狭心症になったら薬剤と日常生活改善を徹底して冠動脈の劣化を修復し心筋梗塞に行かせないようにします。
狭心症は初期の軽症~中程度であれば徹底した1)日常生活改善と2)薬剤内服で症状が完全に消えることがあります。患者は「狭心症が治った」と思うでしょう。
一方もし早期にステント治療やバイパス手術をしても以上の二つが不十分なら再発を繰り返して危険となるでしょう。
積極的な1)2)の治療で安定すれば検査で病気の重症度をチェックすることをお勧めします。その結果でステント挿入(カテーテル治療)は必ずしも必要とならないかも知れません。
症状が重症の場合はステント挿入や冠動脈バイパス手術等が直ちに必要となることが多いでしょう。
心配な時は医師に相談ください。
◆心臓病 症状から自己診断は、リスクあり危険
狭心症の治療
狭心症になった
不幸にして狭心症になってしまった人は残念です。しかしこれからはさらに病気が進行した心筋梗塞にならないよう、出来れば狭心症の原因の冠動脈が少しでも正常に戻るように、日常生活改善と薬剤の両輪で積極的に治療しましょう。
狭心症の本体は、心臓をぐるりと取り巻く心臓の栄養血管(冠動脈)が劣化老化しだ状態で起こる病気です。なぜ老化したかの原因は別のところでお話しするとして、この血管の劣化老化をどうやって直すことが出来るかが治療の本質です。
その治療の基本は、1)日常生活の改善、2)薬剤内服、3)血管の風船療法やステント埋め込み、4)血管のバイパス手術などです。 心臓病の症状と治療■09 日常生活の過ごし方
狭心症の治療はステントで拡張する方法や冠動脈バイパス手術があまりに有名ですから、多くの人はステントを入れたりバイパス手術でしか狭心症は治す方法がないと思い込んでおられるようです。
「狭心症を薬や生活改善で治せるのか?」の疑問や驚きが出てくるのでしょう。
軽症いなら生活改善と薬で治療
狭心症が薬でも治療可能な病気であることを知って驚く人がいます。限定的ですが初期の軽症~中程度までの狭心症の患者なら薬で治すことが可能なケースがあります。
しかし薬剤治療で症状が安定した時期になったら、心臓カテーテル検査等で病気の重症度を一度チェックしておいた方がよいと思います。
ステント挿入や冠動脈バイパス手術が必要になるかも知れませんが、必要ではなくなっているかも知れません。 ◆狭心症 カテーテル検査なしでも、診断治療できますか? ー診断的治療法ー
重症なら無理かも
当院の様な初期の軽症から中程度までの患者がほとんどの医療機関の経験から、狭心症は薬剤内服と日常生活の改善でかなり制御可能です。
一方当院では非常に少ない重症の狭心症の場合には様相は全く違います。ステント挿入やバイパス手術が必要な人が急増するでしょう。心臓病専門の医療機関、大学病院や大病院などではそんな重症患者さんが集中していると思います。
しかし国内の狭心症患者全体に占める重症患者の割合は相対的に低いと思います。多くは軽症から中等症だと思います。そのような患者の大部分は当院のような小さなクリニックで管理・治療されていると予想しています。
基本は減量、運動、薬
初期の軽症~中程度の狭心症の患者限定ですが、治療は薬で可能と話しました。では薬さえ飲んでいれば治るかと考えるのは間違っています。
薬は治療としての基本で必ず必要ですが、それと同等に場合によっては薬以上に重要なのが日常生活の改善です。 ◆心臓病 生活改善は、徹底的にアンチエイジング
狭心症患者の日常生活改善の基本は、
1)肥満の解消・体重減量:減食で標準体重に近づける
2)適度な運動:適度な運動を日常的に継続
3)危険因子:高血圧、高血糖・糖尿病、高尿酸、喫煙、ストレスを克服
などです。
減量:減食、断酒、節酒
体重減量の理想的な目標は、BMIを23以下まで下げることです(*BMI = 体重(Kg)/[身長(m)x身長(m)] )。その目標が達成困難なほどの肥満状態なら、せめて現在の体重から5~10Kg程度でも減量することです。 心臓病の症状と治療■10 体重管理と栄養管理
減量は口から入る食物を減らさなければ到達は困難でしょう。三度の食事と間食と飲酒、これらを減量することです。特に効果的なのは間食ゼロと断酒です。
三度の食事を変えなくても(減らさなくても)、間食と飲酒を完全に断てれば確実に減量が実現できると思います。
それでも十分な減量が実現できない場合には三度の食事の減量を始めて下さい。減量するのは主食(炭水化物)だけではありません。
糖質ダイエットと言って炭水化物の主食をゼロにし副食(おかず)を増やす方がいますが、これでは栄養のバランスが良くありません。主食と副食はバランスよく減量して、炭水化物、タンパク質、脂質の3栄養素を6:2:2の割合で摂るようにして下さい。
糖尿病でないならこのバランスが体全体にとって適切だと言われています。分かりやすく言えば、今現在の食事を主食、副食共に2~3割減量する事です。
糖尿病の場合なら、炭水化物、タンパク質、脂質の3栄養素を4:4:2の割合が良いのではないかと思います。
いろんな体重減量法が言われていますが、自分に合った長期間継続可能な方法で目標体重まで減量してください。
運動:早歩き、ジョッギング、筋肉トレーニング
運動でまず注意することは、現在狭心症発作が多発している人や運動で発作が誘発する人は控えることです。運動療法を何時から開始するか主治医と相談して下さい。
運動療法とは、運動することが危険である状況が去って十分な運動をしても問題がない状況になった人の話です。
現役で働いているなら、60分間程度の運動を毎日継続することは相当に困難です。せめて週に一~二回、休日だけ2~3時間の運動を継続して下さい。大切なのは日常生活の習慣となるまで運動を継続し続けることです。
生涯にわたり運動を続ける意志で取り組んで下さい。運動療法の内容やメニューは、何でも結構ですが自分が長期間にわたり続けられるものを選んでください。
どんなに良い運動と言われていても自分が長期に続けられない運動は良い選択とは言えません。全身にバランスよく適度な負担がかかる強度があることと、四肢の筋力も増強させるような筋トレ運動も同時に取り入れると良いと思います。
ジョッギングか早歩きで心肺機能を含めた全身のバランス良い運動をします。男性なら時速5~6Km/Hr、女性なら時速3~4Km/Hr程度のスピードで30~60分間の早歩きであれば適度な負荷でしょう。
可能ならその時の最高脈拍数は (210 – 年齢)x0.75 で計算した値を超えない程度でしばらく続けることです(たとえば50歳の運動時の最高脈拍数は一分間に120です、(210 – 50)x0.75=120)。
その運動に慣れてきたら徐々に最高脈拍数の限度をあげればよいでしょう(0.75 → 0.78 → 0.80)。適度な運動量はその人の心臓病の状態でかなり差がありますから主治医の指導を受けて下さい。 心臓病の症状と治療■11 日常生活での運動
筋トレ運動は部位によって方法が違いますから、生活に大きな影響がある腰から下の筋トイレが最も大切です。その他にも適切な機械や道具を使って、上肢、腹筋、背筋、胸筋等も同時に鍛えて下さい。これらの機械はジムに行けば揃っているでしょう。参考にして下さい。
高血圧、喫煙、高血糖、高尿酸、ストレス
狭心症の日常生活で大切なのは、肥満の解消(痩せること)と適度な運動の継続ですが、狭心症を徹底して治療するには更に、血圧を正常にする(最も重要です)、禁煙、高血糖や高尿酸を正常化する、仕事のストレスを減らす、生活を規則正しくする、睡眠を十分とるなど、薬の十分な内服や日常生活の様々な節制が必要になります。
検査の目標値
不良な検査値を徹底的に改善する事が狭心症の克服に最も有効です。そのための各検査データの目標値を以前に詳しく話しました。 ◆狭心症・心筋梗塞 治すため、検査データの目標値
まとめ
十分な種類と量の薬内服を続けながら、以上の様な日常生活改善が実現できれば「狭心症は薬で治る」と考えてもよいと思います。当クリニックではそのような生活を実現し狭心症を克服した患者が多数おられます。
反対にステント治療やバイパス手術をしても、以上の二つが十分でなければ再発を繰り返し危険になるでしょう。
「狭心症を薬で治す」ためには、生活改善の努力が欠かせないことを強く自覚し本気で取り組んで下さい。きっと狭心症は克服できるでしょう。希望を持って頑張って下さい。
将来は分かりませんが、現在はここに書いたことを実行すれば傷んだ心臓を守れるでしょう。狭心症や心筋梗塞を克服する王道だと思います。丈夫な心臓は皆さんの天寿まで軽々と働き続けるでしょう。
そして・・、狭心症なら?
狭心症・心筋梗塞の五部作
胸痛を専門医が診断する手順:
◆062 胸が痛いのは心臓病? ーその診断方法ー
狭心症を早期発見する:
◆290 狭心症・心筋梗塞 超早期の発見は、静かな症状に注目!
発作から病気の重さを予想する:
◆349 狭心症・心筋梗塞 発作からわかる、緊急性と重症度
狭心症になり初めて診察:
◆130 狭心症の治療開始 初めての診察の風景
狭心症を、薬と生活で治す:
◆257 狭心症・心筋梗塞 食事・運動・薬でなおす
心臓病の究極予防:
◆369 心臓を健康にする ー心臓病・心不全の超予防ー