運動で激しく体を鍛えたスポーツマンを除き健康な心臓は普通サイズです。病気の心臓が大きくなった場合、心臓が傷んでいることを示します。今回は大きな心臓の3つのケースについてお話しします。
(1)健康な人に大きな心臓、(2)心臓に病気があり大きくなった、(3)高血圧や心臓病の薬で大きくなった
心臓のサイズは病気の評価に重要な情報です。しかし胸部レントゲン写真だけで正確なサイズの評価は困難です。複数の検査を組み合わせて総合的に評価します。
胸部レントゲン写真だけでは心臓病を見逃したり心臓病の重さの判断を間違ったりしますので大きい心臓なら一度は専門医に相談するとよいでしょう。
心配な時は医師に相談ください。
→◆222 心臓病 症状から自己診断は、リスクあり危険
大きな心臓とは、心臓が病気に?
健康な心臓は、標準サイズ
長い期間、激しい運動で体を鍛えたスポーツマンを除き、普通の日常生活を送ってきた健康な人の心臓はほとんどが標準サイズです。体を激しく鍛えた人の心臓は鍛えられて大きくなっています。
しかしこの大きい心臓は必ずしも病気とはいえません。運動によって鍛えられた結果です。鍛えすぎて病的になっている事もあるかも知れませんが。
一方病気があって心臓が大きくなっているなら心臓が弱っていることを表します。この場合、心臓が大きければ大きいほど心臓の弱った程度は高度と考えてほぼよいでしょう。
心臓は病気で筋肉が傷んで弱ってきます。その傷みの程度が強くなるに比例して心臓のサイズが大きくなっていくのです。
大きな心臓とは、病気の心臓?
普通なら「大きい心臓」とはほぼ「病気で弱った心臓」のことです。
(1)健康な人で、大きな心臓は?
長年健康に生活して心臓に病気があるとは考えたこともなく言われたこともないのに、ある時検査で心臓が大きいと言われたら注意が必要です。この際詳しく心臓を検査しておく必要があります。詳しい検査の結果、
(A)問題なし
レントゲン写真などでは心臓は確かに大きく見えるが異常なく心配ない
(B)経過観察
現在目立った異常はないが潜んでいる病気が将来表れる可能性があるので定期的な検査が必要
(C)心臓病あり
本人が気付かなかっただけですでに心臓に病気があり心臓が大きくなっていた。
以上の3つの可能性があります。
(2)心臓病があって、サイズが大きくなった
既に心臓病があって治療中の人では心臓のサイズを定期的に検査していると思います。検査のたびに心臓のサイズが徐々に大きくなるようでは心臓病が進行して次第に弱っていると想定しても大きな間違いではないでしょう。
反対に徐々にサイズが小さくなっているなら心臓の状態は回復しているのでしょう。適切な治療のお蔭で心臓の機能が回復してサイズが小さくなることはよくあることです。また心臓に大きな負担がかかった場合などは心臓のサイズが急に大きくなって心不全に発展することもあります。
(3)高血圧、心臓病の薬で大きくなる
(A)高血圧
高血圧がある場合は、高い血圧による負担のために心臓のサイズが大きくなります。大きくなった心臓は血圧を下げれば小さくなりますが、あまり長く高い血圧のままで放置すれば血圧を下げても小さくなりません。
高い血圧が心臓を強く傷める事を知っておいて下さい。
(B)薬
心臓病や高血圧の治療薬によって心臓が大きくなることがあります。本来は高血圧や心臓を治療する薬なのですがある薬では心臓のサイズが一時的に大きくなることがあります。
この場合は心臓の状態が悪くなったわけではありませんのであわてて薬を中止しなくても大丈夫です。
薬を中止すればほとんどの場合しばらくでサイズは元に戻ります。一時的な現象です。中止せずその治療を続ければ数年単位の長い目で見るとゆっくりとサイズが小さくなっていくことがあります。
病気の状態によっては薬を中止しなければならない時もありますので主治医と相談してください。
心臓サイズを正しく知る
サイズを測定する検査法
心臓のサイズはいろんな検査で測定できますが、昔は指で胸を叩いて心臓の大きさを知る打診法といわれる方法でしたが現代では不正確なのでほとんど使われません。
現代の代表的な検査としては胸部レントゲン写真と心臓超音波検査(心エコー検査)があります。それ以外にも大がかりな検査法はありますが、大きな病院での面倒な検査になりますからサイズを見るだけなら普通は使われません。
胸部レントゲン写真と心エコー検査はどちらも日常普通に良く使われる検査法です。心臓の全体的な形とサイズを見るには胸部レントゲン写真が優れています。
心臓の中のどこの部分が悪いのか、大きくなったのはどこかを詳細にみるなら心エコー検査が優れています。どちらもそれぞれ特徴がありますから両方の検査情報を組み合わせて心臓の形やサイズを総合評価していくのが普通です。
胸部レントゲン写真・心エコー検査 その長短
胸部レントゲン写真では、心臓に異常はないのに心臓サイズが大きく見えてしまうことがよくあるので注意が必要です。胸部レントゲン写真で心臓が大きく見えても心臓は実質的に大きくなっていない場合が少なくありません。問題ない心臓を病気があると間違えてしまいます。
写真で大きくても実際は大きくない
一例をお話しします。お腹の脂肪が多すぎるため(肥満・メタボでお腹がつき出ている人)、胸の中にある心臓が下から上に押し上げられ、胸部レントゲン写真では大きくなって見える場合があります。
風船にたとえますと、丸い風船を上下に押さえてつぶすと、その風船は横に広がります。風船の横のサイズは前より大きくなりますが、実際の風船がただ変形しただけで機能的には何も問題ないような場合です。
このように胸部レントゲン写真で心臓の形や大きさを評価する場合、大きく見えても病気のために大きいのかどうかは慎重な検討が必要です。心臓の形やサイズは、検査条件や心臓周囲からの影響を非常に受けやすいのです。
それなら最初から心エコー検査だけで検査すればよいかと言いますと、必ずしもそうではありません。心エコー検査は心臓のパーツの良し悪しはよくわかるのですが心臓全体の形やサイズを見るには向いてません。
患者さんによっては、検査してもほとんど中が見えなくて評価が出来ない人もたまにいます。また心エコー検査は簡単とはいっても、外来で繰り返し検査するには費用が少し割高ですし、医師にも患者さんにも検査そのものが少し面倒で簡単ではありません。優れた検査法ではありますが万能ではありません。