動悸と疲労感
休日の夜間救急当番での事です。当市の休日急患診療所に待機中で21時頃です。看護師から「動悸がして息苦しい患者さんです」の連絡がありました。
診察室のドアーを開けますと、外の待合室の椅子に腰かけていかにも具合が悪そうな中年女性がいました。40歳代の女性で夫と高校生位の娘に付き添われて診察に来たようです。動くのも大変そうでやっと歩いて診察室に入り椅子に腰かけました。
7日前も同じで貧血と言われた
話を聞きますと、以前からこんな症状はあったが7日前にも同じように強い症状があって、救急車で近くの大きな病院に運ばれて、そこでレントゲン写真、心電図、CT検査、血液と尿検査などのいろんな検査をして貧血があると言われたそうです。
薬が出ている様ですが、その薬の名前は分からないそうで持参もしていません。今日の夕方から再び動悸と疲労感が強くこの救急診療所に来たのだそうです。娘と夫も不安そうに横に立っています。本人はだるいのでしょう、顔色は青白く、表情は疲労感が強く、動作は非常に緩慢です。
診察で強い貧血のみ
動悸とは、心臓が速く動いている、乱れている、強く動いているの3種類ありますが、そのどれかと質問すると、強く動いていると答えました。診察では実際に脈は速くなく乱れもありませんでしたから、患者の言うとおり、心臓は強く拍動しているのでしょう。
貧血とは血液が薄いため心臓はより多くの血液量を送り出さなければならないので一回の拍出量を増やすため強く拍動します。
診察で明らかなのは強い貧血の所見でした。ここ救急診療所では検査がほとんどできませんので、この診察所見と前の大きな病院での情報などを総合して、「強い貧血がこの症状の原因だろう、貧血の程度はかなり強い」と話しました。
7日前の大きな病院の検査では貧血はどんな程度だったかと確認しましたら、分からないそうでした。ここで貧血検査は出来ないので貧血の程度がはっきりしませんでしたが、この所見と症状ならかなりの貧血だろうと話しました。
貧血の原因は胃腸や婦人科的な出血が多い
この患者の場合、よくある病気なら貧血の原因は二つ考えられます。胃や腸からの出血か婦人科的な病気(子宮筋腫など)による出血です。この救急診療所は一次救急担当なので検査設備がなく検査が出来ませんから、明日にも前の大きな病院で引き続き詳しく調べた方が良いと説明しました。実はその大きな病院でも検査を勧められて近いうちに胃と腸の検査を予約してあるそうです。
便の色が正常なのと症状も診察も胃腸に問題がなくて、月経の出血量が多めであることから婦人科的な原因による慢性貧血の可能性が高いと予想されました。
この激しい動悸と疲労感はまさにその強い貧血が原因であり、緊急に手を打つとすれば輸血ですが、それは現状では多分必要ないでしょうしその大きな病院でも勧められなかったでしょうと説明すると、そうだったと答えました。
今晩は家に帰って静かに体を休め明日早々に大きな病院に行って婦人科で診察を受けなさい。もしも今晩のうちにさらに具合が悪くなるようなら救急車を呼んでその大きな病院に行きなさいと説明し帰宅しました。
動悸でも心臓病とは限らない
程度の強い貧血がある場合、このように少しの動きでも強い動悸と疲労がでることはあります。
貧血そのものを治療すると同時に貧血の原因を確定しそれも治療しなければ根本的な治療になりません。この女性は恐らく大きな病院で詳しい検査を受け貧血の原因に対しても適切な治療が開始されたと思います。
「動悸と疲労」を訴える病気の原因は心臓病以外にもたくさんあります。その中で貧血は良くある重要な原因の一つです。
続く・・・
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