軽い耐糖能障は多い
軽い糖尿病や境界型糖尿病で薬はまだ飲んでいない人、こんな軽い耐糖能障害(糖の代謝異常)の人は中年以後では非常に多いと考えられます。
その人たちが自分の病気を判断するとき、血糖値とヘモグロビンA1C(HbA1c)をどう見たらよいのか困っている人が多いのではないかと推測します。
今日はそんな人々のためにこの二つの指標について考え方をお話します。
糖尿病の管理指標は「血糖値」が基本
糖尿病は血液中の糖が多すぎるのが病気の本質です。ですから血液中の血糖値を測定してその値を見るのが評価の基本です。
この血糖値は体の中では分単位で変動していますから食物の何を、いつ、どれくらい食べたかによって大きく変動します。
血糖値を評価するといっても食べた物の摂取条件を詳しく知らないと、値を正しく評価することができません。
そこで面倒ですが、食べ物の条件を一定にした空腹時血糖が血糖管理の目安に採用されました。空腹時とは夕食後から水以外は何も飲み食いせず、翌朝食事前に測った血糖値のことです。
これはこれで一つの重要な意味があります。しかし多忙な患者さんがいつもこの条件で測れるとは限りません。
「隠れ糖尿病」は、空腹時血糖が正常
空腹時血糖がほぼ正常なのに食後の血糖値は急上昇している人が少なくないことが分かっています。このような軽い耐糖能障害でも、食後高血糖によって血管障害が進行し狭心症や心筋梗塞などの心臓の重大な病気になり易いこともわかってきました。
こんなタイプを「隠れ糖尿病」と言っていいかも知れません。こんな人は病院で食後4~5時間の血糖値(空腹時血糖に近い)を何度測っても正常値しか現れず一見して何の問題もないように思われてしまいます。
この段階でも本来なら始めるべき対策はあるのですが、知らずにその機会を逃してしまいます。結果として近い将来の狭心症や心筋梗塞の発症を許してしまうことになります。
「隠れ糖尿病」は食後1~2時間の血糖値で分かる
中程度以上の糖尿病は血糖値やHbA1cの測定ですぐに分かります。そんな人はここでは問題にしません。注目するのは健康管理の自覚を持ち常に自分の健康をしっかり維持し病気発症を未然に防ぎ生涯健康を実現したいと希望している人々です。
このような人々にとって糖尿病予防の重要な点は空腹時血糖は正常でありながら、食後は高血糖の軽い耐糖能障害(隠れ糖尿病)を見逃さないことです。
まだ軽いこの時期にあっても適切な糖尿病対策を直ちに始めることです。そのためには少し面倒でも、食後1~2時間を目安にした血糖値を観察していくことです。
HbA1cの役割
HbA1cも糖尿病の管理に欠かすことができない大切な指標です。しかし上述した軽い耐糖能障害なら、私たちの経験では耐糖能障害の重さとHbA1c値との関係が必ずしも比例しないケースが珍しくないことです。
明らかな糖尿病でありながらHbA1cはそう高くない場合、反対にHbA1cが高くて注目したら血糖値や負荷血糖検査ではそれほど悪くないケースなど血糖値との乖離です。
こんなケースが結構ありますので軽い耐糖能障害の患者なら、HbA1cの値だけで糖尿病の程度を判断するのは避けた方が良いと思います。
糖尿病の重さの判断基準は食後血糖値や負荷血糖検査が良いと思います。