「見せかけの高血圧」と本物の高血圧症
高い血圧の値が出ても直ちに病的な高血圧症だとは限りません。安静で正常血圧でも状況によっては驚くほど高くなることは良くあることです。そのような一時的な高い血圧を、私は「見せかけの高血圧」と言っています。その場合は急いで高血圧の治療や対策を考えなくてもよいと思います。
「見せかけの高血圧」と持続性の本物の高血圧症はハッキリ区別しなければいけません。その区別については、 ◆その高い血圧 治療が必要な本物か?、不要な見せかけか? で話しましたが、二つを区別する要点は一週間ほど家庭血圧を毎日測定してみることです。常時高ければ本物の高血圧症の可能性が高いと考えます。
「見せかけの高血圧」と本物の高血圧症では、血圧の下げ方に違いがありますから、まず自分の血圧がどちらであるか考えてみましょう。
「見せかけ」の簡単な下げ方
高い血圧が本物ではなくただの見せかけに過ぎないなら、その高い血圧は何かの理由で起こった一時的な現象と思われます。そんな状況とは、動き回った直後、話しながら、テレビを見ながら、寒い部屋で測った、緊張や興奮した直後に測定した等で高くなっても仕方がない状況で測定した場合や、病院で医療従事者が血圧を測る場合だけ異常に上がってしまう白衣高血圧、血圧計の測り方が技術的に間違っていた等も考えられます。 ◆家庭血圧 誰でもわかる、測り方のコツ
高い血圧が計測されたのは、どの様な状況だったか思い出してください。動き回った後なら座ってから少なくとも15分以上静かにして再度測ってください。動いていた直後の測定であったら、その後しばらく静かにしているだけで血圧は下がってしまいます。
高かったからと言って慌てて繰り返し何度も血圧を測らないで下さい。二度目は15分ぐらい静かにしてから再測定してください。不安感を持たないで下さい。不安が強ければそれでまた高い血圧になってしまいます。
検診や診察などで、医療従事者(特に医師)が血圧を測った場合に高くなる人がいます。高く出ると会社から再検査を指示されるので「高いと困る」などと不安を感じながら測定します。すると益々緊張して高く出てしまうのです。
再測定では、少し時間を置いてから測定前に1~2回深呼吸して緊張と体の力を抜きリラックスし目を閉じて無心で測定して下さい。それだけでも再測定で血圧は少し下がるでしょう。
「見せかけ」の対処法
「見せかけの高血圧」になる具体的な条件です。心当たりがあれば対応の処置を試してください。血圧は下がっているでしょう。
●寒くなりまだ暖房のない寒い部屋で血圧を測るようになっていた
→ 時間をおいて部屋が暖かくなってから再測定
●測定する前に動き回っていた、急いだり、興奮していた
→ しばらくして、体や気持ちが落ち着いてから再測定
●血圧を測る環境条件が、これまでと変わった
→ 条件を元に戻して再測定
●自分の何かの病気を心配し不安があった
●何かのトラブル、不幸、不安を抱えている
●最近しばらく多忙で過労だった
●血圧測定で高い値がでた。そのことが不安で心配している
→ 原因が解決するまで高いでしょう。原因の不安、ストレス、過労等を解消して下さい
●ドリンク剤、サプリ、漢方薬、他の病院からの薬などを飲み始めていた
→ 確認のため可能ならそれを止めて一週間ほどたってから再測定します
●前夜、睡眠不足であった
→ 今晩よく眠ってから、明日朝に再測定
●排便や排尿を我慢している時に測った
→ 用をすませてから測定する習慣をつける
●動いていたが座ってすぐ血圧を測定した
→ 座ってしばらくたってから測定する習慣を
●測定の時、いつも何かを考えながら測っていた
●血圧計の数値をじーっと真剣に見つめながら測っていた
●誰かと会話しながら測っていた
●テレビを見ながらや新聞を読みながら測っていた
●周囲が騒々しい環境で測定していた
→ 静かな落ち着いた環境で目を閉じ無心で測定する
●最近、塩分の多い食事を多く摂るようになっていた
→ 塩分を減量して一ヶ月後にくらいに再測定
●家庭血圧計の測り方が間違っていた(良くあります)
→ 正しい方法で血圧を再測定 ◆家庭血圧 誤った測定はかえって有害
本物の高血圧:下げ方は?
本物の高血圧症なら「見せかけの高血圧」とは全く違います。「見せかけの高血圧」でお話しした方法でも少しは効果があります。しかしそれは一時的効果でしかなく、それだけで血圧を低く安定させることはできません。本物の高血圧の治療には長い地道な努力が必要です。柱は2つです。日常生活の改善と薬物治療の継続です。
日常生活の改善方法については、 ◆高血圧 薬を飲まずに下げられますか? でお話ししましたが、その要点は食事と運動と肥満の解消です。
サプリメントや民間療法は医薬品と比較して費用対効果のコストパーフォーマンスが良くないと思います。期待する効果があるか試して検証する方法を、 ◆高血圧を治療中 薬を増量せず少しは自力で降圧したいー自己評価法ー で話しました。サプリメントや民間療法を試したい人は参考になると思います。