心不全とは?
心不全とは、心臓が何かの病気で衰えその結果おこる全身の循環不全の状態を言います。非常に簡単に言えば「心臓が衰えたためおこった全身の基礎体力の低下」です。
心臓が弱る病気なら全て心不全になる可能性があります。それでは「心臓が弱る」とはどんなことでしょうか。心臓を構成する主要部品のどれに問題があっても心臓は弱ります。
自動車の重要部品の調子が悪ければ自動車の性能がダウンするのと同じです。心臓を構成する重要部品とは、筋肉(心筋)、心臓弁(4個ある)、心臓の中の電気が流れる線(刺激伝導系)の3つです。
この3種類の部品のどれが問題であっても、障害の程度が重ければ心不全になるでしょう。中でも多いのは心筋が傷害される病気です。
心不全の原因となる病気
心不全を引き起こす原因となる病気や状態を以下に列挙しました。
・冠動脈疾患 (心筋梗塞、時に狭心症でも)
・高血圧 (心肥大や心拡大がある)
・不整脈 (心房細動が多い)
・心臓弁膜症 (大動脈弁や僧帽弁の障害)
・心筋症 (肥大型心筋症、拡張型心筋症)
・生まれつきの心臓病 (心房中隔欠損症など)
・ウイルスや細菌感染 (風邪ウイルスなど)
・貧血 (重症の貧血)
・癌の治療 (抗がん剤や放射線治療の副作用)
・甲状腺の機能亢進状態 (バセドウ病)
・アルコールの過量摂取 (長年の大酒家)
・薬物依存や中毒 (コカインなど)
・医薬品、サプリ、漢方薬等の副作用
・激しい運動や労働 (長年肉体を酷使した)
健康でも、注意するべき心臓病
心不全になる原因の病気はたくさんありますが、現在健康な成人が将来なる可能性のある病気として想定すべきものはそうたくさんはありません。可能性が比較的高い病気を中心に話します。
■心筋障害
心臓の筋肉(心筋)は心臓パワーの源泉です。この筋肉の力で心臓は拍動し、血液を全身に送り出すことが出来ます。しかしこの筋肉の力が落ちればいずれ必ず心不全になります。
心臓で最も重要な部品である心筋が傷害される病気で比較的数が多いのは、心筋梗塞(虚血性心疾患と言います)と高血圧の二つです。特にこの二つに注目して下さい。
1)心筋梗塞・狭心症
現代の特徴で過食、肥満、運動不足の人が非常に多くいます。この状態が引き起こす病気の中で重大な病気が心筋梗塞と狭心症です。
心筋梗塞は、狭心症が進行した重症型であり、名前は違いますが実態は同じような病気です。二つをまとめて虚血性心疾患と言います。
この病気では必ず心筋が傷害されますので、病気が進めばいずれ心不全になるのは既定のコースです。実際この病気で心不全に悩まされている方は少なくないでしょう。
2)高血圧
心筋が傷害される重要なもう一つは高血圧です。
高血圧は、それ自体が心臓の筋肉に大きな負荷となります。重い荷物を運ぶ作業を長年続けていれば、腕の筋肉が太くなる事は誰でもわかります。筋肉に負荷を与え続ければ(筋肉を鍛えれば)いずれ筋肉は太くなります。
心筋も同じように高血圧で重い負荷をかけ続けられればいずれ筋肉は太くなります。程度が適度ならこれもそれだけで終わりですが、高血圧を治療せず長期に及べば、心筋は鍛える限度を超え一転してダメージが進み始めます。そして障害が進めばいずれ心不全となります。
高血圧は一見して何も症状がないと患者は錯覚しますが、本当は症状があるのです。そしてその高い血圧は心臓と全身の血管に大きな悪い影響を与え続けます。我々医師にはその事は当たり前なのですが、多くの患者はそれを全く理解していません。
高血圧は心臓の筋肉や全身の血管を大きく傷害する目に見えない非常にタチの悪い病気であることを理解して下さい。
■不整脈
次の病気は心臓内の電気系統が故障する不整脈です。不整脈はたくさんの種類がありますが数が増加し注目するのは心房細動です。
心房細動になった瞬間に心不全を起こす場合(急性心不全)もありますが、注目するのは急性ではなく、心房細動が長年続くとゆっくりおこってくる慢性心不全のほうです。
心房細動が原因の慢性心不全は、心臓の「心房」という部屋が大きくなったために誘発される心不全です。心房細動になって5年以上も経過してから徐々に心不全症状が現れるでしょう。
1)心房細動
心不全を引き起こす重要な病気の3番目は心房細動です。
心房細動になった瞬間に一時的に心不全となる場合がありますが、私が強調したいのはそうではなく、心房細動になって数年から10数年後に現れてくる心不全です。
心房細動になりますと、心臓の中の心房と名前のついた部屋がゆっくりと大きくなっていきます。大きくなった心房では血液の流れが悪くここに血液の塊(これを血栓と言います)が出来やすくなります。それが流れに乗って脳の血管を詰まらせてしまえば非常に重症な脳塞栓(脳卒中)になります。極めて重大な病気ですが、これは心不全とは関係ありません。
心房が大きくなれば心房内の血圧が高くなってしまうのです。この高くなった血圧の影響で、心不全が起こってくるのです。
心房細動が長期間続けば、心房がゆっくりと大きくなり、心房の血圧が高くなって、最終的に心不全に進行する。また大きくなった心房では心房内で血栓ができやすくなり、そのために脳塞栓が起こりやすくなる。
心房細動とは、長期の経過で心房がゆっくりと大きくなる事で、重大な新たな2つの病気(脳塞栓、心不全)を引き起こし易くなる病気であると理解下さい。心房細動では、出来るだけ心房を大きくさせない治療が必要です。
■心臓弁膜症
心臓には4つの弁があります。名前は大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁です。どの弁に障害があっても心不全になる可能性があります。
中でも重要なのは大動脈弁と僧帽弁です。この弁が傷害された時はそれ以外よりも症状が重くなります。
今現在健康で心臓病がない人では、その他の心不全の原因は比較的頻度が少なく、あまり注目しなくて良いと思います。
続く・・・
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