心臓病の発作(ほっさ)は夜中に起こる事が少なくありません。特に夜中はパニックと不安や恐怖感で症状も悪化します。
発作が治まり、夜が明けてから病院受診しても検査に異常はなく病名の確定は難しいのが現実です。
現在健康な中高年でも将来なりやすい心臓病は、期外収縮、心房細動、発作性頻拍症、洞不全症候群、狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症等です。
典型的な心臓病の発作は、床に入り眠りにつき数時間後の深夜に胸の苦しい症状で目が覚めます。症状の辛さは様々です。楽な姿勢で静かに落ち着くことです。数秒間から長い時は数時間も続きますが朝起きた時には消えていることが多いでしょう。
心房細動、心筋梗塞、心臓弁膜症等がある人なら心不全の発作も夜中に好発します。
心配な時は医師に相談ください。
◆心臓病 症状から自己診断は、リスクあり危険
心臓発作とは
健康な中高年もなる心臓病
心臓の病気は何十種類もありますが、現在心臓病がない中年以後にこれから直面することになるかも知れない病気はそう多くはありません。その代表的な心臓の病気とは、
●期外収縮、心房細動
●発作性頻拍症、洞不全症候群
●狭心症、心筋梗塞
●心臓弁膜症
などです。
心臓発作の三種類
心臓発作とは或る心臓病のために突然起こる胸の痛み、苦しみ、息苦しさ、動悸などの症状のことです。
数秒から数時間、場合によっては数日間も続きます。軽症から重症、時にはその瞬間に命を失うものまで非常に幅広い病気です。
現在は健康で何も心臓病のない中高年がそのうちになるかも知れない心臓病の発作の中で特に注意が必要な可能性の高い心臓発作を中心にお話しします。
心臓発作には大きく分けて3種類があります。
1)不整脈の、動悸発作、失神発作
2)狭心症や心筋梗塞の、胸痛発作
3)弱った心臓の、心不全発作
があります。
発作が夜中におこる
心房細動や発作性頻拍症の動悸発作、狭心症や心筋梗塞の胸痛発作は24時間どこでもおこります。日中に起こるのは普通ですが人によっては発作が特に深夜に偏って起こる事が珍しくないのです。眠ってから深夜に発作が起こるのです。
深夜に偏って発作が見られる心臓病は当院の印象では狭心症、心不全、心房細動です。
狭心症では異型狭心症と微小血管狭心症では夜間に高頻度にみられます。
心房細動の発作は誰でもそうなるわけではなく一部の人だけで夜間におこります。その頻度は少なくはないと思います。
心不全の発作は一般的に夜中に起こりやすい傾向があると思います。
発作のパターン
発作の典型的なパターンは、床に入って眠りにつき数時間後の深夜0時~5時頃に胸の苦しい症状で目が覚めます。短ければ数秒間ですが長い時は数時間も続きます。
多くは朝起きた時には消えているでしょう。眠ったのでどれだけ続いたか分かりませんが10分以上は続くでしょう。
症状の重さの程度は様々で、一瞬で非常に軽いものから救急車で入院するほどのものまでです。当院のようなクリニックで多いのは軽症から中程度で、たとえ数時間続いたとしても入院するほどではなく翌朝にはほぼ消えているか軽くなっているタイプです。
深夜は特別な時間帯ですからここで起こった心臓発作では患者も特別な心理状態になるようです。パニックで強い不安と恐怖に襲われます。
発作が繰り返すことはよくあります。夜中なら同じ時間帯に繰り返すようです。症状の重さや薬への反応は日によって変わりますが起こる時間帯は不思議と同じです。
その時間帯は午前0時から5時頃での深夜から明け方までです。午前2時半を中心とした前後2時間の時間帯が多いように感じます。
深夜に多い心臓発作
草木も眠る「丑三つ時(うしみつどき)」
「草木も眠る丑三つ時」とは、人はもちろんのこと草木までもが眠り静まりかえった真夜中のことで牛の刻を四つに分けたうちの三番目をいいます。
現在の時間では午前2時~2時半頃にあたります。化け物や幽霊が出る時刻といわれていて、魑魅魍魎が跋扈し丑の刻参りの白装束が徘徊するのもこの時間帯です。
「丑三つ時」は陰の気が強く満ちてくる時間帯とされたようです。宇治拾遺物語・今昔物語集に「愛人の家から帰る途中に鬼や妖怪の大部隊に遭遇して、念仏唱えながら震えていた。」という話が収録されており、それが百鬼夜行(ひゃっきやこう)と言われています。百鬼夜行とは鬼や妖怪及びその類が夜中に行列を作り練り歩くという話です。(→出典)
「丑三つ時」の前後2時間(午前0時から午前4時半頃まで)は当院の経験でも心臓発作が起こりやすい時間帯だと思います。
心不全発作の症状
心臓発作は苦しくて死にそうなほどの重症から軽い胸の違和感やドキドキを感じるだけのものまで幅は大変に広いのです。
一般的ですが、不整脈の心臓発作では、「その症状が軽いので病気は軽い、重いので病気は重い」とは単純に言えないところが難しいところです。発作の症状の軽重と病気の軽重が一致するわけではないのです。不整脈の症状が軽いからと思って甘く見るととんでもなく重い心臓病であったりします。
心臓病の発作で眠ってから深夜になってひどい呼吸困難が現れる重要な発作があります。心不全の発作です。
心不全発作は、心房細動、心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症等の心臓病を既に持っている人に、何かの誘因(水分の過剰摂取が多い)が加わった時、眠ってから夜中に発作を起こすパターンです。
心臓病が全くない元気な人に、突然夜中に心不全発作が襲ってくることは稀です。もちろん例外はありますが、そんな稀な場合についてはリンク先で詳しくお話ししました。
心臓発作:なぜ夜中におこるか
なぜそんな夜中に多いのか、一つには自律神経系の役割が関係しているようです。
自律神経系と関係して心臓発作が起こりやすい条件は、1)睡眠中は、迷走神経系(体を睡眠や休憩や食事中状態に設定する神経)が活発な時に起こりやすい心臓発作タイプ、2)明け方は、迷走神経系から交感神経系(体を活動や戦闘状態に設定する神経)に神経支配が交代する時間帯ですがこの時間帯に起こりやすい心臓発作タイプ、3)日中の活動中、交感神経系が活発に働いている時間帯に起こりやすい心臓発作タイプ、などがあります。
さらに、4)日中活動中には体内の過剰水分の多くが重力で下半身に貯まってます。夜に眠りについて仰向け姿勢になると、下半身の過剰水分が全身に拡散します。この拡散した水が肺でトラブルをおこし心不全発作の呼吸困難を起こします。眠ってから数時間後の深夜に発症することが多いのです。
夜中ではパニックに:不安、緊張、恐怖
夜中に心臓発作で苦しくなると患者は非常に不安になります。その不安は昼よりかなり強くなるでしょう。
家族もみんな眠っています。病院も休みの時間帯です。このまま朝までしばらく我慢するか、家族を起こして助けを求めるか、行くならどこの病院に行けばいいのか等と思いを巡らせます。
その悩み、不安、緊張、恐怖が血圧を上げます。血圧が上がれば心臓に負担となり発作の症状は更に悪化するでしょう。
もともと心臓病がある人ならこんな経験は一度や二度はあったでしょう。その時にどうするか主治医から対処法を聞いていると思います。
心臓病になったことがなく初めての症状であればどうすればいいのか全く分かりません。
深夜に起こればその不安と恐怖は最高になりパニックで冷静さも失われるでしょう。こんな時にどうするか、心臓病のタイプで対応方法が違いますから一般的な対処法を簡単にお話しすることは難しいです。
心臓発作:症状と対処法
初めての心臓発作:処置と対応
これからのお話は、これまで心臓病がない方に限定します。試しても良い方法をお話しします。心臓病があって治療中の人は主治医の指示に従って下さい。
まず興奮しないで落ち着くことです。強い不安や恐怖は心臓病の症状をさらに悪化させます。難しいかも知れませんが冷静に気持ちを落ち着かせるように努力してください。
体の姿勢
自分が一番楽な姿勢を探してその姿勢を維持してください。例えば、
・布団の上に座って、背もたれに寄りかかる
・布団の上で起き上がって座る
・起きてイスに座る
・前屈みでイスに座る
・仰向けで寝る(枕を外し両脚を上方に持ち挙げる)または(枕を高く上げる)
・横向き姿勢で寝る
等です。
体を締めている帯やベルトは外してください。息苦しければ窓を開けて外の空気を入れてもいいでしょう。もし可能ならその時に血圧と脈を計って記録をメモに残し、後から医師に見せると大変役に立ちます。
重い心臓発作
以下の様な症状なら心臓発作は重いでしょう。
・見た目が苦しそう
・症状が強い
・全身のだるさや辛さや苦しさが普通ではない
・冷や汗が出ている
・顔色が悪い、手足が白くなって冷たい
・短時間だが意識を失った
・吐き気が強い、吐いた
・便や尿を漏らした
・血圧は正常か高めなのに、その時は100mmHg以下に
・脈拍は70前後なのに、その時は110以上に
・血圧や脈がエラー表示されて、うまく測れない
こんな症状や異常があれば救急車を呼んで下さい。
夜中の発作は診断(病名確定)が難しい
深夜の心臓病の発作は昼間の発作より不安が強くなるために病気の症状が少し誇張され修飾されます。本当の病気の姿が隠れて分かり難くなることがあります。
発作の時に検査が出来れば診断に役立ちますがまず期待できません。
最近は貸し出し用の携帯心電計等もありますからそれを活用すれば役立ちます。発作が頻繁にある人には有用ですが発作が月に1度もない場合は困ります。発作時の血圧や脈拍だけでも分かれば参考になります。
多くの患者は夜が明け朝になり症状がすっかり消えてから来院します。医師はその発作の状況の話から病気を推測するのですがなかなか難しい予想になります。
その日の検査ではどれも病気の診断には役に立たないことが多くこんな場合は医師の経験と勘頼りになります。
その発作が心臓病由来と予想されるなら可能性のある2,3の心臓病を優先順位をつけて解説し次の発作の対応方法を教えその日から治療薬も開始することが多いと思います。
いくつかの検査を組み合わせながら以前お話しした治療的診断法を開始します。追加検査を予約します。
まとめ
心臓発作は真夜中に突然に胸の苦しい症状が起こりしばらく続いて多くは自然に消えます。
夜が明けて病院を受診しても検査で異常所見は見つからず心臓専門医でも診断確定に苦労することが少なくありません。
出来るだけ早く原因の病気を確定し恐怖の夜中の心臓発作を解決しましょう。
そして・・、心不全の治療は?
心不全の五部作
心不全の初期症状:
◆325 心不全の初期症状:ありふれて、間違えやすく、治りにくい
心不全の治療:
◆125 心不全の治療 その原則は心臓をいたわることです
心不全の予防:
◆025 心不全の予防 水は毒! 水分制限が一番
心不全とは?:
◆266 心不全とは? たとえ話でやさしく説明
深夜の心臓発作:
◆268 心臓発作 夜中なら不安と恐怖 ー解説と対処法ー
心臓病の究極予防:
◆369 心臓を健康にする ー心臓病・心不全の超予防ー
心不全コラムの特集:
特集:心不全 症状・治療・予防
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