経過観察
「経過観察」の意味
当院では検診事業をしていませんので報告書を作成することはありません。しかし他の医療機関で検診を受けた患者さんが結果の異常で当院に相談に訪れることはよくあります。内容は様々ですが、「要経過観察」や「経過観察」の最終評価が入っていて、これを心配した患者さんから質問されます。
検診事業をする医療機関がどのような判定基準でそのような評価をしているの知りませんが、書かれている内容からおおよその推測はできます。
これまでの経験では、「要経過観察」や「経過観察」とは、医師から見て正常で問題なしとは断定できないが、さりとて直ちに詳しい検査をして検証しなければならないほど重大な問題ではない場合に、この様に評価、指導して注意を促していると思います。
その異常所見は、ある期間経過後や定期的(半年や一年間隔)に再検査しておく必要ありと解釈されます。もしこの異常が問題を含むような所見であれば、再検査した時には変化しているはずです。もし再検査でそのような変化が認められた場合には、本格的な検証を始めなければなりません。しかし繰り返し再検査をしても変化が現れなければそのままでよろしい、と言う意味だと思われます。
暗黙に「再検査」を勧めています
検診でなくても、私達も患者さんの検査で何かの異常所見を見つけた場合に、その異常所見のレベルに応じて対応が異なります。緊急に治療を開始したり精密検査をしなければならない危険なものから、何もしないで放置してもよいものまで、その評価の選択肢は相当に広い幅があります。
その中で「経過観察」の対応は、お話ししたように、「この所見には重大な問題は少ないと思われますが、ある期間を経過後に再検査して下さい。その結果で最終的な判断が出せるでしょう」。この様な意味で使われていると思います。
たとえば患者さんが検診結果で次のような異常所見が記載された場合を説明してみます。
具体例で解説
心電図で「洞性徐脈」、評価で「経過観察」の場合
70歳の患者さんがこんな検診報告書を持参して相談のため当院を訪れた場合を想定します。
確かに心臓の拍動数は正常の50回以下で遅くなってはいますが、この年齢なら健常者であっても見られる程度の異常です。今回特別に大きな問題として取り上げるほどではないと思います。
しかし、もしこれが心臓病の或る不整脈の初期の所見の表れなら、今現在では最終診断できませんが、時間が経過すれば異常所見が更に明らかになってくるか、不整脈の症状が表に出てくるかも知れません。そうなる確率は低いと推測されますが、この段階でその可能性を無視するわけにはいきません。しばらく時間が経過してから、どのように変化したかを再検査する必要があると、検診した医療機関では判断したのでしょう。
一例を紹介しました。検診報告書には詳しく解説してありませんが、「経過観察」には以上の様な意味が含まれているのです。