心臓神経症とは
心臓神経症とは「ドキドキする」「心臓が痛い」「息苦しい」などの心臓病の症状が繰り返し起きて患者さんは辛く苦しんでいますが、心臓の検査をどれだけしても異常は発見されません。治療を全くしなかったり治療してもあまり効果がないことが多く長い間この症状に苦しむ病気です。
女性に多いように思います。この病気の患者さんは意外に多く決して珍しい病気ではありません。
心臓神経症は「こころ」の病気
この病気は症状は心臓の様なのですが、病態の本質は心臓ではなく「こころ」の病気と理解されます。心臓には何も特別な問題はないのですが、不安や悩みで引き起こされた自律神経調節異常が誘発していると考えられます。
印象では、症状の原因となる不安や悩みで多いは「自分の病気」そのものです。自分の持っている或る病気を気にし始めてから、その病気が不安や恐怖でたまらなく、無意識の中で心配している状況にあるのです。そしてその「ドキドキする」症状自体が不安や恐怖の原因だったりもします。
自分の病気に対する不安や恐怖感が症状を誘発するのです。
治り難い場合が多い
「何でもない、気のせい、神経質」と言われる
診察した医師からは「気のせいです」「気にし過ぎです」「神経質だからなる病気」「自律神経失調症だろう」「何でもないから気にしないように」「忘れなさい」等と言われているでしょう。たまにこの病名を神経循環無力症といいます。昔は器官神経症、努力症候群、兵士心臓などと言われたこともあるようです。
うまく治らない
もしこの様に診断されても治ればそれでよいのですが、まったく医師から相手にしてもらえず、治療もされない場合、治療があまり上手くいかない場合には、患者は医療機関を転々としてしまいます。
最悪の場合には医療不信や医師不信になってしまう事もあります。こうなりますと自然に治るまで、長い年月この症状に悩まされる事になるでしょう。
心療内科がお勧め?
患者にとっては、治り難くい厄介な「こころ」の病気ですが、信頼できる医師に出会うと意外に簡単に治ってしまうことがあります。私もそんな医師でありたいと思いますがなかなか簡単にはなれません。
一般的にこの病気の患者さんは心臓専門医より、むしろ心療内科医の方が相性が良いかもしれません。この病気だと診断されていろんな心臓専門医にかかっても治らないなら、一度心療内科医を探して診察を受けてみるのも良いかも知れません。
成否は医師と患者の相性
私も時々この病気の患者に出会うことがあります。私と患者の信頼関係が築けるかどうかがこの病気の治療成否のポイントではないかと感じます。要は医師と患者との相性です。
相性とは、医師と患者の人間性の良い組み合わせですから簡単には説明できませんが、この医師ー患者関係の相性が合うと本当に簡単に治る場合があります。一方相性が合わないと治療の成功はなかなか難しいかも知れません。
患者が医師と相性が合わないなら医師を変えることを勧めます。相性の合う心療内科医を探す方が良いかも知れません。
隠れた心臓病の場合
実は本物の心臓病だった!
「何でもない」や「心臓神経症」と診断された人で、実は本物の心臓病であったケースが少数ですが混じっていることがあります。
医師によっては、微小血管狭心症や不整脈の場合は、この心臓病を見逃して「何でもない」や「心臓神経症」と片づけてしまう場合があります。本来あってはならないのですが現実にはそんなケースもないわけではありません。
このような人は不幸にして心臓専門医にも心療内科医にも治してもらえず、長年症状に苦しむことになります。こんなケースを何人か診察したことがあります。
一人は心臓専門病院を含む数ゕ所の病院すべてで「何でもない、気のせい、異常はない」と言われ一度も治療してもらえず15年間も無治療でした。長く苦しんでいながらもこの病気を諦めていました。ある時私のコラムを見て遠方から当院を訪ねて来られました。私は軽い不整脈と予想しました。その薬剤の治療で病気はすっかり治り原因も明らかになり患者から大変に喜ばれました。