何も症状なく体調良好でありながら急に高い血圧になった人は、その多くが寒い部屋で測るとか血圧の測定条件が変わったために起こったことです。
次に多いのがストレスや不安や不眠などが原因で誘発された高い血圧と考えられます。一方、動いた後や興奮で一時的に急に上がる場合は、本格的高血圧になる前段階の場合があります。
背景に新たな病気が潜んでいる可能性は少ないですが、ホルモン産生腫瘍や、首、脳、腎臓の血管が細くなり無症状でありながら血圧が高い場合などもありますから一度は医師に相談することを考えて下さい。
体調は問題ないが急に血圧が上がった
血圧を毎日測定している健康な人で、いつも正常だった血圧がある時スーッと上がって高い血圧となりました。なかなか下がらず高いままで推移しています。
高血圧の症状の頭が重い、肩が凝る等も出てきました。これまでになかったことで、何か体に異変が起きたのではないかと不安になりました。
高血圧があり治療で薬を毎日飲んでいる人で、家庭血圧も診察室血圧も全く問題なく経過推移していたのに、ある時を境に急に上がり始めなかなか下がってこないケースは珍しくありません。
ストレスや血圧測定環境の変化が多い
なぜこんなことが起きるのでしょうか。いろんなケースを経験しましたが以下のような事情が背景にあることが多いように思います。
●寒くなって、暖房のない寒い部屋で血圧を測るようになっていた
●測定する前に動き回っていたか、急いだり興奮していた
●血圧を測る条件がこれまでと変わった
●動いていたのに、座って休まず、すぐ血圧を測定している
●測定の時、いつも何かを考えながら測っている
●血圧計の数値を見ながら測ったり、話しながら測っている
●テレビを見ながらや新聞を読みながら測っている
●排便や排尿を我慢している時に測っていた
●周囲が騒々しい環境で測定していた
●マンシェット（腕に巻く帯）の締め付けがきつくて測る時に痛い
●自分の病気を心配し不安になりはじめていた
●トラブル、不幸、不安、経済的問題等で心配している
●仕事のストレスが増えた、仕事が忙しくなった
●生活の変化や、新しい緊張する事態が起こった
●急に高い血圧になったそのこと自体を不安で心配している
●血圧の薬の飲み忘れが多くなった（うつ病や認知症でよくあります）
●ドリンク剤、サプリ、漢方薬、他の病院からの薬などを飲み始めていた
●前夜、睡眠不足であった
●最近、塩分の多い食事を多く摂るようになっていた
●寝室を変えた
●その他
この様な事情があると血圧は直ちに上昇することがあります。その問題が解決されない限り高い血圧はなかなか解消しません。
まず原因を探すことから
治療は、患者さんと根気よく話し合いながら、裏に隠れている原因となる問題点を見つけることから始まります。
私たちの経験では、この病気の最も多い原因は年齢を問わず測定環境の変化にあると思います。例えばある時期から寒い部屋で測っているなどです。
次はストレスや不安でしょう。若い人なら仕事や家庭内の問題であり、高齢者なら自分の病気に対する不安が多いと思います。うつ病の原因と重なります。実際、高血圧とうつ病を同時に発症した人もいました。
原因がプライバシーに関わる微妙な側面がある場合は、患者さんもあまり明確に話したくないようです。
原因をはっきり言わなくても、自分にその心当たりがあれば、原因はそれだろうとアドバイスします。詳細は不明ですが、とにかく原因が分かればそれで十分です。
原因となる問題点が分かっただけで安心して血圧が正常化することも多いですが、その問題が解決されない限り高い血圧も治らない場合があります。
問題の解決までの期間が比較的長期に及ぶ場合は、その期間だけ薬を増量し血圧を正常化するようしています。
「新しい病気」なら症状がある
体調はまったく変わらず順調で、健康上も何も問題ないにもかかわらず、血圧が急に高くなってそのまま下がってこない場合、患者にすれば大問題で非常に心配します。
似たようなことが病気で起こる場があります。典型的なのは脳梗塞や脳出血です。それであれば、発症した瞬間に血圧が上がってしまうことは普通です。しかし同時に特有の症状もあります。意識障害や手足の麻痺などです。
「症状」に気づかないケース
脳梗塞や脳出血でも程度が非常に軽ければ無症状に近くはっきりした症状は表に現れず、血圧だけがしばらく高く下がってこない場合もあります。
また頸動脈や腎動脈の動脈硬化の狭窄では無症状でありながら血圧だけが高くなってしまうこともあるでしょう。
このように高い血圧の原因となる病気が背景にあっても、病気本来の症状は出てこず無症状のままというのもありますからややこしくなります。
また体調は良くて全く何も症状はないと思っていても、実際はその症状に気付いていないだけだったりすることもあります。
たとえば高血圧の症状があるのに患者さんはこちらから尋ねるまで気付いていないなどは良くあることです。
患者が無症状と言うのは必ずしも正しくないことがあります。高血圧の症状に全く気付いていない患者さんに注意喚起したコラムです。 ◆046 高血圧の症状は、下がると消える！
しかし、血圧が急に上がっても新しい症状が何もなければ、その多くはいろんな検査で調べても大きな問題はない場合が多いのがこれまでの経験的な印象です。
大病院ではまた違った傾向でしょうが、第一線の当院を受診される患者では、この様なことがあってもあまり深刻に心配しなくてもよいのではと思います。
一度は病院の受診を
何も症状なく体調良好でありながら急に高い血圧になった人は、多くが寒い部屋で測るなど血圧の測定条件が変わったために起こったことです。
次に多いのが緊張感、ストレス、不安や不眠が原因で誘発された高血圧と考えられます。この場合にはそのストレスや不安の原因が分かり納得すれば血圧が正常化する場合が多いと思います。
本格的高血圧の前段階にある人も、何かのきっかけで一時的ですが急に血圧が上がる場合があります。まだ血圧治療をしていないなら注意して下さい。
この高血圧の背景に新たな病気が潜んでいる可能性は少ないというのが私たちの経験です。しかし、ホルモン産生腫瘍や、首、脳、腎臓の血管が細くなって無症状でありながら血圧が高い場合などもあります。
病気は常に例外がつきものです。一度は医師に相談して下さい。
そして・・・
高血圧の五部作
血圧は高度に自動制御されている：
◆248 高血圧 測る度に違う。どの血圧が本当か？
高血圧にはハッキリと症状がある：
◆239 高血圧 三大症状
急に血圧が上がる理由は？：
◆080 安定していた血圧が急に上がった その原因は？
薬で下がり過ぎることもある：
◆254 高血圧 薬で下り過ぎると危険ですか？
薬でも下がらない訳は？：
◆064 薬を飲んでも、血圧が下りません
高血圧でも、長生きするなら・・：
◆258 高血圧 それでも、長生きできますか？
