく高血圧は最悪因子の一つだと思います。

全身の血管が老化することは全身の細胞への栄養補給が傷害され細胞代謝が不十分となり全身細胞の劣化を加速します。この血管の劣化を「老化」と言い換えれば、高血圧は血管の老化を加速させ全身の細胞老化も加速させる悪い因子であると言えるでしょう。
◆老いは血管から「高血圧なら早く老ける」

 

高血圧は実年齢以上に老化する

年齢が上がれば体に老化が起こるのは誰も同じですが、その老化の速度には個人差があります。老化の速度は誰も同じではありません。

元々長寿の家系であれば、この老化進行が遅い遺伝子を持つのでしょうし、老化が早く早死の家系であればそんな遺伝子を持っているのでしょう。実際はそれほど単純ではありませんが、老化進行が遅いほど年をとっても若々しく見えますし、体内の血管や臓器も年齢より若いと思います。

高血圧であれば、この老化劣化が速く進行することはほぼ疑いないでしょう。もし高血圧の治療をしなければ、確率的にですが、速い老化で風貌は実年齢より老けて見え外から見えない体内臓器も実年齢より老化劣化が強いでしょう。

 

なぜ高血圧治療をためらうか

にもかかわらず多くの人が高血圧の治療をためらうのは長年月にわたって薬を飲み続けなければならない事が理由の一つかも知れません。 ◆高血圧の薬を始めた。いつまで飲むのか？

また治療薬による過剰な血圧の低下に悩まされた事が理由なのかも知れません。 ◆高血圧　薬で下り過ぎると危険ですか？

降圧薬の副作用を恐れているのかも知れません。 ◆高血圧　誰でもわかる、薬の副作用はどんなものですか？

高血圧の明らかな症状にまだ全然気づいていないのかも知れません。 ◆高血圧　三大症状

そんな多くの人の誤解や不安を少しでも解消して後悔しない将来になるように、正しい選択ができる情報をお伝えできればと思います。

高血圧でも長生きできる？

「長生き」をどう定義するかですが、日本人の標準的な平均寿命を基準にするか、自分の親や祖父母の寿命を基準とするか、自分と同年代人達の寿命を基準とするのか様々ですが、どこまでを長生きととらえるかはある意味で個人的感覚だと思います。

しかし、一般的な話をすれば、高血圧なら実年齢より老化が進みますから「長生き」は出来ないだろうと言うのが標準的な感想です。勿論その予想は百パーセントではありません。長生きできない確率的可能性が高いのであって絶対に長生き出来ない訳ではありません。

あなたが今４０歳なら、高血圧をそのまま無治療で放置すれば、治療した場合に到達できるであろう寿命よりも確率的に短く人生が終わると予想できます。その終わりが６０歳か７０歳か分かりませんが（もし他の条件が同じなら）治療する場合よりも短いだろうと予想できるのです。

 

「高血圧のウソ」「高血圧なら長生きする」「降圧薬で殺される」「高血圧は放っておくのがいい」？

知識人と思われる人々が「高血圧を治療すると健康を害してかえって短命になる」とネットや著書で公表しています。しかしこの意見は世界の医学会の見解と正反対です。医学界がその見解に至った過程について少し補足します。

医師は多くの高血圧患者を自ら長年治療しその降圧効果を観察し多くの良い結果を得たことを確認しデータを医学研究論文にまとめ世界に公開しています。高血圧の治療に関する医学研究論文は世界中で膨大なものになるでしょう。

膨大な研究の成果を元に偏見なく論理的に導かれた世界の医学会の結論は「高血圧を治療すると脳卒中や心筋梗塞を予防し健康や長寿に確実に良い効果がある」ことです。たとえ研究論文で発表しなくても、私を含むほとんどの臨床医は高血圧治療の優れた効果を自分の経験から実感し確信しています。

「高血圧の治療が健康を害する」という見解には世界中の大多数の医師が反論するでしょう。しかし以下のような限定的で特殊な状況を想定するならその意見も理解できるかも知れません。 ◆見せかけの高血圧４：薬を飲まずに○○○で高血圧がなおった。本当ですか？

最終期の幸福は自立した生活ができること

「自分の親は高血圧だったが無治療でも８０歳まで生きていたから、自分の高血圧は治療しなくてもそれくらいは生きるだろう。そこまで生きれば十分」と考えるならそれはそれでその人の人生観です。

高血圧なら脳卒中になりやすいのは良く知られた事実です。一度でも脳卒中になれば、風貌や見た目の老化（年齢より老けて見える）、日常生活の活動性（寝たきり状態や日常活動に制限）、脳の活動能力（知性・精神活動の低下、認知症）など、人間としての総合的な社会活動能力が相当に悪化するのが現実です。

たとえ脳卒中にならなくても、高血圧を無治療なら、恐らく治療した人にくらべ総合的な社会活動能力は劣るでしょう。

「もし高血圧を無治療でも親と同じ８０歳まで生きたとします。しかし生きた年齢以外にも人生の最終期間をどのような生活の質で過ごせるか、これも十分考慮した方が宜しいです。あくまで確率的な予想ですけれども」と患者にはお話しします。

 

高齢の自立生活には不利

たとえ寿命が８８歳であっても、人生最後の１０～２０年間を如何に活動的に生き生きと生活できるかは、人生最後の幸福に直結する非常に大切な事だと思います。多くの人はそんな幸せな最後の生き方を「ピンピンころり」と期待を込めて話します。私が診察する高齢者はほとんどがこの生き方を強く希望しています。

長く生きるか生きないかだけでなく、生きている時の生活の質も高血圧とそうでない人では大きな差が出る可能性が高いと考えてください。私たちは多くの高齢患者を長年診てきました。

高血圧治療を含む医学管理の有無で、人生最後の生活に大きな差がでるのを多数経験してきました。差は明らかです。私達が患者に治療を強く勧める理由です。

 

高血圧を克服し幸福な天寿

患者はよく知らなくても私達は高血圧の治療効果を十分に知っています。高血圧をそのまま放置するのは止めた方がよいと心からアドバイスします。

人生は一度しかなく、リセットしてやり直しはできません。後悔しない人生にして下さい。

高血圧の五部作

血圧は高度に自動制御されている：
◆248 高血圧　測る度に違う。どの血圧が本当か？

高血圧にはハッキリと症状がある：
◆239 高血圧　三大症状

急に血圧が上がる理由は？：
◆080 安定していた血圧が急に上がった　その原因は？

薬で下がり過ぎることもある：
◆254 高血圧　薬で下り過ぎると危険ですか？

薬でも下がらない訳は？：
◆064 薬を飲んでも、血圧が下りません

高血圧でも、長生きするなら・・：
◆258 高血圧　それでも、長生きできますか？

高血圧コラムの中心サイト：
Web高血圧：高血圧のハブ

病気を上手に克服して、残り人生をより健康にするには・・・

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