心臓は命の源ですから他の臓器と較べさすがによくできています。非常に頑丈です。滅多に重大な病気になりません。癌にもならない臓器です。故障したり壊れなければ150年は働き続けられるそうです。
健康な心臓に故障がおきて病気になるとしたら幾つかの原因が想定されます。よくある原因と対策を整理して心臓を故障・壊さないコツをお伝えしたいと思います。
将来は分かりませんが、これからお話しすることを実行すれば、丈夫な心臓は天寿まで軽々と働き続けるでしょう。
この道こそ心臓を守る王道です。頼りになる心臓と共に激動の時代を健やかに生き抜いて下さい。
心配な時は医師に相談ください。
◆心臓病 症状から自己診断は、リスクあり危険
元気な心臓が、病気になるのは?
心臓が病気になる原因
1). 心臓を酷使
元来丈夫な臓器の心臓ですが、過酷に働かせ過ぎるのはいけません。
2). 心臓と血管を早く老化させる
早く老いれば、早く病気になりやすくなります。
3). 有害物で心臓を傷める
そうと知らずに有害な嗜好品を摂取している。
具体的にはどのような事が心臓を痛めるのでしょうか。
1). 重い負担で、心臓を酷使する
健康で元気な心臓であっても、それがあれば重い負担となるのは、高血圧、ストレス、過激な運動、脈が速い(頻脈)、過度の肥満などです。
●高血圧
本人も気づかない重要な重い負担は高血圧です。高血圧は24時間休みなく心臓に負担をかけ続けます。最もありふれた心臓への重い負担です。患者はこの事実を知りません。高血圧は長期にわたり心臓を酷使し続けます。
●ストレス
強いストレスが長期間続く場合も、外からは見えませんが、体内のホルモン分泌や自律神経を介して心臓に悪い刺激が加わり重い負担となります。それは確実に血圧を上げ脈拍を増やし心臓を傷めます。場合によっては高血圧以上に速く強く心臓を痛めるでしょう。極めて強いストレスは、短期間で生命の危機にまで及ぶ場合があります。
●激し過ぎる運動
健康のためには適度な運動はよい習慣ですが、もしそれが度を越えた激し過ぎる運動なら確実に心臓に負担となります。プロスポーツ選手の運動量は健康維持の程度を軽く超えます。そんな激しい運動を普通の人が真似してはいけません。心臓を鍛える程度を越えて心臓は傷んで弱ってしまうでしょう。
●速い脈
心臓は普通一分間に70回ほどに動きます。単純計算ですが一日10万回程度です。心臓は壊れなければ150年間働く能力があるそうですから一生では55億回拍動できることになります。もし一分間に100回(頻脈)で一生動くなら心臓の寿命は104年とかなり短くなります。速い脈は心臓を酷使し寿命は確実に短くなるでしょう。
●過度な肥満
過度の肥満や過剰で異常な水分摂取量や過量の塩分摂取等が加われば、心臓への負担となるでしょう。 ◆心不全と肥満 大きな負担 重症なら悲鳴
2). 心臓や冠動脈を、早く老化させる
心臓に栄養を送り込む血管を冠動脈といいます。この血管は三本あり心臓の表面に張り付いて心臓の筋肉中に栄養を送り込んでいます。
この冠動脈が早く老化し内腔が狭くなったり詰まると、十分な栄養を貰えなくなった心臓は急速に傷んで衰えてしまいます。これを冠動脈疾患といいますが、狭心症や心筋梗塞として知られる病気です。
冠動脈の老化だけでなく、心臓の筋肉そのものが早く老化するのも大切です。一般的ですが体を老化させないよい生活習慣なら、心臓の老化もまた予防ができるでしょう。体や心臓の老化を防ぐ具体的な方法は下でお話しします。
3). 心臓に不健康な嗜好品
心臓に有害と明らかにわかっているもの(覚醒剤など)を摂取する人はいません。しかし心臓に不健康である自覚があまりないままに摂取する嗜好品もあります。タバコとアルコールです。
酒は適量以内であればリラックスする効果など健康によいことがあります。しかし適量を超えますと、確実に体や心臓に害になるのは皆さんご存じの通りです。タバコは心臓には間違いなく悪い嗜好品です。
心臓を壊さない。よい生活スタイル
現在心臓は健康でよい状態にあり、このよい状態を今後も維持したいと望むなら、以下の点に注意して生活するとよいと思います。どれも皆さんはよくご存じの事ばかりです。珍しく変わったことは何もありません。
将来はどうか分かりませんが、現在はここで書いたことが心臓を守る王道です。丈夫な心臓は皆さんの天寿まで軽々と働き続けるでしょう。要点を簡潔に箇条書きでまとめました。 ◆心臓病を克服し、健康を実現する日常生活
●正常血圧と正常脈拍数
心臓にとって高血圧と速い脈拍(頻脈)は大きな負担になります。血圧はできるだけ正常まで下げておいてください。当院での家庭血圧の目標値は年齢に無関係で、125/75mmHg以下です。
安静時の脈拍数は成人なら一分間50~80回程度が正常の目安です。これ以上やこれ以下にならないよう、血圧だけでなく脈拍数も同時にチェックして下さい。
●コレステロールと血糖値が正常
冠動脈の老化を遅らせるには、特にコレステロールの善玉/悪玉の比率(HDL-C/LDL-C)を2以下(LDL/HDL<2.0)に保つことと、食後2時間の血糖値を正常に保つ事の二点が非常に大切です。
●スローライフ
仕事中心のハードな生活スタイルは、重いストレスとなって心臓を傷めるでしょう。可能なら仕事中心のストレスの多い過酷な生活スタイルから、穏やかでのんびりした生活にライフスタイルを転換して下さい。 Web 心臓病■09 日常生活の過ごし方
●スリム体型
運動や食事のカロリー制限で、体重を厳しく減量管理し、体の若返りと心臓への負担の軽減を目指して下さい。お勧めする目標体重は、BMI 23以下です。*参考情報:BMI = 体重(Kg)/[身長(m)x身長(m)]
この目標体重は、多くの人で20歳前後の値に近いと思います。その年齢時期の体重がその人の適正体重です。そこからの増加分はほとんど全部が脂肪です。なにしろ重要な筋肉、骨、脳の実質は20歳の時より、普通なら年齢と共に軽くなっているはずです。 ◆痩せるが一番! 日本人は痩せて健康な民族?
●適度な運動の習慣
日常生活で適度な運動は必須です。運動によって、心肺機能、筋骨格機能、体内ホルモン環境、脳細胞活動、内臓組織など、すべてが活性化され全身が確実に若返るでしょう。 Web 心臓病■11 日常生活での運動
●禁煙・節度ある飲酒
タバコは止めましょう。一方、アルコールの種類は何でもよいですが適量を守りましょう。アルコールの適量は以下のコラムに計算方法を書きました。
◆「酒は百薬の長?」それには条件あり
飲めない人に飲酒を勧めるわけではありません。健康のためだと考えて飲めないアルコールを飲む必要はありません。あくまで飲みたい人が守るべき目標量です。
●血液・尿の検査値が、全部正常
健全な20歳頃の検査データ値を究極の目標にします。血液や尿の全検査データを20歳頃の正常値を目標にして到達するよう努力して下さい。その体内環境こそ人が老化しにくい最高の環境だと思います。
健全な20歳頃は以下のような環境にあると考えます。
1)身長・体重のバランスが良い(成人で普通の生活なら、BMIが23以下)
*参考情報:BMI = 体重(Kg)/[身長(m)x身長(m)]
2)血管老化を加速させる因子が全て正常(血圧、脈拍、コレステロール、血糖値、尿酸など)
3)体内主要臓器はすべて正常(心臓、脳、肝臓、腎臓、肺、胃腸、膵臓など)
4)敏捷な動作ができて、筋肉と骨格系が調和よく機能する(筋・骨格系の機能)
5)仕事、家庭、趣味などで精神活動に適度な刺激や緊張がある(健全な精神活動)
6)十分な睡眠と休養をとり、規則正しい日常生活をおくる
Web 心臓病■10 体重管理と栄養管理
まとめ
これらの条件が実現すれば、心臓の病気はもちろん老化が原因の様々な病気からも開放され、健康で長寿の生涯になるでしょう。
当院では多くの患者が経験しました。
以下の「けやき坂スタイル」を読めば、目標の生涯健康に役立つと思います。
そして・・、もし心不全になったら?
心不全の五部作
心不全の初期症状:
◆325 心不全の初期症状:ありふれて、間違えやすく、治りにくい
心不全の治療:
◆125 心不全の治療 その原則は心臓をいたわることです
心不全の予防:
◆025 心不全の予防 水は毒! 水分制限が一番
心不全とは?:
◆266 心不全とは? たとえ話でやさしく説明
深夜の心臓発作:
◆268 心臓発作 夜中なら不安と恐怖 ー解説と対処法ー
心臓病の究極予防:
◆369 心臓を健康にする ー心臓病・心不全の超予防ー