他の病院で高血圧を治療中ですがなかなか下がらないと当院を訪れる人がいます。薬を飲んでも下がらない理由はいくつか考えられます。
原因を探して確定するのに苦労しますが原因が分かれば解決はさほど難しくありません。ほとんどの場合に解決可能です。
高い血圧が下がらない理由
初めて当院を受診する人で、よその病院で高血圧を治療中なのですが、十分に血圧が下がってこないので不安になって当院へ相談に訪れる人がいます。話を伺うとそういう人はたいてい自宅で血圧を測っていますのでそのデータを見せてくれます。
データを見ますと確かに高い値が続いています。人によっては朝も夜も収縮期血圧で160mmHgから220mmHgくらいが持続しています。
薬を飲んでこれでは不安になるでしょう。家庭血圧と病院血圧は決して同じではありませんが普通なら病院の血圧の方が家庭血圧より高くなりますから「病院ではどうですか?」と訪ねますとその答えがまた様々です。
高い血圧が薬の治療でも下がらない原因は経験からいくつか想定されます。これ以外にもあるかも知れません。
1-1)原因が特殊な高血圧で、通常量の薬では目標血圧を維持できない。
1-2)治療抵抗性の高血圧で、通常量の薬では目標に到達できない。
2)薬の量や種類を増やせば下がる余地はある。
3)血圧計そのものや家庭血圧の測り方に技術的な問題があり間違った血圧を見ている。
4)家庭血圧を測る時に不安感があるため本当の血圧は高くないのに測るたびに高くでてしまう。
5)家庭血圧はいい値なのに病院だけで高い場合は診察室内の環境か血圧を測る条件に原因がある。
それぞれの原因の考え方
大学病院、大病院、専門病院では病気の背景や構成は全く違いますが、当院のような第一線の小さなクリニックでは、1)のケースはそう多いとは思いません。むしろ珍しいと思います。2)から5)が大半の原因です。
2)から5)までは、どのケースも同じ頻度の印象です。自動血圧計で家庭血圧を測定した時に起きる幾つかの問題点は別のコラムに書きました。できればそれも読んでください。
◆171 家庭血圧 誰でもわかる、測り方のコツ
◆050 家庭血圧、誤った測定はかえって有害
それでは順に原因と解決方法を考えていきましょう。
1)原因が特殊で普通の治療では下がらない
こんなケースであれば大学病院や専門病院に紹介となります。当院では20年間で数えるほどの経験でしたが大学病院に紹介して下がりました。
このケースは当院の様な小さなクリニックでは非常に珍しいです。大きな病院や大学病院などの専門医療機関ではこの様なケースが紹介で集まってきますから多いと思われます。
2)薬を増やせば下がる余地あり
目標血圧の考え方に患者さんと医師との間にギャップがある場合と思います。医師はその程度でよいと思っていても患者さんはまだ高いと感じているのでしょう。
このケースは当院で患者さんと話し合ったうえで、更に低い所に目標血圧を設定して治療を始めることになります。 ◆118 高血圧治療 薬の選び方は医師の個性
3)家庭血圧の測定方法に原因がある
血圧計の機械そのものがかなり古くて測定したデータの信頼性に問題がある。マンシェットの装着方法が間違っている。腕の高さを低い位置で測定している。手首や指で測定しているなど原因が機械や測定方法にある場合です。様々な例を以下に示します。
患者さんに血圧計を持参してもらって診察室で測定方法を確認することもあります。
●座ってすぐに血圧を測定している
●血圧計の数値を見ながら測ったり、話しながら測っている
●マンシェット(腕に巻く帯)の締め付けがきつくて測る時に痛い
●などなど
測定条件が原因についての高血圧はここで詳しくお話ししました。 ◆080 安定していた血圧が急に上がった その原因は?
正しく血圧を測る必要があります。 ◆171 家庭血圧 誰でもわかる、測り方のコツ
4)測定時の不安で上昇。本当は高くない
ある時に家庭血圧の高い値を一度見てしまい、それ以後では測るたびに「また高いのではないか?、高かったらどうしよう」等と不安を感じながら測定した場合にはいつも高くなってしまいます。
測定時に緊張感が強く出て、その瞬間は本当に高い血圧になるケースです。この場合もし不安がなければそれほど高くはないのですが、高い血圧に気持ちが取り付かれてしまっているため、測ると必ず高くなってしまいます。
◆277 見せかけの高血圧1:高いかも?の不安
見せかけの高血圧
そのほかの原因としては
●トラブル、不幸、不安、経済的問題等でいつも不安や心配がある
●血圧の薬の飲み忘れが多くなった(うつ病や認知症ではよくあります)
●ドリンク剤、サプリ、漢方薬、他の病院からの薬などを飲み始めていた
●睡眠不足がある
●塩分の多い食事を多く摂るようになっていた
●排便や排尿を我慢している時に測っている
5)病院だけで高いなら、環境に原因
病院によっては、別の場所の自動血圧計で測定し印字した紙を持って診察に臨むところがあります。そこでは医師は血圧を測りません。
自動血圧計で測定する環境条件が悪くて異常に高い値になってしまう場合があります。また医師と患者さんとの関係や診察室内の環境が適切ではなく患者さんが緊張してしまって高い値が続く場合もあります。 ◆150 白衣高血圧 どうしたら治りますか?
原因解明が大切。解決は比較的容易
薬を飲んでも血圧が高くて下がらない場合この様に原因が様々です。まずその原因を突き止めることから始まります。
原因を探して確定するのにかなりの努力と時間が必要になることもありますが原因が分かれば解決方法はどれもそれ程難しくありません。ほとんどの場合は解決可能です。
その原因ごとの適切な対応を教えて、場合によってはその日から当院で薬の治療を始めることもあります。 ◆161 その高い血圧 治療が必要な本物か?、不要な見せかけか?
そして・・・
高血圧の五部作
血圧は高度に自動制御されている:
◆248 高血圧 測る度に違う。どの血圧が本当か?
高血圧にはハッキリと症状がある:
◆239 高血圧 三大症状
急に血圧が上がる理由は?:
◆080 安定していた血圧が急に上がった その原因は?
薬で下がり過ぎることもある:
◆254 高血圧 薬で下り過ぎると危険ですか?
薬でも下がらない訳は?:
◆064 薬を飲んでも、血圧が下りません
高血圧でも、長生きするなら・・:
◆258 高血圧 それでも、長生きできますか?