期外収縮:症状と対処法
期外収縮の症状
今日は不整脈の中で最もよくある、そして多くはあまり危険でない期外収縮についての話です。ただし油断すると危険なものもあるので一度は診察を受けるのをお勧めします。
症状は千差万別ですが、患者が表現する様々な言葉は、
胸が「ツマル」、「ポコン」、「バコン」、「ドキン」、「ウッ」、「クッ」、「バクバク」、「ハッ」、「空気が破裂する」、「ズキンと痛い」、「コロンと回る」、「一瞬の胸騒ぎ」、「心臓が動 きを一回休んだ」、「心臓が一瞬の空回り」、「胸が一瞬締めつけられた」、「脈が一回飛んだ」、「脈が一個抜けた」
などなどで す。 ◆心臓病 「一瞬、ドキン (ドキッ)!」 これはどんな病気?
また期外収縮の感じ方や起こる回数も個人差が大きく、患者のいう症状だけで病気の程度を予測するのは困難です。
期外収縮は症状が瞬間で「一回完結」が大きな特徴です。単発ですから、患者は「一瞬のドキン」等のように表現します。しかしこの不整脈が、短時間の間隔で(たとえば5秒間隔で)繰り返し規則的に表れる時には、ドキ・ドキと連続しているように思ってしまいます。「長い時間ずーっと続いていた」と話しますが、詳しく尋ねれば、ある時間間隔をおきながら単発の期外収縮が繰り返し起こっていたことが分かります。そしてこの様な繰り返しの起こり方は期外収縮に良くあることです。
非常に多くおこっていても全く気がつかない、ある意味で期外収縮に鈍感な人から、おこれば必ず症状として自覚する敏感な人まで、期外収縮の感受性は人ごとに相当な違いがあります。この違いは説明しました。 ◆期外収縮 よく感じる人、分からない人、症状には大差ある
大多数の患者にとって、期外収縮は大きな問題がないので治療もほとんど不要です。一度病院で調べて無害と診断されれば、原則的に後は放置しておいてよいのです(ただし、その後に期外収縮の原因が変化することがありますから、定期的に診察する方が安全です)。
あまり問題のない不整脈なのですが、症状は実に嫌なものです。不快で出始めたら早く消えて欲しいと思うでしょう。
自分でできる対応
では期外収縮が出たらどうすれば自分でこれを止めることが出来るでしょうか。いつでもどこでも自分で簡単にできる治療の方法をお話しします。試してみるとよいでしょう。
現在期外収縮を治療中の人は必ず主治医の治療方針に従って下さい。対象外です。
●生活に、不安、緊張、興奮、怒り、恐れなどの感情があるなら、気持ちを切り替えましょう。それが期外収縮を誘発しているかも知れません。
●リラックスしましょう。少し外を歩いてみて下さい。体操など何か軽く体を動かしてみて下さい。
●期外収縮への不安感・恐怖心で誘発されて発生頻度が増えます。期外収縮のことは忘れて気にしないことです。何か別の楽しいことを考えて下さい。
●コップで水をひと口、ふた口、試しに飲んでみて下さい。
●運動中に出やすい人なら、運動を中止して下さい。
●その時もし血圧が高いなら、いつもの降圧薬を増量すると良いかも知れません。主治医に相談して下さい。
●いつも飲んでる使い慣れた鎮静剤(安定剤)が手元にあれば、その時に飲むと効果があるかもしれません。
この様な対応で期外収縮が消えることがあります。
誘因とその進行
起こる誘因
期外収縮は、起きる誘因で最も多いのが「ストレス」です。ストレスの原因として、仕事上の問題、家庭の問題、人間関係、経済的問題、病気の不安、受験、男女関係など人さまざまです。しかしストレス以外にも、以下の多くの誘因があるように思います。
・睡眠不足
・過労
・運動が始まった直後、運動中、運動が終わった後
・きつい肉体的仕事をして疲れた
・夜ふかしをした
・ストレスや不安が解決した直後
・緊張したり、興奮している、怒った
・イライラしている
・コーヒーを飲んだ
・ドリンク剤(カフェイン入り等)を飲んだ
・タバコを吸っている
・酒を飲んだ
・血圧が上がった
・持病の心臓病が悪化した
・新たな心臓の病気になった
・市販薬や医薬品の副作用
・甲状腺機能亢進の病気がある
・安静で心穏やかな時、睡眠中
症状が進行していく経過
以上の様に多くの誘因がありますが、患者を診察していて実際に多いのはストレスが一番です。
期外収縮はストレスが長く続いているか強い時によく誘発されます 。一度期外収縮が出て、それを嫌な不快感と思うと、その嫌な不愉快な感覚・記憶が強く残ります。そして期外収縮がまた起きるのではないか、起きたら嫌だ、気分が悪い、それで倒れるのではないか?等の気持ちが深く心の中に沈殿します。
こうなってしまいますと、何かの機会に一回でも期外収縮がおこると、この不愉快な不快な症状そのものが自分にとって新ストレスになります。期外収縮が繰り返して起こると、その不安感や恐怖心が増幅され、期外収縮がさらに多発するようになります。期外収縮への不安を強く感じれば感じるほど、期外収縮はさらに多発し益々不愉快の程度が悪化するという悪循環に入ります。
対策
期外収縮に不安や恐怖を感じないようにすることです。「また出たけど、心臓のシャックリの様なものだから心配しなくていい。気にしない気にし ない・・」と無視することです。そのうちに出なくなってしまい、期外収縮の事は忘れてしまうでしょう。
もう一つのお勧めは、一度病院に行き診察や検査を受けて、医師から無害性の不整脈であり薬も治療も不要で心配ないと言ってもらうことです。
これでほとんどの人は不整脈の不安や恐怖から解放されます。診察室を出た瞬間から晴れ晴れした気持ちになり、「不愉快な不整脈」の思い込みと別れられるでしょう。患者はニコニコして帰られます。私が多くの患者で経験したことです。
しかしどうしてもこの不整脈を気にしてしまう人には、抗不安薬や軽い抗不整脈薬を少量だけ処方することもあります。
安全でない場合
以上のような対応は、期外収縮が無害で危険性がほとんどないことが心エコー検査や24時間心電図(ホルター心電図)などで確かめられている場合です。
無害な不整脈だと決まってない人では簡単でありません。期外収縮は全員が心臓のシャックリと考えて病院に行く必要がないなどとは誤解しないで下さい。
以下のような症状が同時にあったなら、症状は似てても原因が全く異なる別の心臓病や別の不整脈であったり、普通とは違う軽くない期外収縮である可能性があります。 ◆心臓病 「一瞬、ドキン!」 これはどんな病気?(重症例)
区別はそれほど簡単ではありません。一度は病院を受診し専門医の診察を受けて下さい。このことは非常に重要です。忘れないでください。
*参考情報*
別のコラムで書いた記事ですが、参考にして下さい。
期外収縮は不安で増える
この期外収縮は何かの原因で一旦出始めると、しばらく出やすい状態が続くことがよくあります。ストレスが引き金になる事が多いと話しましたが、そんな時期はストレスがしばらく続くのでその間はこの不整脈も出続けると考えられます。 ◆不整脈 期外収縮の多発 ストレスが契機となる人が多い
不整脈を自覚する人にとっては不快です。心臓の一瞬の異常な動きですから、これが起こる度に短時間であっても不快な気分になるのです。この不快さを気にし始めますと、「また出るのではないか、出ると嫌だ」と考えるとその不安がこの不整脈を更に誘発することになり、ますます回数が多くなります。こんな患者が比較的多いこともよく経験しました。不整脈の自覚症状そのものが次の不整脈発生の誘因となります。従って一旦出始めるとますます多くなってしまう悪循環に陥るのです。
不安解消で期外収縮は消失
そんな患者の例を一つお話しします。
■60歳代の女性です。数年前にこの期外収縮で当院を初めて受診しました。心電図、レントゲン写真、心臓エコー検査、24時間ホルター心電図などの所見を総合して、心配ない上室性期外収縮であることが分かりました。患者には「心配のない軽い不整脈です。起こると嫌な感じはしますが、それで危なくなったり命を失うようなことはありませんから安心して放置しておいて下さい。気にしなければ自然に出なくなりますから、そのうちに忘れてしまうでしょう」と話しして診察は終了しました。
その方が数年後に久し振りにまた来院されました。
「あれ以来、全く不整脈には悩まされずすっかり忘れてしまっていましたが、最近旅行中の電車の中で、また同じような不整脈の症状が出てきました。それ以来、不整脈の出る回数が徐々に多くなってきて今週は毎日のように出ています」というお話です。以前と同じように検査しましたら同じような不整脈が出ていました。一日の不整脈の回数も同じようであり、その他の検査にも大きな変化はありません。
「久し振りの不整脈ですから、この不整脈について少し神経質になってしまったのかもしれません。以前と同じようで大した病気ではありませんから、このままで様子を見て下さい。この結果に安心して不整脈は消えてしまうかも知れません。消えてしまえばそれでよいでしょう。もし変わらなければもう一度診察に来てください」とお話ししました。これで患者さんの症状は消え、安定した元の生活に戻られました。
不整脈が一度発生すると、その症状が嫌で不整脈が誘発されて益々回数が多くなる例です。こんな場合は診察と検査で安心すると消えてなくなるのが特徴です。
高血圧は隠れた重要な原因
良性で無害性の期外収縮治療で注意すべきは、高い血圧がその発生の誘因となっている場合があることです。もちろんストレスが最も主要な原因だと思いますが、高い血圧はそれだけでも心臓に大きな負担となって期外収縮を誘発する原因になる場合があると思います。
高い血圧の患者の場合、安静時の血圧が140mmHg程度以上であれば、それを降圧薬で下げるだけで回数が激減することは当院で何度も経験しました。高血圧は心臓に悪い影響があります。高血圧が期外収縮発生の原因になっている可能性のある患者なら、発生はストレスと無関係のことが多いでしょう。もし患者に原因のストレスが思いつかなければ誘因は高血圧かも知れません。
高血圧が原因の患者さんでは、降圧薬で血圧を正常化するだけで劇的に減少します。患者も症状が嘘のように消えてしまうので感謝します。
血圧が少しくらい高くても大丈夫と思っても、期外収縮が多く出ているなら、その程度の血圧でも心臓に負荷となっている可能性を考えて十分な降圧治療をすることが期外収縮の消失に結びつくかもしれません。
降圧薬が有効だったケース
他の病院で良性の期外収縮ですが抗不整脈を投与しても効果なく当院を訪れた患者です。抗不整脈薬を一度中止して、降圧薬を投与しただけで期外収縮が消えたことは幾度かありました。
高血圧が原因となっている期外収縮の場合は、抗不整脈薬では効果不良と予想されます。たとえ軽症の高血圧であっても、抗不整脈薬ではなくまず降圧薬の投与で期外収縮の反応を見ても良いかもしれません。
軽症高血圧であったとしてもそれは安静時のことであり、仕事中では長時間かなりの高血圧になっている場合も予想されます。心臓にとって負担となっているかも知れません。これまで期外収縮を降圧薬だけで治療したことは何度かあります。 ◆期外収縮と高血圧 血圧を下げると出なくなる?
降圧薬は心臓にも直接影響する薬が多いですから、もしかしたら血圧が下がって期外収縮が消えたのではなくて、降圧薬の心臓への直接作用で効いたのかも知れませんが。
別の心臓病もあるなら、降圧は特に効果的
当院を期外収縮で受診する患者の多くは、それ以外に心臓病はなく、良性で無害な期外収縮の人が中心です。しかし、もし既に狭心症、心筋梗塞、心房細動、心臓弁膜症、拡張型心筋症などの心臓病がある患者さんなら、なおさら高血圧の治療は良い効果があると思います。
心臓への負荷を減らす目的で血圧を常時正常化しておくことは、心臓を守るだけでなく期外収縮の予防や治療のためにも大切なことだと考えます。高血圧が心臓に与える悪い影響は、期外収縮の治療でも認識させられます。
続く・・・
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