心臓病患者の生活改善の目標について簡潔にお話しします。同じようなテーマでもう一つ別の方向からの解説は、◆067 心臓病を克服し、健康を実現する日常生活、でもお話ししました。こことセットでお読みください。個別的な話題でもう少し詳しい内容は、若々しい健康づくり(◆30~◆39)でお話ししました。参考になると思います。
心臓病・心不全の背景に潜む、根源的な問題
心臓病や心不全で日常生活の注意点はという話題では、減塩食、水分制限、規則正しい生活、過食を避ける、激しい運動を避ける、コレステロールを減らす、禁煙・禁酒などのお話しが並びます。 確かにこれらはどれも大切なことばかりですが、本当に大切な根本はその心臓病が起きた背景に潜むバランスの崩れた不健康な体にあります。
ほとんどの心臓病患者さんは、心臓の病気だけに注目しこの全身的な病的アンバランスの問題に気付きません。心臓病を治すのであれば全身から健全な体に回復させていくことが大切なことです。
健全なよい体とは?
■主要臓器は全て健康、検査データは20歳!
全身を健全な良い体に改造する具体的な目標です。以下の6つの条件です。完全な実現は不可能ですが究極の目標として目指してください。
1)日本人として身長と体重のよいバランス(標準は、BMI 18~23)
2)老化を加速させる重要因子すべて正常(血圧、脈拍、コレステロール、血糖値、尿酸)
3)主要臓器はすべて正常(脳、心臓、肝臓、腎臓、肺、胃腸、膵臓など)
4)敏捷な動作ができ、筋肉と骨格系が秩序よく機能している(運動機能)
5)仕事、家庭、趣味などで精神活動に適度な刺激がある(精神活動が健全)
6)十分な睡眠と休養がとれ、規則正しい生活を維持している
*参考情報:BMI = 体重(Kg)/[身長(m)x身長(m)]
肉体的状態は20歳前後が一つの目標と考えれば分かり易いと思います。20歳のころは肉体的成長の最終段階に入っていますが、まだ老化の影響がなく健全な最高の肉体状態にあるでしょう。→◆031 医学データは、健康な20歳が目標
■生活改善し、自分を無駄な実験台にしない!
心臓病がある方は、心臓以外にもどこかが大きく崩れているでしょう。その問題点をよく整理して全てを正常化するような方向で生活改善の計画を立ててください。
計画には生活改善だけでなく内服薬も含まれます。 データ正常化のためには内服薬を十分量飲むことを勧めます。優れた医薬品がたくさんそろっていますから、医薬品のパワーを借りて効率よくデータ正常化に進んで下さい。特に高血圧、糖尿病、コレステロールなどの薬を飲むのを潔しとせず、飲まずに自力で頑張りたいと主張される方が時々います。それでは治療が遠回りになって貴重な時間をロスします。
人生の残り時間はそれほどありません。自分自身を無駄な臨床試験の実験台にしないことです。つまり薬を飲まず自己流で数年間やって成果が出ないと分かってから、ようやく内服薬でもう一度やり直しますと、その数年間が無駄になるという意味です。
私たちはこの無駄を分かっていますから、患者さんに内服薬を強くお勧めするのですが・・・。
◆116 糖尿病やコレステロール 薬を飲まずに頑張って10年を失った人
薬の副作用(皆さんが心配するほどありません)を恐れず、優れた内服薬の恩恵を受けてください。そうすれば予想以上に短期間で目標が達成できるでしょう。
◆236 健康づくりの両輪:現役時代はダイエット優先、定年後は運動優先に
■第一は、痩せる
生活改善で体の健康を達成する第一番のポイントは肥満を解消しスリムな体型に変身することです。最重要の目標です。
・日本人は、痩せて健康な民族
太古の昔、日本民族は痩せていて生存の危機をかいくぐり生きのびてきたようです。食料が少なくなっても痩せたまま省エネで生きていける遺伝子を持った民族のようです。→◆032 痩せるが一番! 日本人は痩せて健康な民族?
反対に過食で肥満には弱く、太るとすぐ病気になるようです。欧米人のすごい肥満でもあまり病気にならない遺伝的体質とは違います。日本人は痩せていないと健康ではいられない遺伝子を持つ人種のようです。
・減量は減食中心で
体重減量の王道は減食です。食べる量(カロリー)を減らしてください。毎日の食べる量を洗い出しチェックしてください。口に入るものを徹底して目標まで減らすことです。一日の摂取カロリを制限してそれ以上食べないで下さい。
◆170 何を食べたら、痩せられますか?
◆036 安上がりの健康法 減食ダイエットで減量を
◆076 健全な痩せ方 脂肪を減らし、筋肉・骨は増強を
■第二は、運動
運動で減量を期待しても、目標値まで実現できる人は珍しいと思います。少ない運動量では減量効果が不十分ですから、ほとんどの方は運動だけでの減量は無理でしょう。
しかし別の意味で運動は大変重要です。痩せるためとは考えず健康のために是非運動は実行して下さい。
運動は、筋・骨格系や自律神経系を適度に刺激し活性化します。また心肺機能も適度に刺激します。全身の血液循環も改善されます。ホルモン環境や自律神経系統を調整し、細胞の代謝を活発にし、全身のバランスを良い方向に改善していきます。
運動のこの効果は何ものにも代えられなく、全身を健康な肉体に改造するうえで必須の治療です。→◆037 運動療法は、運動機能アップを目標に
まとめ
医師が主導する表の主役の内服薬中心の治療と違って、患者さん自らが主役となって積極的に介入して実現する第二の治療が生活改善です。バランスの崩れた体の回復と正常化は心臓病治療の影の主役です。或る意味では、この生活改善こそが真の主役とも言えます。
生活改善という治療で努力の差が明らかに現れます。努力した方はその成果を獲得できるでしょう。しかし努力しない人は確実に得られないでしょう。多くの患者さんを拝見した私たちの一致した見解です。
内服薬治療と生活改善治療の目標は、全身の血管の動脈硬化を修復し体全体を若返らせることです。「アンチエイジングanti-aging=抗老化」です。全身の老化エイジングを少しでも克服し健全な体と健康な心臓になろうとの提案です。