健診などでコレステロールが高いと指摘されたことは、中年以降の方なら良くあることです。読んでいる皆さんも一度ならず言われた経験があるのではないでしょうか。
高くても痛くも痒くもないのに!
コレステロールが高い結果をどうするか皆さんの大いなる関心と悩みだと思います。この値が高くても痛くも痒くもありません。体に悪いようだとは思っているでしょうが、ちっとも辛くも苦しくないのに病院に通ってまで治療するべきかどうか迷っていることでしょう。十分理解できるよくある悩みです。
信頼する医師の勧めを尊重
ネットで調べるとコレステロールが低いほうがかえって寿命が短いとかコレステロールは体にとって大切なものだから低すぎると体に悪いとか高いコレステロール値を治療しない方がいいかも知れないと思わせる情報も溢れているでしょう。
加えて薬を勧めるのは医師の経済的利益追求が目的だとする論旨を展開する人達もいます。しかしこの立場は医師ー患者関係の信頼を根底から否定することであり医療はそもそも成り立ちません。
諸説紛々として皆さんにとって迷いは深いと思います。最終的にはこの治療の専門家である内科医で信頼する医師の勧めを受け入れるのが賢明な選択だと考えます。
治療を勧めます
それらの錯綜した情報をどのように考えるかは個人の人生観にもかかわることなので異なった意見に逐一反論や解説はしません。
しかし私たちが患者さんに常にお話しするのは治療を勧めることです。その医学的根拠はネットにも溢れていますから今更なのでここでは申し上げません。
「The lower, the better」
ここで一つだけ強調しておきたいと思います。高コレステロールに関して病気治療の専門家集団である世界の医師達が現状で到達したほぼ合意する理解は血圧とコレステロールに関しては、原則としてですが、「The lower, the better」です。 ”原則として”の注釈は入れましたが「低ければ低いほど良い」は重要な原則です。
そこには経済的・感情的視点はありません。薬剤による治療介入研究の膨大な成績から得られた純粋に医学的で論理的な結論です。私たちはもとより世界の医師の大多数はこの見解に納得しています。心臓病があろうとなかろうとです。心臓病がある人の方が恐らくよりメリットは多いでしょう。
LDL-C/HDL-C、この比に注目
総コレステロール(TC)値は注目する価値が少なく、注目するのはLDL-C/HDL-C比の値(悪玉と善玉のバランス:動脈硬化指数とも言われます)だと考えられます。
この値が悪くても2以下、動脈硬化が強く進行している病態の患者(狭心症、心筋梗塞など)なら、1.5以下を目指します。1.5以下なら老化した血管が若返るとまで考えられているほどです。→◆092 心臓と「ミクロの宅配便」 血液の流通トラブルと病気
この分野の或る専門家(医師)は薬剤を内服し自分のこの値を1以下にまで下げていると聞きました。その意義を極めて高く評価しているからこそでしょう。
コレステロールの薬を飲まないで生活習慣の改善だけでこの値を2以下に出来る人は少数です。まして1.5以下には薬を飲まなければまず実現できないでしょう。
飲んでも達成できない人も少なくありません。 生まれつき1.5以下という良い資質を持っている極稀な幸運な人は確かにいます。当クリニックでもこんな幸運な人は代々長寿の家系のことが多いと理解しています。