患者さんからこのことを尋ねられる機会はよくあります。
癌を血液検査で見つけるための検査を「腫瘍マーカー」といいます。腫瘍マーカーには様々な癌ごとに数多くの種類があります。たくさん数があるので、全て覚えきれません。しかし、大切なのはそのマーカーの信頼性でしょう。せっかく検査してもその数値が信頼できないのであれば、かえって悩みを増やしてしまうだけです。
現在までに専門家の達した合意は、その腫瘍マーカーの値だけである程度(この”ある程度”が重要です)癌の有無を判断して良いのは、男性の前立腺癌のPSAという腫瘍マーカーだけだろうということです。これだけは相応の年齢になったら定期的に検査したほうが良いと思います。
言葉を変えれば、これ以外のマーカーはまだ十分な信頼性がありませんので、結論的には血液検査でガンを見つけることはまだ難しいということです。
検査した何かの腫瘍マーカーの値が異常に高値であっても、それだけで「癌」と診断するわけにはいきません。また、このマーカーが低値で正常であったから癌がないとも断定できないのです。どの癌も血液検査だけで簡単に診断できるものではないのです。
定期検診や人間ドックで、この腫瘍マーカーが異常に高値であったため、よく調べてみたら運良く早期の癌が発見できたということは確かにあります。しかし、よく調べたら癌ではない別の原因であったということもあるのです。また、ドックで調べたマーカーが全部正常であっても、癌がなくて安心だとは言えないことも同時に大切なことです。
癌の早期発見は、どうすればいいか
では、癌を早期に発見するには、どうすれば良いのでしょうか。実際には、「簡単な方法はない」のが実情です。しかし、費用と効果を考えて、出来れば以下のような態度で癌の早期発見に務められたら賢明だと思います。
1)現在健康な方でも、ドック等を定期的に受けて、普段から自分の健康上の基本データをチェックしておきましょう。癌は家系がありますから、祖父母、両親、叔父叔母、兄弟姉妹などに癌があった方は、ドック等ではその癌について重点的にチェックしておきましょう。
2)日頃は特に医療機関にかかりつけではない方は、体調に変化があった時には、軽いからと安易に自己判断せず、なるべく早く信頼する医師に相談し、検査を受けておくことです。現代は早期であれば癌は治る時代です。しかし、遅れるとどうしようもありません。体調が異常の時は、手遅れにならないよう早く調べてください。
3)日頃から医療機関で生活習慣病などの治療を続けている方は、主治医から生活スタイルを含め健康全般について総合的に評価・管理してもらいます。もし、体調に変化があればすぐに相談し、精密検査を受け、癌の早期発見、早期治療に結びつけることです。体調変化がまだ現れてこないうちに、通院中の病院での定期検査で偶然に早期癌を発見できることがしばしばあります。通院中の方は日頃の定期検査を積極的に受けて、データの推移を注意深く観察、評価してもらってください。早期発見の癌は治る時代です。
初期の検査で癌が疑われた場合、癌かどうかの最終判断は、癌の種類によって必要な検査が異なりますが、いくつかの検査を受けて総合的に診断することになります。その時の検査の一部にこの血液の腫瘍マーカーも入ります。この数値の高さで癌の進行程度が推測できることがありますから、腫瘍マーカーはその時には非常に役に立ちます。