


なぜ痩せたか理由が分からない
原因不明で痩せたケースを取り上げてみます。長く慢性の肺感染症を患っている、お腹の調子が悪くて食欲がなく食べられない、下痢が続く、重い糖尿病がある、心不全を繰り返している等があって痩せるなら原因は明らかですからここでは問題にしません。
誰でも分かる様な痩せる理由が思い当たらなく体調もそれほど悪くない。自分では食事は普通に食べているつもりだが、ここ数ヶ月でかなり痩せてきたようなケースです。
痩せた本人は理由が分からず心配で相談するため来院します。こんな患者が年に数人います。

痩せる原因
患者には理由が思い当たらず、原因不明で痩せる病気として、いくつかをリストアップします。
・過労
・精神的ストレス(心労、失恋、悲嘆など)
・うつ病、神経性食思不振症
・甲状腺機能亢進症
・悪性腫瘍(癌、肉腫)
・腸管寄生虫、結核
・アルコール依存症、覚醒剤(アンフェタミンなど)、中毒(鉛など)
・薬剤副作用、自分でやせ薬を内服中
原因に気づかず痩せていく病気は多彩です。しかし当院で多くの患者さんを診察した経験では、原因不明で痩せるのはほぼ該当する病気が3、4種類に絞られます。当院での姿です。

原因不明で痩せる時は「うつ病」を疑う
3,4種類の原因とは、癌、甲状腺機能亢進症、うつ病、過労やストレス等です。うつ病発症の背景には、過労、心労やストレスがある場合がほとんどで、これら全部を一群としてまとめても良いと思います。
そうすると原因不明の体重減少の理由は、癌、甲状腺機能亢進症、うつ病(過労、心労、強いストレス等を含む)のほぼ三種類に集約されます。
癌であれば消化器系の癌(胃癌、大腸癌、胆嚢癌、膵癌、肝癌など)が多いでしょう。症状や異常所見があれば、内視鏡検査などで病気をチェックします。しかし当院通院中の患者なら、消化器系の癌でここまで進行したケースはまず稀です。多くは早期に発見し手術に回り、膵癌や胆管癌以外は、術後多数の人は元気に生活しています。
甲状腺機能亢進症は当院の様な小さなクリニックでさえ、年に1人~2人は発見されますから決して珍しい病気ではありません。この病気の大きな特徴は「暑がり」になっていることです。他の人はちっとも暑くないのに自分だけが暑くて仕方がない場合は疑わしくなります。
しかし原因不明の体重減少の最も多い理由は「うつ病(うつ状態も含む)」です。正確な集計はしていませんが、この3種類の中ではこれが一番多いだろうと思います。特に最近は、国民の置かれた厳しい生活環境からかストレスが非常に強く、この病気になる人が急速に増えている印象があります。
2,3ヶ月で5~10キログラムの体重減少を来すこともあります。驚くほどの体重減少がありながら本人も自分がうつ病であるとは気付かない場合も多く、病名を告げられると驚く人もいます。一方自分で薄々気づいている人もいます。
うつ病であれば、抗うつ薬が非常に効果的です。効果は抜群で1~2週間でみるみる体調が改善し、体重もそれに合わせて順調に回復します。最近の抗うつ薬の治療効果はこの病気の専門外の私達からみても大変良好です。副作用もたいしたものはなく安心して患者に勧められます。
10年ほど前から新種の抗うつ薬が発売されて以来、中程度までならうつ病はほぼ完全に克服できる病気になりました。◆うつ病はよくある病気 内科の病気や更年期障害と間違え易い
精神科専門ではない内科医でも、軽いうつ病なら治療することが出来る様になりました。軽いうつ病は普通の人が突然なってしまう病気ですから、私達の様なかかりつけ内科医がそれを早期に発見して投薬し完全に治るまで治療ができるのは、患者にとっても大変便利で良いことだと思います。
