患者さんは言葉には出しませんが、医療機関に熱く期待している事があります。当院はその期待にどのように対応してきたかをお話しします。
このテーマで1回目が、「◆124 「安全と確実」は、医療への真剣な期待:当院の場合」 です。
2回目は、◆129 「早期発見・早期治療」は、医療への大きな期待です。
3回目は、◆133 「個人情報の守秘」は、医療への当然の期待です。
予防は最上の策、次善の策が早期発見・早期治療
孫子の兵法に、戦争は戦わずして勝つのが最上の策との言葉がありますが、病気も予防してならないようにするのが最上の策だと思います。当院では患者さんのこの予防に最も力を入れています。しかし病気になってしまったなら、そこでの最上の策は、早期発見・早期治療開始です。病気は機械の故障に喩えれば分かり易いと思います。機械の故障防止も、わずかの軽い異常のうちに部品を交換したり調整しておいたりを実行します。この小まめな手入れを早めに繰り返ししておく方が機械は調子よく長持ちしてくれるでしょう。人間の体は普通の機械とは比べ物にならないくらいの超々精密機械です。自動修復装置までついていますので、少しくらいの不調・故障は自動的に治してくれています。病気の発症とはその修復さえも効果がなくなるほど問題が大きくなってから初めて表に現れてくるのです。
症状は軽くても、病気は既にある程度まで進行した
症状が出た時はたとえ非常に軽いものであっても、すでに病気はある程度まで進行してきているのです。しかし、当然ですが、症状が軽い最初の段階、またはまだ症状さえ出ていない早期の段階で病気を確定して治療を始めることが出来れば、病気は回復しやすく元の健康な状態に戻り易いのです。
症状が重くなりますと病気の程度は相当に進行してきています。そこまできてから治療を始めても期待するほど十分な回復は得られないかも知れません。場合によっては最悪で、もう手遅れであとは死を待つのみとなることもあるでしょう。早期発見・早期治療開始の重要性は強調してもし過ぎることはありません。
それではどうすればその早期発見・早期治療開始が実現できるでしょうか。いくつかの具体的な例をお話しします。
1) 気になる症状があれば、早めに病院受診を
少し神経質かと思われるほど、何か気になる症状があれば早めに病院を受診することです。この時、受診する病院や専門科を間違えないことです。専門外の病気の患者さんが来られても、担当した医師が正しく診断できないことがあります。結果的に早期発見・早期治療開始のチャンスを逃してしまいます。最初にその症状の病気の専門家を見つける努力は非常に大切です。
2) 人間ドックや定期健診での異常指摘、このチャンスを生かす
そんな検査で異常値が発見された時、それを必ず詳しく調べることです。症状がないのに異常値が出ているということは、すでに何がしかの問題が体の中で起こっているサインを見つけられたと、その幸運を喜ぶべきです。
このタイミングで詳しく調べるきっかけにするべきです。今何も症状がないからとその異常結果を放置する方が時々おられますが、これでは病気の早期発見・早期治療はとても実現できません。
3) 通院しながら、「一病息災」を実行する
一つの慢性の病気があって(例えば高血圧など)その病気の治療で定期的に通院される方なら、気になる症状があれば早めに先生にその話をして検査を進めてもらうことです。もっと良いのは、小まめに定期検査をしてもらいながら、無症状のうちに検査値の異常から潜んでいる病気を発掘することです。病気発症を未然に防ぎ、早めに病気を発見できます。せっかく定期的に病院に行っているのですから、その機会を早期発見に利用する事です。これが当院ではよくある病気の早期発見のパターンです。
当院では薬の副作用チェックのためや薬の効果判定のために定期的に血液と尿等の検査を実施しています。その検査のお蔭で、患者さんが無症状のうちに貧血進行が発見されて、原因の調査で胃癌や大腸癌が見つかった等はよくあることです。患者さんは治療の専門病院に紹介し、そちらで適切な治療をしてもらいます。こんな早期発見のケースではほとんどの方は病気を完全に治して元気に当院に戻って来られます。その後再びお元気に外来通院を続けて普通に一生を全うされます。当院で通院中の患者さんには、機会あるごとにこの「一病息災」の早期発見・早期治療を徹底してお勧めしています。