心不全とは心臓病のある人に起こる病気です。
心不全の始まりは軽い運動や階段の昇りで息切れがします。重症になれば夜中に息苦しい、座った姿勢でゼーゼーヒューヒュー、仰向けの姿勢で苦しくて寝られない、窓を開けて空気を一杯吸いたい等で死ぬ思いです。
心不全の予防は運動は適度にとどめ、水分や塩分を厳しく制限し、過食は控え、風邪などの発熱の病気や重い病気にならない、体重を減らしスリムな体型を維持する等です。とりわけ水分と塩分の制限が重要です。
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心不全の予防と水分制限
心不全の始まりは、階段の昇りで息切れがすることです。階段が辛くなります
心不全が重くなると夜中の睡眠中に息苦しくなって起き上がり、座った姿勢になってゼーゼーヒューヒューと苦しい呼吸をします。
布団の上で仰向けの姿勢では苦しくて寝ていられないのです。窓を開け放ち酸素を一杯に吸いたくなります。
「これで死ぬかも・・」の恐怖
心不全の患者さんの多くは飲水についての認識がかなり不足している人が多いと思います。
日常生活で水分制限が極めて大切なことをあまり理解していないのです。
心不全になれば体調が悪化し、疲れやすく、食欲は減退し、息切れがして、重くなれば夜間に息苦しくて仰向けで寝ることができず、起き上がってハーハーしています。
夜中に苦しくて「これで死んでしまうかも・・」と不安になることさえあるでしょう。
予防は命が懸った行為
こんな苦しくなりたくなければ心不全の予防は命がかかった行動です。
心不全予防にとって日常生活での注意事項の最も重要なのが水分制限です。
心不全では、「水は毒!」と認識
心不全予備軍の患者さんは水分を厳重に制限しなければなりません。
患者さんにとってまさに「水は毒」なのです。「水が毒なんて・・・」と不思議な顔をされます。
普通の人にはどれだけ飲んでも無害な水が心不全予備軍の患者さんには「重大な毒」だと認識を変えていただかなければなりません。
長く続けた水分制限をしばらく中止しただけで重症の心不全で緊急入院となった心不全予備軍の人もいます。
水分制限の重要性
重い心不全では体の中に水が貯まり過ぎている状態ですから、酸素ボンベなしで潜水したのと同じで”窒息”してしまいます。
水分と塩分、厳重な制限を
たとえば普通の水以外に
●お茶
●ジュース
●ミルク
●アルコール(特にビール)
●水分の多い果物(スイカ、グレープフルーツなど)
●味噌汁
●かき氷
●水を欲しくなる塩味の濃いもの(漬物、梅干、煎餅、羊羹、そばつゆ)も、
全部水分関係と考えます。
心不全の程度にもよりますが水分は一日の総量で1200mi(限度1500ml)程度にしてください。
普通のコップで5~6杯までですからかなり厳しい量です。
標準体重
少し厳しいですが、水分制限を厳重にするべき心不全患者さんを例に説明します。
最初に体の中にたまったジャブジャブの水を一旦全部取り去ります。体内から余分な水分がなくなった体にします。これには治療を開始してからほぼ1~2週間程度かかるでしょう。
体内の余分な水が消えた時の体重をその人の標準体重と考えてください。
この体重は恐らく心不全で苦しかった時の体重と比べて3~5キロ以上、場合によっては10キロ以上も少ないでしょう。それだけの水が体内に溢れていたのです。
標準体重より少しだけ多めの体重を指標
日常生活上での飲水量の管理はこの標準体重より少し余裕を持たせた体重を基準の体重にします。これは主治医とよく相談して決めてください。
脱水状態にならないよう少し余裕を持たせた基準体重はどの程度の余裕を持たせるか相談下さい。
毎日決まった時間(起床時や寝る前など)に体重を量り記録を残します。その記録を診察の度に見せます。
体重が基準体重から1~2キロ増加の範囲内で動いていれば水分管理は上手くいっています。3~4キロと増加してきたら心不全の発症に近づいたと考えていいでしょう。5キロ以上増えたら心不全の症状になっているでしょう。
このように体重を指標に体重を毎日測りながら水分摂取量を管理していけば心不全を相当程度に予防することができます。
水分の自己管理を上手にしていれば心不全にほぼ無縁の元気な毎日を過ごすことができています。
まとめ
弱った心臓では、ただの水でも毒
心不全とは心臓が疲れた状態です。そんな心臓には「ちょっとした追加の負担」がかかっただけで息切れになります。
軽い血圧上昇や肥満でさえもその負担の原因となるのです。
心不全が悪化する原因の多くは患者さんが無意識のうちに水分を過量に摂取していることです。「水の入りを制する」をうまくできれば心不全を相当程度に予防することが可能になるでしょう。
★参考情報:心不全の重症度
心不全の重症の程度は以下のような基準を一つの目安として下さい。
■心不全の重症度分類1
NYHA(New York Heart Association)の分類
Ⅰ度 無症状:制限はない。
心疾患はあるが、通常の身体活動に制限はない。
Ⅱ度 軽症:安静時には無症状。身体活動の制限は軽度。
日常的な身体活動で、疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛を生じる。
Ⅲ度 中程度~重症:身体活動の制限が高度。
日常的な身体活動以下で疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛を生じる。
Ⅳ度 難治性:いかなる身体活動も制限される。
安静時にも、呼吸困難を生じる。わずかな労作でこれらの症状は増悪する。
■心不全の重症度分類2
安田寿一らの分類
重症度1(心不全らしい):
普通に階段を昇ると息切れがするが,途中で休むほどではない。
重症度2(軽い心不全):
普通の階段を昇るとき息切れがして途中で休む。日常の労作のあと,夕方になると下腿にむくみがみられる。
重症度3(中程度の心不全):
普通に平地を歩いていても息切れのため長くは歩けない。また,静かに横になっていても多少の息苦しさがある。下腿にわずかなむくみがある。
重症度4(重い心不全):
部屋の中の歩行,排尿や排便の時に息苦しさがある。静かに横になっていても息苦しい。下腿に明らかなむくみがある。
重症度5(非常に重い心不全):
息苦しくて立ったり歩いたり出来ない。静かに横になっていても強い呼吸困難がある(起座呼吸,夜間発作性呼吸困難など)。下腿に高度なむくみと腹水や胸水もある。