発作が繰り返すなら、ある程度時間が経っていれば繰り返し使って下さい。しかし一日に2度、3度と発作がある、一日に一回だけでも毎日のように発作が続くなら、心臓は危険な状態ですから必ず病院を受診しましょう。 ◆狭心症・心筋梗塞 発作からわかる、緊急性と重症度
心配な時は医師に相談ください。
◆心臓病 症状から自己診断は、リスクあり危険
硝酸薬の種類
硝酸剤(しょうさんざい)には、ニトログリセリン錠、ニトロペン錠、ニトロール錠、ニトロールスプレー、ミオコールスプレー等がありますが、どれも成分的にはほぼ同じです。当院ではニトロペンとニトロールだけを使っています。
狭心症や心不全の発作に
ニトロペン錠に代表される硝酸薬は主に狭心症の発作の時に使われますが、全身の動脈・静脈ともに拡張しますので心臓の負担が軽くなりますから心不全の呼吸困難発作の時にも使われます(心臓喘息の時)。
舌下投与
ニトロペンは舌の下で溶かす方法(舌下投与)で効果を発揮する薬ですから、使う時は水で飲み込まず薬をそのまま舌の下に入れて下さい。
その時舌が少しピリピリすることもありますが問題ありません。しばらくして頭が痛くなったり、体がほてったり、軽い不快感が出ることもありますが心配ありません。すぐに治まります。
血圧の低下でふらつく
血圧が予想以上に下がることが稀に起こります。この薬を生れて初めて使う時には特に注意して下さい。
初めてなら、血圧の低下でめまい、ふらつき、倒れたり、一瞬だけ意識を失ったりすることを想定して、そうなっても安全な場所と姿勢で使ってください。
一度目に何もなければ二度目からは、そのようなことはまず起こりませんが、時に脱水など複数の条件が加われば起こる事もあります。いつも低血圧になるかも知れない気持ちでニトロは使うのがよいでしょう。特に普段から血圧が高くない人は注意が必要です。
駅の階段で立ったまま舌下し、ふらついて階段から転げ落ちて怪我をした人がいたと聞いたことがあります。
効果判定
舌下すると薬はすぐに心臓に到着し効果が表れます。狭心症の発作であれば胸の症状がスーッと消えていきます。患者は「あーっ、消えた。効いた―、良かった―」と思うでしょう。この安堵感は狭心症発作を経験した人にしか分かりません。
もし狭心症発作でないなら、このようにきれいに効くことはありません。ニトロが効かなければ、基本的にはそれは狭心症発作ではないと考えても良いくらいです。
このように薬の効き方で病気を診断する方法を治療的な診断と言います。狭心症は外来診察では診断確定が難しいので、この診断法はよく使われます。それほどニトロは狭心症の特効薬なのです。
しかし狭心症であってもニトロの効きが悪い例もありますから、これだけで診断を決めつけることはできません。
もしニトロを舌下しても症状が良くならず体調不良なら、急いで近くの大きな病院を受診します。狭心症ではない重大な心臓病の可能性があります。
早めに使う。発作の多発は特に
この薬は発作があればその都度使って下さい。ただし使用する間隔を数時間は空けて下さい。詳しくはその時の主治医の指示に従って下さい。
朝に発作があり一錠使い、昼にも一錠、深夜にも発作で一錠ずつと発作があればその都度使ってください。しかし一日に2度、3度と発作がある、発作が一日に一回であっても頻発するようなら、たとえニトロが効いても病院を受診をして下さい。
心臓が非常に不安定な状態と思われます。必ずその時の主治医に相談し指示に従って下さい。 ◆狭心症・心筋梗塞 発作からわかる、緊急性と重症度
慣れれば、発作が始まるといつもの心臓発作であるとすぐに分かるでしょう。症状が強くなるまで待たず、始まったらすぐにニトロを使って早く発作を消してしまうことです。早く使う方が効きが良いです。
いつでも、どこでも、使うように
ニトロはどこで使用するか分かりませんので、いつでも使えるよう身に着けておくとよいでしょう。お守り袋に入れて首から下げる人や財布に入れている人など、それぞれ工夫しています。
発作は深夜寝ている時、ゴルフのプレイ中、散歩などで外を運動中、登山中、車を運転中などにも起こります。そんな時でもニトロはすぐに使えるよう工夫しておきます。
使用期限
ニトロペンの包装の銀紙に使用期限が印字されていますが、保管・保存状態によってはそこまで効果が持たない場合もあります。半年ごとに全部を新しいニトロと入れ替えておけば確実です。いざと言う時に効かなくなっていると困ります。
予防のために、事前の投与も
発作時だけでなく、発作が起こりそうだと予測される時にも、事前にニトロを舌下しておくのも発作予防の賢い方法です。
たとえば車を運転すると発作が起こる可能性が高い場合は運転を始める前に事前に一錠を舌下しておくことです。運転中の発作を避けることができるでしょう。
ニトロールの舌下でも可
当院では発作時のため*頓服としてニトロペンを処方していますが、毎日繰り返して朝昼晩と内服する患者にはニトロールを処方しています。
このニトロールを発作時にも舌下投与して問題ありません。もしニトロペンが手元になくなっていたらニトロールを舌下投与して下さい。
口の中に噴霧するスプレータイプのニトロもありますが当院では使っていません。
*注:頓服 ◆「とんぷく=頓服」とは、どんな薬ですか?
勃起不全の薬は、絶対に使ってはいけない!
勃起不全治療薬のクエン酸シルデナフィル(バイアグラ)、塩酸バルデナフィル水和物(レビトラ)等はニトロとは絶対に併用しないで下さい。ニトロと重大な相互作用があり危険です。
そして・・、狭心症なら?
狭心症・心筋梗塞の五部作
胸痛を専門医が診断する手順:
◆062 胸が痛いのは心臓病? ーその診断方法ー
狭心症を早期発見する:
◆290 狭心症・心筋梗塞 超早期の発見は、静かな症状に注目!
発作から病気の重さを予想する:
◆349 狭心症・心筋梗塞 発作からわかる、緊急性と重症度
狭心症になり初めて診察:
◆130 狭心症の治療開始 初めての診察の風景
狭心症を、薬と生活で治す:
◆257 狭心症・心筋梗塞 食事・運動・薬でなおす
心臓病の究極予防:
◆369 心臓を健康にする ー心臓病・心不全の超予防ー