20歳から増えた体重は脂肪だけ?
これまでに心不全についていろいろお話ししましたが、水分の過量摂取が極めて危険なことは繰り返し強調しました。「心不全にとって水は毒」とお話しした喩えは、そのままで覚えておけばいずれきっと役に立つ時が来ると思います。
まず最初に体重について考えてみましょう。自分が20歳の頃の体重を思い出してください。その当時既に太目であった人は別にして、その体重は身体に無駄なものがない生物として健全なよい体重であり、生涯を通しての基本体重であると考えて下さい。
年齢が上がった今の体重はその時よりかなり多くなっていませんか?。たとえば20歳より15キロほど多くなったとしましょう。その増加は身体の一体何が増えたのでしょうか。
筋肉?、骨?、脳?、内臓?でしょうか。運動で特別に筋力を鍛え続けた人以外なら、そうではありません。年齢が上がるに従って筋肉、骨、脳は反対にゆっくりと軽くなっていくのが普通です。
普通の生活をしてきた35歳以上なら、何か特別な事情以外に筋肉、骨、脳が増えることはありません。何が増えて体重増になったのでしょうか。脂肪でしょう。過食と運動不足の生活を長く続けた結果、体に脂肪をため込んで体重を増やしたのが現実だと思います。
体内に蓄えられた非常時用エネルギーの脂肪はこんな多く必要ではありません。もっと少なくて十分ですし、反対に貯めこんだ脂肪が多すぎると様々な病気を誘発することも分かり始めてきました。
余分な脂肪を全部削ぎ取ってもいいのですが、そんな簡単に脂肪は取り除けません。そのために辛く苦しい節食ダイエットとかなりの運動が必要になります。
心不全予備軍の体重増加は「水」
普通なら体重増加は脂肪の増加が原因です。一方、心臓病で心不全予備軍の体重増加は脂肪の増加ではありません。ほとんどは体内の水分の増加が原因です。
35歳以上で体重の増加が目立つようになったら一般的にそれは嬉しくないサインと考えて下さい。体内脂肪の増加か水分増加かいずれかです。どちらも不健康な現象です。
心臓病があり心不全予備軍なら体重増加の原因のほとんどは水の過量摂取だと思います。そして体内の水の過剰がいずれ死ぬほど苦しい心不全発作に繋がっていきます。
心不全予備軍の患者は心不全発症を何としても防がねばなりませんが、予防する管理指標で一番簡単で分かりやすいのは体重です。毎日秤に乗って体重を観察し記録し続けて下さい。自分で心不全発症の警告サインを常にチェックするのです。
基準体重
どの程度体重が増えれば心不全発作発症の危険になるかを知るには、まず自分の基準となる体重を知っておかねばなりません。
その体重を仮に「基準体重」と呼びましょう。これについては既に詳しくお話ししましたが、簡単に言いますと体に余分で過剰な水分がない時の体重だと思って下さい。
脂肪のあるなしと違います。最適な体内水分量の時の体重です。この体重を「基準体重」として自分の体重の基本にします。この体重は年齢が上がっても長く変わりません。その体重は主治医とよく相談し決めて下さい。自分だけで判断してはいけません。