期外収縮:最多の不整脈
今日は不整脈の中で最もありふれている、そしてあまり危険ではないので私達はこれを「心臓のシャックリ」と呼んでいる期外収縮についてお話ししてみます。
■一例
最近に実例をご紹介します。30歳代女性です。
仕事中はならないのですが、自宅でゆっくりと休んでいる時、何の前触れもなく胸に動悸を感じます。突然にドキドキしてきて30分ほど続きますが、いつの間にか自然に治まってしまいます。眠っている時はなりません。仕事中は集中しているせいかなったことはありません。最近2か月間ほどは週に数回おこります。
以前から喘息のある人ですが、自宅で休んでいる時に何となく軽い喘息発作の前兆の様な息苦しさが出てくることがありました。その症状を自覚するとまた喘息発作になるかも知れない不安感が襲います。その不安感に襲われた時に動悸が起こってくることが分かりました。
診察と検査の組み合わせての診断では、起こった不整脈は良性の期外収縮で心配するようなものではない。喘息発作が起こるかも知れない不安感と恐怖感に誘発されて期外収縮が出てきた。従ってこの動悸には特別な治療は必要なくこのまま様子を見ていてもよいとの結論でした。
「今後は安心し不安が消えて、喘息発作のような症状になっても動悸は起こらなくなるでしょう。もしそれでも動悸が起こったら薬を処方しますからまた来てください」と付け加えました。患者はホッとしたような表情で安心して帰りました。その後その患者は相談には来ていません。
症状の特徴
単発で一回完結
期外収縮という不整脈は、よくある不整脈ですが危険性は少なく比較的安心してよい心臓の病気です。ただし危険が潜んでいるタイプも稀にありますからあまり甘く見ないで下さい。
症状の表現は様々ですが、共通するのは 「単発の一回完結」が特徴です。それが時間をおいて(数秒~数時間の間隔)何度も繰り返すことがよくあります。
・バコン
・ドキン、ドキッ
・バクバク
・ハット
・ドキドキ
・心臓がウッとつまずいた
・ クッと詰まる
・ ズキンと痛い
・ コロンと回る
・一瞬、胸が痛い
・ 胸騒ぎ
・ 空回り
・ 胸が締めつけられる
・ 胸が固まる
・脈が一回、休んだ
・ 飛んだ
・ 抜けた
・胸の中で、空気が破裂する
などなどで表現は様々で多彩で す。一人一人みんな違います。
この不整脈は検査でいろいろ調べても心臓自体にあまり大きな問題がないケースが多いのです。そんな場合には患者に「この症状は心臓のシャックリの様なもので安心して下さい」と話します。
誘因と進行
起こるきっかけ=誘因
期外収縮が起きるきっかけとして最も多いのが「ストレス」です。ストレスの原因として、仕事上の問題、生活の大きな変化、家庭でのトラブル、人間関係、経済的問題、病気の不安、受験、男女関係などさまざまです。しかしストレス以外にも以下の様に多彩な誘因もあるように思います。
・睡眠不足
・過労
・運動開始直後、運動中、運動終了後
・きつい肉体的仕事をして疲れた
・夜ふかしをした
・ストレスや不安が解決した後
・緊張したり、興奮している時、怒った時
・イライラしている時
・タバコを吸っている時
・酒を飲んだ後
・コーヒー等の嗜好品を飲んだ後
・市販のドリンク剤(カフェイン入り)を飲んだ後
・健康食品や漢方薬のサプリメントの副作用
・治療で服用している医薬品の副作用
・血圧が上がった影響
・自分の心臓病が悪化した
・安静中、心穏やかな時、睡眠中
症状が進行、発展する経過
多くの誘因の可能性がありますが、実際に患者を診察して多いのは何と言ってもストレスが一番です。
期外収縮はストレスが長く続いているか非常に強い時に起こり始めます 。一度期外収縮が出て、それを不快感や嫌な感じと思うと、その嫌な不快な感覚が印象として強く残ります。期外収縮がまた起きるのではないか、起きたら嫌だなー、気分悪いなー、なんて気持ちが深く心中に潜航します。
こうなってしまうと別の機会に一度でも期外収縮が起こると、この嫌な不快な感覚が自分にとって大きなストレスになります。そのため期外収縮が再度起こると、その不安の感情に誘発され多発するようになります。期外収縮への不安を強く感じれば感じるほど更に期外収縮は多発し益々不快さの程度が高まります。
期外収縮への不安感が誘因になる
最初に出たときの期外収縮の誘因は確かに仕事などのストレスだったの ですが、それ以後に多く出るようになった期外収縮は、実は期外収縮そのものに対する不快感や恐怖感や不安感などが発生の誘因になってしまうのです。
対策
対策は期外収縮に不安や恐怖感を感じないようにすることです。「また出たけど心臓のシャックリの様なものだから心配しなくていい。気にしない、気にし ない」と無視することです。
そのうちに出なくなってしまい、期外収縮の事は忘れてしまうでしょう。どうしても気にしてしまう方には抗不安薬や不整脈を抑え込む薬を処方する場合もあります。
危険な期外収縮の場合
期外収縮が安全ではない場合
心エコー検査や24時間心電図(ホルター心電図)検査でその期外収縮が無害で危険性がないと診断されていない人では簡単ではありません。期外収縮は全員が心臓のシャックリで病院に行く必要はないと誤解しないで下さい。
無害だと決まってないなら、先ず心臓専門医に相談して本当に無害な不整脈であることを確かめください。元々心臓病がある人なら、先ず医師によく相談してください。