刺激によって血圧はどれくらい上がるか
高血圧で現在治療中はもちろん高血圧ではなくても、怒ったり興奮したりした時に血圧はどうなるのだろうか?という疑問があると思います。今日のお話はそんなよくある疑問に少しでも参考になればと思い書きました。
刺激があっても上がらない
若くて血圧も正常なら、運動をしても興奮しても緊張しても怒っても血圧の上がり方はそれほどではありません。上がったとしても驚くほど上昇する人はあまりいないでしょう。
一方、ある程度の年齢になった中年過ぎの場合は、安静時血圧は正常であっても、運動、興奮、緊張、怒りなどではかなり血圧が上がってしまう事は珍しくありません。血圧上昇がそれほどではない人もいますが、相当程度に上がる場合が多くなると思います。
正常血圧だが、刺激で大きく上がる
安静時には正常血圧であっても、運動、興奮、緊張、怒りなどの刺激が加わった時に血圧がかなり上昇するのは高血圧予備軍だと想定するのがよいと思います。安静でも血圧が高い本物の高血圧へと進行していく可能性があるでしょう。
運動や興奮で血圧がどれだけ上昇するか、一度試してみると良いと思います。その検査は簡単です。かなり高くなるなら、家庭血圧を注意深く毎日観察するのがよいでしょう。
患者が興奮した時の具体例
高血圧があって薬で治療中の患者で興奮したり怒ったりした後にたまたま私が診察室で血圧を測定できたケースを紹介します。
二人とも薬で血圧はよくコントロールされており、診察室ではいつも120mmHg程度の正常血圧にあります。本来は高血圧ですが薬でよく管理されている人であっても、強い精神的ストレスが加われば血圧は相当に上昇することが分かるでしょう。
■第一例
70歳代男性です。外来での診察では120mmHg程度の血圧に良くコントロールされていました。
ある時同じ条件で診察室の血圧が180mmHgもあって驚いたことがありました。患者はすぐに「ここに来る前に従業員を叱ってきたばかりで興奮しているのでしょう」と話しました。
■第二例
60歳代の患者で、いつもの外来診察では120mmHg程度の血圧です。
ある時の診察で上記の患者と同じくらいの高い値を示しました。「ここに来る前に、事故を起こして車をぶつけてしまったばかりです。事故処理が終わってから直ぐにここに来ました」と打ち明けました。
この二人の場合は、ともにその緊張感や興奮がまだ残っていたにせよ、叱っている時、事故があった時から少なくとも30分以上は経過した血圧です。
もし叱っている最中や事故が起こった直後なら、血圧は一体どれくらいになっていたでしょうか? 想像ですが200mmHg以上は確実ではるかにそれ以上だったかもしれません。
血圧上昇は元の状態と刺激の強さで変わる?
元の血圧状態がどうであるかによって、強い精神的ストレスを受けた場合の血圧の上昇度合いは変わるでしょう。元の血圧状態を4段階考えてみます。
1)正常血圧。刺激があってもあまり上がらない。
2)正常血圧。刺激があるとかなり上がる。
3)高血圧治療中。正常血圧にある。
4)高血圧で未治療。
基礎の血圧条件が悪いほど、刺激によって上がる程度も激しくなると予想します。
血圧が最も上がるのは高血圧で無治療?
基礎条件が最も悪い人、すなわち高血圧があって治療していない人が、安静時血圧150mmHg位だったと仮定します。こんな人では、運動、興奮、緊張、怒りなどの強い刺激を受けた場合には相当高い血圧になるでしょう。
刺激の程度にもよりますが200mmHgは容易に到達するでしょうし、場合によっては250mmHgまで行くかもしれません。
そんな血圧になれば、頭が痛い、頭が重い、肩が張る、ドキドキする、胸が苦しい、息苦しい、動くと息が切れる、疲れやすい、等を感じるでしょう。
本人がそうとは気づいてなくても、時々そんな自覚症状が現れる人では、強いストレスがかかる度に症状があらわれて自分の高い血圧を本人に警告しているのかもしれません。
最悪の場合は、そんな時に脳出血、脳動脈瘤破裂、大動脈瘤解離や破裂、急性心不全など、生命の危機にまで進展する可能性もあるでしょう。 ◆危険な高血圧 症状とその対応