「これまで健康で過ごしてきたが最近脈が速くて気になる。苦しくない。大したことはないが何かの病気かも知れないと不安を感じている」
今日の話はこんな症状の患者の病気を想定します。まず症状のタイプを3つに分類します。
(1)緊張・不安や運動中だけ、短時間おこる。
(2)安静時でも一分間90回以上の脈が数時間~何日も続く。
(3)突然脈が速くなる、しばらくで消える。
(1)では問題ない場合もありますが、全てのケースは病気(心臓病を含む)の可能性があります。心配なら早めに病院を受診し検査することを勧めます。
まず先にこのコラム読むとよいと思います。 ◆脈の異常:速い、遅い、飛ぶ、抜ける、止まる、弱い、強い
心配な時は医師に相談ください。
◆心臓病 症状から自己診断は、リスクあり危険
はじめに
速い脈:突然なるか、長時間持続か、が大切
今日はこれまでたいした病気もなく健康で過ごしてきた人で、最近「脈が速くなることがあって気になっている」。こんなケースを想定して話します。元々心臓病があり診断も確定し現在治療中の人なら参考になりません。
以下の3つのタイプを想定します。
1)緊張、不安、運動中に速い脈
症状:緊張している時や何か悩みや不安を抱えて考えている時、運動している時に、ドキドキして脈がいつもより速く打っている様に思う。そのうちなんとなく忘れて気がつくと元に戻っている。運動を止めるとしばらくで消えている。
病気について:緊張、不安、運動からきた頻脈だと思われます。普通なら病気ではないだろうと予想します。
興奮したり、怒ったり、緊張したりした時の頻脈は普通の体の反応であり通常なら問題となりません。
運動中に起こるドキドキの動悸や頻脈は、肥満や運動不足が原因の可能性が高いと思われます。恐らく日頃の運動不足が原因の基礎体力低下のためでしょう。
しかしそんな時の症状とは少し違うドキドキや頻脈なら、病気が隠れている可能性があります。その病気は以下(2)とほぼ重なります。詳細はそちらを参照下さい。
・不整脈、狭心症発作、心不全など
・貧血、肺疾患、甲状腺疾患、神経症、慢性疾患など
以上の可能性は否定できません。
2)一分間90以上、数時間~何日も続く
症状:最近いつも心臓が速く動いている様に思う。静かにしていても速く、脈を測ると一分間90前後かそれ以上あると思う。歩いたり運動するともっと速くなって疲れやすい。こんな状態が続いている。日常生活は普通に出来ているのだが。
病気について:病気が潜んでいる可能性が高くなります。心臓病とそうではない病気の二種類が考えられます。その原因が心臓病なら、
・不整脈: 心房細動、上室性頻拍など
・心不全: 心筋梗塞、心筋炎、心臓弁膜症、心筋症など
が想像されます。原因が心臓病でなければ、
・貧血: 胃腸からの出血、婦人科的な過多出血など
・肺疾患: 慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎など
・甲状腺の機能亢進: バセドウ病など
・慢性感染症、膠原病: 結核、SLEなど
・神経症、自律神経不調: 不安神経症、心臓神経症など
・腎臓病、肝臓病、癌など
が想像されます。
3)突然、脈が速くなるがしばらくで治る
対策
(1)は確率的に病気の可能性は少ないと思いますが、病気が潜んでいる場合も否定できません。決めつけないで下さい。
(2)(3)は何かの病気の可能性が高いと予想されます。
心臓病か否か、心臓病なら軽いか重いかを含め、この情報だけで診断できません。もし心臓病であれば危険な不整脈の可能性もあります。出来るだけ早いうちに病院を受診し詳しく調べることを勧めます。
参考情報
1.正常な脈拍数は?
健康な大人の脈拍数とは、静かに安静にしていれば大体50~79回/分くらいです。激しく運動すれば150回/分くらいまで速く動くでしょう。安静時の脈は加齢とともに徐々に遅くなっていくのが普通です。
激しいスポーツを長年やってきた人なら、安静時に40回/分くらいかも知れません。しかしそれでもほぼ正常です。そんな激しい運動をしない普通の生活なら、50回以下ではすこし遅いと言えます。
安静で脈拍数が80回/分以上(80< 脈拍数 <100)であっても、それだけで病気だとは言えません。しかしそれが長い期間続くなら一度は病院を受診して調べた方が良いでしょう。
もし100回/分以上(100< 脈拍数)が続くなら、病気の可能性がかなり高くなります。病院を受診して下さい。
2.脈拍数の正しい測り方
脈拍数は環境の条件や精神状態で血圧と同じように極めて敏感に反応し変化します。そのため脈拍数を測定する時は、あくまで安静時(体と心の両面)が基本となります。脈拍と血圧は安静時に測る習慣を付けましょう。
自分で脈を測るのはやってみると分かりますが、意外に難しいものです。そこで皆さんには家庭血圧計を使って脈拍を測るのを勧めます。家庭血圧計は、血圧表示の後に脈拍数も表示しますので簡単に分かります。
血圧と違って、手首でも測っても肘で測っても脈拍数の精度は比較的良好です。便利な機械です。
まず静かに座った姿勢で最低5分間以上を待ちます。この時に誰かと話したり、テレビを見たり、本を読んだりはしないことです。仕事のことなどは考えず心は穏やかにして静かに座って待ちます。
この後に腕や手首で血圧を測れば、血圧表示後に脈拍数も表示されます。測定中は動いたり興奮したりしないことです。その時、たばこも吸わないで下さい。測定中は測定器の表示を眺めないことです。出来れば目を閉じて下さい。
そして、速い脈と遅い脈では・・
速い脈と遅い脈の五部作
脈が異常になる種類は?:
◆379 脈の異常:速い、遅い、飛ぶ、抜ける、止まる、弱い、強い
脈が80以上ならどんな病気がある?:
◆141 頻脈?:安静で脈80台以上、長く続く時は病気が潜む?
脈が100前後なら心臓の病気か?:
◆283 脈が100前後、速くて気になる どんな病気?
脈が異常に遅く、すごく疲れるのは?:
◆303 動くとひどく疲れる、脈が遅い。これはどんな病気? ー脈の遅い心不全ー
めまいや気を失って、脈が遅いと危険か?:
◆314 心臓病や低血圧でおきる「危険なめまい」とは?
心臓病の究極予防:
◆369 心臓を健康にする ー心臓病・心不全の超予防ー