血圧が急に高い
普段、血圧は安定して高い値は出ない人なのですが、何かの機会に血圧を測ると高くなっていることは珍しいことではありません。多くの患者を診察していますと、そのようなことは普通に見られることです。
毎日朝晩と測っている自宅血圧は綺麗に正常血圧なのに、診察室内で測ると高くなっていたり、出かけ先でたまたま測ったら高くなっていたり、別の病院で測ったら高かったりと、日常生活の中で、自宅血圧以外は必ずしも正常血圧にはならない場合がよくあるものです。
血圧は変動するのが普通
そんなお話を患者から伺う時、「血圧とはそのようなもので何時も変動しているのが普通と考えて下さい。機械のようにどんな時でも一定値になるものではありません。
生身の人間ですから、様々な状況で血圧は自動的に調整されて変化するものです。高く出てもその時はその値になる必要のある状況であったのだと思って下さい。しばらくするとまた元の正常血圧に戻りますから」と話して患者は納得し安心します。
基準の血圧は自宅での安静時
そんな話を私から聞いてますので、時々高い血圧値が出ても私の患者は何も心配しません。実際しばらく後に測りなおすと元の正常に戻っているのが確認できるからです。それでは血圧の「基準の値」とはどの値なのか?、という議論にもなります。
自宅で朝と夜就寝前に測った安静時の血圧が最も刺激が少なく安定し、自然で基準になる値だと考えます。しかしその血圧でさえ毎日変動するのが当たり前です。
血圧を毎日定期的に測り続け、記録し、グラフに書き続けてみるとわかります。グラフにデコボコはあっても長い期間で見れば、血圧は安定しているものです。→◆高血圧の治療開始? 誰でもわかる、こんな血圧なら病院へ
その安定した血圧でも、怒り、運動、不安、温度、季節、体調、睡眠不測、ストレス、仕事、旅行などの環境変化で変化することも分かるでしょう。
変動しても、それぞれが正しい血圧
血圧とはこの様に絶対的なものではなく、どこで、どんな時に、どのような状況で測定したとしても、その時の値はそれぞれは間違いではなく、その状況下ではそのような値になるものだと理解すればよろしいのです。
普段より高くても低くても間違っている訳ではりません。どれもすべて正しい値です。血圧の値とはそう理解してください。そのように変化するのが血圧ですから時には困ったことが起こる場合があります。
施設利用直前に必ず高血圧
私の数人の患者で実際にあったケースです。どなたも血圧の薬を内服治療中で正常血圧に安定してコントロールされていました。自宅でも診察室でも正常血圧を保っていました。健康のため公営の運動施設でジムのトレーニングをするためにトレーニングセンターを訪れました。そこでは安全管理のため施設を利用する前に必ず血圧を測定しなければなりません。
この患者たちは施設利用前にそこで測ると非常に高い血圧が出てしまったのです。これは明らかに緊張のために誘発された高血圧であり一過性であってすぐに下がるはずなのですが、施設では基準の160mmHg以上であるとして施設を使用させてはくれないのです。困りました。→◆安定していた血圧が急に上がった その原因は?
施設の担当者もかわいそうに思って、しばらく時間を置いてから何度も繰り返し測定してくれたようです。ようやく何とか160mmHgを下回って施設を使えるようになりました。しかし、そんなことがあってから施設使用前の血圧測定が関門となりなかなかパスできなくなりました。
「血圧が高くて今日施設を使えないかも知れない」と不安になり測るたびに記憶がよみがえります。それを考え心配するとますます血圧は上がります。施設担当者の気配りで何度も測ってようやく使えますが、毎回の血圧測定にはほとほと困っていました。診察の時にその話を相談されました。