高齢者と違う青壮年の不眠
不眠は様々な原因がありますが、高齢者の不眠は昼間の活動性が低いために睡眠時間がそれほど必要ないのと、早く布団に入り過ぎるため深夜に目覚めてしまいその後に眠れないのが辛いためだとお話ししました。
青壮年の不眠はどうでしょうか。基本的に高齢者とはその様相が少し異なります。一般的に、青壮年は昼間の活動性は高く、また睡眠に就く時間も遅く疲れていますから直ちに睡眠に入ることができ熟睡して朝起床します。睡眠時間が少ないことはあっても長すぎて早く起きてしまい後が眠れないなどあまりないでしょう。
原因の多くはストレス
活発に活動している青壮年が脳や全身の休養のための睡眠を十分にとれないとしたら、高齢者とは全く別の原因があるからです。例外的なケースを除けば、私たちが普段お会いする患者の不眠はほとんどがストレスや悩み不安が原因です。
何か問題を抱えていて、その問題でいつも頭の中はいっぱいになっています。当然その問題は重くこころのストレスになっているでしょう。ストレスによって夜は様々な事を考え眠れなくなります。または眠りに入っても浅く早く目覚めてしまいます。結果的に睡眠時間が不足した不眠になります。
不眠からうつ病に
この不眠が続きますと、食欲が低下し活動性や意欲もなくなり楽しいことも消え心はいつも沈んでいます。体重が減少し始めます。自分では食べているつもりですが確実に痩せていきます。
不眠はますますひどくなります。周りから見ても何だかおかしいと見られるようになります。家族から病院の受診を勧められるでしょう。この段階では中程度のうつ状態になっています。
青壮年は様々なストレスや不安で不眠になる事は良くあることです。しかし多くはストレスも上手に解消して短期間で終わってしまう事でしょう。皆さん上手にストレスを発散しておられます。うつ病にまでなる方は少ないと思います。しかし決して稀ではなく外来では良く診る病気です。
ストレスが非常に強く大きい時、ストレスが長く続く時、不眠も長期にわたり最終的には不眠、意欲の低下、食欲減退、体重減少のうつ病になるかもしれません。さすがにこの段階になれば医療機関を受診されますが、本人はうつ病の自覚がなく「眠れないのが苦痛」と単なる不眠の症状だけを訴えることが多いように思います。
うつ病の治療を拒否する人
診察してお話を聴くとうつ病になっていることは容易に診断がつきます。ご本人はうつ病の可能性に少し気付いている場合がありますが、全く考えていない人もいます。想定していない人は自分がうつ病になったとは信じられなくて、それを否定したり治療に強く抵抗される場合があります。
このような患者を説得するのはなかなか難しいのですが、時間をかけ納得して頂きます。薬を開始しますと見る見る元気が回復します。薬の効果は劇的です。回復した後になってから私たちは患者から非常に感謝されます。
深く感謝されるうつ病の治療
どんな病気であれ、治療で病気が劇的に良くなった時には私たちは患者からすごく感謝されます。これは我々医師にとって比較するものがないほどうれしいことですが、そんなに劇的に良くなる病気として、私が時々経験するのは、専門の心臓病とこのうつ病です。
それほどこのうつ病は患者にとって長くつらく苦しい病気です。時には楽になるために死にたくなるほどです。