ある時、非常に高い血圧に
或る時、自分の血圧を計ったらいつもより非常に高いので驚いた。こんな高い血圧は初めてだった。この血圧は危険なのか、治療しないといけないのか、どうするべきか分からないで不安になっている。こんな経験をされた方は多いと思います。→◆安定していた血圧が急に上がった その原因は？
一回の血圧測定だけで結論を出すのは適当ではありません。病院を受診する前にまず自分で何をし、どう考えたらよいのか、簡単に分かり易くお話ししようと思います。
必ず高血圧と限らない
血圧が高い時、それが「本物の高血圧」で治療を含めて適切な対応を考えた方が良い場合と、何かの理由でその時だけ血圧が高く出てしまった「見せかけの高血圧」に分けて考えるとよいと思います。
様々な条件の下で「見せかけの高血圧」になりますが、それについて以前から何度もコラムでお話ししました。参考にしてください。
→◆不安で高血圧：小さな体の異常が引き金、健康不安から短時間の重症高血圧に
→◆不安で高血圧：公営ジム、直前測定で必ず高血圧、基準超えで利用できず
→◆白衣高血圧の一例 繊細な人柄が重症高血圧に
「見せかけの高血圧」とは
「見せかけの高血圧」とは、正常血圧と高血圧予備軍（「本物の高血圧」になる手前）の人で、何かの機会に或る特別な事情や環境が重なったためにいつもより血圧が非常に高くでてしまった場合のことを言います。
ここでお話しする「本物の高血圧」や「見せかけの高血圧」とは皆さんが理解しやすいようにと考えた私の造語です。ここだけの言葉だと理解下さい。高血圧学会で定義して使っている医学用語ではありません。
条件により一時的な高血圧に
いつもは正常血圧であっても、ある特殊な条件では高い血圧になることは良くあります。たとえば、運動中や運動直後、興奮した場合、強い怒り、強い不安、強い緊張感、強いストレス、寒さなどがそうです。もし境界型の高血圧予備軍なら、そのような時には正常血圧の人以上に血圧は高くなるでしょう。
しかし「本物の高血圧」との違いは、特別な条件下で現れたその高い血圧はその特別な条件が消えれば短時間のうちに正常血圧近くに回復してしまうことです。
高い血圧はあくまでも短時間の一時的現象でしかありません。気温が寒いだけでも血圧は高くなりますが、「見せかけの高血圧」なら暖かい場所に移動すると正常血圧に戻るでしょう。→◆高血圧の季節変化 降圧薬も夏冬の「衣替え」
高血圧の症状も現れる
一時的ではあっても非常に高い血圧になれば高血圧の症状は現れますので、血圧の値にもよりますが、その時には体が重い・疲れやすい、頭が痛い、肩や首が凝る、心臓がバクバクする、息苦しい、胸が圧迫される、胸が重いなどの多彩な症状が出てくるでしょう。
そして短時間で血圧が正常に回復すればその症状も消えてしまいます。→◆高血圧の症状は、下がると消える！ これが「見せかけの高血圧」の特徴です。
「本物の高血圧」の特徴
「本物の高血圧」は「見せかけの高血圧」とは様相が異なります。或る時だけ血圧が高いのではなく、基本的には長期間いつも高い血圧が続きます（変動はありますが）ので、前述した高い血圧の症状は、波はありますが、毎日感じ続けるでしょう。
運動中や運動直後、興奮した場合、強い怒り、強い不安、強い緊張感、強いストレス、寒さなどでは高い血圧がさらに高くなるので症状はもっと強く感じるでしょう。
家庭血圧は大変重要です。中年以降なら定期的な測定をお勧めします
「本物」と「見せかけ」の区別
この「本物の高血圧」と「見せかけの高血圧」をどうやって区別すればよいでしょうか。自分で調べるためには家庭血圧を毎日測定するのが最も簡単で良い方法です。
家庭血圧の測定法は前にも詳しくお話ししましたが、→◆高血圧の治療開始？ 誰でもわかる、こんな血圧なら病院へ 毎日朝晩の二回、穏やかな静かな条件で血圧を測定します。その記録をグラフにしておきます。
測定したほとんどの値が125/75mmHg以下であれば正常至適血圧ですから、たまにでた高い血圧は「見せかけの高血圧」であると判断できるでしょう。しかしごく例外的にその高くなる血圧が隠れた病気「本物の高血圧」の場合もあります。
家庭血圧は正しい方法で正しく測定することが病気かどうかを正しく判断するために非常に重要です。→◆家庭血圧 誤った測定はかえって有害
毎日記録した家庭血圧のほとんどが135/85mmHg程度以上であれば、既に「本物の高血圧」になっているかもしれません。いずれにしても毎日の家庭血圧の測定と記録がそれを判断するための最善の方法であると思います。
「本物」と「見せかけ」の異なる対応
■家庭血圧＝正常型
家庭血圧が正常な人の場合は、ワンポイントの高い血圧の多くは「見せかけの高血圧」であり問題ありません。それが原因で健康障害となることは少ないでしょう。治療の対象にはな りません。これまで通りの生活されてよろしいと思います。減塩食や肥満対策など一般的な生活スタイルの改善で結構でしょう。時々は血圧が高く出ても気にせずともよいでしょう。
しかし朝夜の家庭血圧が正常であっても職場などストレスの強い環境では血圧が長時間にわたり高く持続していることがあります。そんな時は「本物の高血圧」に準じた対応が必要になります。
稀ですが特殊な病気の「本物の高血圧」の場合もあります。大変珍しいですが家庭血圧が正常血圧型であっても一時的に非常に高い血圧になる特殊な病気もありますから完全に問題なしとは言えません。もし血圧が急に高くなった原因に全く心当たりがない時は、家庭血圧がたとえ正常型であっても念のため診察を受けましょう。
■家庭血圧＝境界型
家庭血圧が境界型（高血圧予備軍）の人の場合は判断が複雑になります。ワンポイントの高い血圧である「見せかけの高血圧」は上昇がより強く、症状もよりはっきりするかもしれません。実質的な健康障害の問題も既に起こり始めてるかもしれません。
いろんな条件によって最終判断が変わります。治療を始めるか否か、生活スタイルはどう改善するかなど、医師とよく相談して最適な方法を検討されるのがよろしいと思います。→◆高血圧治療 薬の選び方は医師の個性
