血圧治療をしないと決めている人
初めて当院を受診する患者さんや同窓会などで友人から「高血圧があり150~160/90mmHgくらいです。どうですかね?。これでいいですか?」。
よく話を聞きますと頭痛や肩こり、判断力の低下など高血圧によると思われる症状がすでにあるようです。このような患者さんや友人には「薬を飲んでキチンと下げましょう。下げておいたほうが自分の体のため健康のために間違いなくいいですよ」と話します。
高血圧があっても薬を飲まない、または飲んではいるが今の薬の数や種類を絶対に増やしたくない、かなり強い意志で決めている人がいます。
高血圧の問題点や治療に良い効果があることを説明しますが、本人がそう決心していてその考えを変えないので時間をかけて説得しても結局無駄に終わることがよくあります。
どうするかは個人的価値基準
自分の病気や健康をどのようにするかは純粋に個人的な問題です。その人の価値観や人生観がそこに色濃く反映されます。
私たちは他人の人生観にまで立ち入ることはできませんしまたすべきものでもありません。医学的な現実を私の経験も加えて治療効果の具体例や治療しない場合の不利益などを科学的にできるだけ分かり易く説明します。
そこで最終判断するのは患者さん自身です。個人的な判断ですからそれがどんな決定であってもその結論は尊重されねばなりません。
治療を希望しないケース
私たち専門家が良いと信じる治療を提案してもそれを患者さんが受け入れない場合が稀にあります。世の中には様々なケースがあるでしょうが、私達が経験したケースをいくつか紹介します。
●治療する意思はあるが、今病院に継続して治療することができない事情がある。事情が解除されるまでは無理。
●一旦薬を飲むとやめられなくなって一生飲まなければならない。もっと年取ってから飲めばいい。
●この程度の血圧ならまだ薬が必要だとは思わない。もっと高くなければ薬は不要。正常血圧の基準も上がったことだし。
●何であれ薬に頼ることを潔しとしない。自分でなんとか出来るから薬は飲まない主義。
●高血圧があっても自分の親は長生きした。自分もそうなるだろうから治療はしない。
●高血圧でも何の症状もない。痛くも痒くもないのに病院に通院するのは面倒だし無駄。
●自分で血圧を測っているがいつも高いわけではない。低い時もあるからまだ薬はいらない。
●問題点は知っている。長生きしたいと思ってないのでいつ死んでもいい。好きなようにして生きる。
●医者は大したことのない病気を大げさに話すもの。その通り信じるものではない。
●医学や医師というものを信用していない。自分の経験や判断を優先する。
●「そういうなら、医者が長生きしたというデータはあるか?」と聞く耳持たず喧嘩腰。
●宗教上の理由。
●などなど
信念の人に説得は困難
以上の様なものですから説得はかなり難しいのがお分かりでしょう。事情背景は様々ですがこのような方に治療意義を説得するのは骨です。私はこの様な人には無理な説得はしないことにしています。淡々とお話しして止めてしまいます。
高血圧の治療をしないという選択は不幸な結果が分かっている高血圧無治療群の集団に自分の健康を賭けて自発的に参加するようなものです。
結果は確率の問題があります。しかし人生はコンピューターゲームではありません。不幸な結果を見てからリセットしてやり直しはできないのを覚悟することです。
高血圧治療の意義や効果は科学的に明らかなのですが、ここで再度結論だけお話ししますと心臓と血管の劣化や老化を明確に抑制します。脳卒中と心筋梗塞発症を明らかに抑制します。高血圧治療の意義についてはここもお読みください。参考になるでしょう。◆006 高血圧の薬は、始めたら一生飲み続けますか?