◆329-2 銀座の夕暮れ　男は洒落たスーツを・

男は洒落たスーツを着て一人で立っていた。

目尻にシワを寄せず歯を見せて笑う男は、伊達男か役者と相場が決まっている。

男の待っていた女は、スクーターに跨がると、じゃあねと微笑んだ。

怪訝そうな男を尻目に、長いスカートはたなびいて、ふわりと流れた。

女性のしたたかさを気持ちよく良く感じる僕も、敗者に違いない。

P. Angenieux Paris 50/1.5 S21, 1953 & Sony alpha7 RII
写真：竹田幸一、文：竹田彩子