無症状の心房細動の発見は難しい
無症状の心房細動は将来怖ろしい結果を招くことが分かっていても簡単で確実な初期の発見方法がない病気です。そして無症状で心房細動になっていることを全く自覚していない人が意外に多いのです。
心房細動で症状があるのは嫌なものですが、自分が危険な状態であることを教えてくれるのはありがたいことです。むしろ無症状の方が生命に危険が高くなるのです。→◆心房細動 無症状の人がいる 悲劇を作らないために
病院へ定期通院していないなら、年一度のドックや検診を受けても一時的に短時間しか起こらない心房細動が偶然見つかるのはむしろ幸運で見つからないのが普通です。定期通院中の患者なら、頻回な定期診察時に偶然発見される機会があるかも知れません。
しかし家庭血圧を毎日測り続けるなら、無症状の心房細動を見つけるチャンスはかなり大きくなります。
家庭血圧計で毎日朝夕二回血圧を測ってノートに記録していれば、原因不明でいつもと違ってかなり低い血圧となり、同時に不整脈マークが点灯したり脈拍数にエラー表示され、いつもよりかなり速い脈拍が表示されるなら心房細動になっている可能性が高いでしょう。
心房細動では低い血圧、速い脈拍に
普段は正常な心臓の鼓動なのですが、一時的に心房細動になった(一過性の心房細動または発作性心房細動)時には、無症状ではあっても、血圧計の表示がいつもとかなり様相が異なっているでしょう。
恐らく、血圧はいつもよりかなり低く表示されます(上の血圧が20mmHgくらいは低下する)。脈拍はエラーが表示(不整脈マークが点灯)されます。そして異常に速い脈拍数となっているかもしれません(いつもより15回/分以上の増加)。その時に何度測定しても同じ異常な値が表示されるでしょう。自分の体は変化ないので多くの人は機械の故障と解釈します。
その時に同じ機械で健康な家族を測ると血圧と脈拍数は何ら問題なく表示されます。機械が壊れたわけではないと理解できます。
もし心房細動になった瞬間に胸の症状が起こっておかしいと分かる(症状がある場合)なら、その血圧と脈拍数の異常は心臓の異常でなったのだろうと気付くでしょうが、症状が全くないなら血圧計の変な表示の意味が分からず、変だとは思いながらもそれで終わってしまうでしょう。そしてそんな出来事は忘れ去られてしまうのです。
心房細動のサイン:低い血圧、速い脈拍
心房細動でも症状がなく気がつかない人でも、理由なく血圧がいつもより大きく下がっていることや不整脈マークや脈拍エラー表示、異常に速い脈拍数がでた事から、不思議に思って測定を何度も繰り返すことになります。
ここで疑問を持ってください。この疑問が無症状の心房細動を見つけるチャンスです。「今の自分は心房細動になっているのでは?」と疑って下さい。
ただし家庭血圧計がこの様に表示されたら必ず心房細動だとは限りませんので注意して下さい。別の不整脈でも同じように表示される場合があります。
しかし家庭血圧計のこの異常表示は心房細動を発見する重要なサインなのです。心房細動が無症状なら、これは非常に重要な情報になるでしょう。このことを覚えておいてもしそんなことがあれば必ず心臓専門医に事実を相談して下さい。
心房細動を発見したら
無症状の心房細動が見つかっても落胆しないで下さい。心房細動になったことは心臓病になったことであり残念なことですが、何か重大な問題が起こる前に病気を発見できましたから治療を開始できることを幸運であったと思いましょう。
もし発見できないなら将来重症の脳卒中から重症な四肢麻痺や脳障害の後遺症を残し社会性を完全に失うのです。そうならずに事前に治療が開始出来た幸運を喜ぶ方が幸せです。
たとえば早期癌を偶然発見できたのと同じようだと思って下さい。癌が見つかったのは残念ですが、偶然に早期であったため手術やその他の治療で助かったと思う幸せです。
心房細動は重大な病気ですが、結果的にそれが自分の運命だったなら後ろ向きに考えず前向きに考えましょう。
毎日の血圧測定の習慣を
毎日の家庭血圧測定で無症状の心房細動を発見するチャンスに活用することは有用です。この方法は現在の医学水準で最も簡単で最も実際的な方法として皆さんにお勧めします。
血圧を毎日測定することは中年以後なら誰もその価値は分かっていると思います。その家庭血圧測定に無症状の心房細動を見つける役割を加えてみてはいかがでしょう。
心房細動は血圧管理が必要と同年代
心房細動は中年以後から増加してくる病気です。家庭血圧を測定する習慣が必要な中年以後にとって血圧計のもう一つの大切な活用方法だと私は思います。
附録:心房細動で脈拍がエラー表示される理由
心房細動は、心臓の動きに規則性がなくなりますから、心臓の動くリズムはデタラメになっています。家庭血圧計は心臓の動くリズムが一定で規則正しいことを前提として出来ていますから、心房細動の患者なら家庭血圧計は「心臓の動くリズムが一定ではありませんから正しく測定できません。エラー表示します」と知らせてきても当たり前です。
しかしただ「エラー」とだけ表示されるので、測っている患者も自分の測り方に問題があったのかと思い何度か繰り返してみる訳です。そのうち、たまたま心臓の規則性が少し回復したタイミングで血圧や脈拍が測定できて数値を表示をします。そんな時に表示された血圧値や脈拍数を信頼していいのかどうかは別の問題です。
原則的には、もしあなたが心房細動の患者なら家庭血圧計で表示された脈拍数はあまり信用しない方がよいと思います。血圧の値、これも参考程度にしておいた方がよいと思います。
続く・・・
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