■ 5.心筋の力-長さ-時間関係
5.1 心筋力ー長さ関係の直線性と非直線性
イヌでの実験結果から,モデルの基本方程式(式3-6)が実際の生体の左室壁心筋において妥当な近似式であることが分かった169)(図5-1)。従って心筋の発生張力は筋小胞体から放出されたCa2+濃度,Ca2+とトロポニンとの結合反応速度定数,Ca2+放出からの経過時間,その時の心筋長によって主に規定されることが明らかである。このことはまた心筋発生張力の経時的変化の主要な決定因子はアクチンフィラメント上の活性部位の形成過程にあり,連結橋の回転そのものではないことを意味する。ある瞬間の心筋の発生張力はその時の活性部位の総数に比例する。比例定数は単位回転連結橋の発生する力fである。心筋長と心筋断面積はこの活性部位の総数を規定する因子である。従って,心筋の力ー長さ関係は基本的に直線関係であると推測される(図5-2,5-3)。
しかし一方,Ca2+を大量に投与し心筋収縮性が増大した時,心筋の力ー長さ関係はその良い直線性が崩れて上に凸の曲線となる(図5-2)。この現象はin vivo左室心筋175)や摘出心筋だけではなく,sarcomereの力ー長さ関係62, 189)(図5-4),左室圧ー容積関係19, 143)(図5-5)においても同様である。逆に心筋収縮性が低下した時には,sarcomereの力ー長さ関係62, 189),心筋の力ー長さ関係1),左室圧ー容積関係19, 143)は下に凸の曲線となる。このように心筋収縮性が変化した時,心筋の力ー長さ関係の直線性が変質してしまう理由は不明である。推測される機構としては,Ca2+とトロポニンが結合し活性部位が出現しても,それが連結橋と有効な反応を起こし連結橋が回転するか否かはその時のCa2+濃度と心筋長によって影響を受けるためなのか,それともCa2+とトロポニンが結合すればその活性部位で連結橋は回転するが,その回転速度がその時のCa2+濃度と心筋長によって影響を受けるためなのかも知れない。詳細は不明であるが,この現象についてはモデルからは説明出来ない。
5.2 EcとLoの臨床的意味
臨床心臓病学で問題となる心筋の基本的な力学的状況とは,機能心筋(収縮する心筋)の収縮性の強さと,無機能心筋(障害のため収縮しなくなった心筋)の量であろう。心筋の力ー長さ平面において長さ切片(Lo)の値は機能心筋においてはアクチンーミオシンフィラメントがこれ以上短縮しない最短の心筋長を意味するが,心筋のなかに無機能障害心筋が存在する場合はこの無機能障害心筋の長さもその内に含むことになる(図5-6)。従って,左室壁における無機能障害心筋の解剖学的量は力-長さ関係の長さ切片(Lo)の値を用いて相対的に評価することができる169)。一方,機能心筋の持つ収縮性の強さは細胞内Ca2+濃度及び単位活性連結橋の発生張力がその規定因子であり,それらは心筋の力-長さ関係の傾き(Ec)で表現される。心筋の力-長さ関係を測定しEcとLoの値を求めれば,機能心筋の収縮性の強さと無機能障害心筋の長さをそれぞれ定量的に評価できる。
5.3 種々の条件下のEcとLo
急性に左室圧が低下する間に,左室心筋内に埋め込んだ超音波クリスタルで心筋長を測定した実験研究(図5-7,5-8)と心エコー図検査を用いて心筋長を測定(図5-9)した臨床研究によってイヌとヒトでの左室心筋の収縮末期力ー長さ関係を求め(図5-10),そこからEcとLoの値を計算し,幾つかの異なった条件下でEcとLoがどのように変化するかを調べた(表1)。
正常イヌでCa2+を負荷するとEcは増大するがLoは不変175)(図5-2),正常ヒトでdobutamine投与はEcを増大させるがLoは不変176)(図5-11),正常イヌでβ遮断薬(propranolol)投与はEcを低下させるがLoは不変214)(図5-12),正常イヌでα1遮断薬(bunazosin)投与はEcを低下させるがLoは不変173)(図5-13),正常イヌでPDE 阻害薬(vesnarinone)投与はEcを増大させるがLoは不変128)(図5-14),正常イヌでisosorbide dinitrate(ISDN)静注はEcとLoを変化させない126)(図5-15),ヒトの虚血性心筋症にISDNを静注するとEcを低下させることがある(図5-16,5-17,5-18)180),正常イヌで急性の昇圧はEcを増大させる89)(図5-19),アシドーシスではEcは変化しないがLoは増大する172)ことが確認された。
5.4 コンダクタンスカテーテルでのE cとLo
心筋の力ー長さ関係を調べる上で心筋長は正確に計測しなければならない。臨床では実験のように超音波クリスタルを心筋内に埋め込むことは不可能なので,それに替わる方法が必要であるだけでなく,局所的左室壁運動異常のある場合に超音波クリスタルによる左室の一内径の測定では正しく左室内円筒の心筋長を計測することが出来ないという問題点がある。左室心筋に局所的な壁運動異常のある時でもそこに左室瘤の形成がなければ左室円筒は正円と解釈可能である。その意味から左室内円筒の心筋長を正確に計測する方法としてコンダクタンスカテーテル5-7)は実際的方法である。正常左室だけでなく,虚血性心疾患でしばしば認められる局所的左室壁運動異常のある病態でもコンダクタンスカテーテルはこのモデルに適用可能であろう。
イヌでコンダクタンスカテーテルを用いて左室内で高さ0.9 cmの3つの円筒の容積(図5-20)を測定することが出来る。それぞれの円筒容積から円筒の心筋長を算出し3つの左室心筋収縮末期力ー長さ関係を求める方法でEcとLoを調べた171)。3つの円筒の3つのEcの平均値と左室を高さ1cmの一つの円筒と想定したときの一つのEc値はそれぞれ40.2±10.3と41.0±10.1 g/cmであり両者はほぼ等しい。この2つのEc値は高度な相関を示した(y=0.975x + 1.783, r=0.991)(図5-21)。従って,左室を高さ1 cmの一つの円筒と想定して左室全容積から算出したEcとLoを左室心筋全体の代表値として用いることができる。左室内の3つの円筒の個々のEcとLoを比較すると図5-22171)の様に心尖部に近くなるにつれてLoは小さくなるが,同時にEcも小さくなる。Ecは心筋長には影響されない(図5-23)176)が心筋の壁厚には依存するので(式3-7),心尖部に近づくにつれて当該心筋のEcが小さくなる傾向はLaplaceの法則から心尖部に近づくにつれ減少する壁厚に影響されたのであろう。図5-22でoverallのLoが大きいのは当然であるが,Ecはoverallもaverageも同じ値である。Ecは心筋長に影響されない証拠である。
同じイヌで超音波クリスタルを用いて左室円筒の心筋長を計測し左室心筋収縮末期力ー長さ関係を求めると,得られたEcはコンダクタンスカテーテルを用いて得た3つの円筒のEcの平均値に比較し有意に大きい値であった(70.6±23.1 vs.40.2±10.3 g/cm)(図5-22)。超音波クリスタルから左室収縮末期圧ー容積関係を計測して得たEmaxはコンダクタンスカテーテルから得たE maxよりかなり大きい値であることが知られているが(16.3±7.6 vs 8.5±5.9 mmHg/ml)4),この理由は明らかではない。しかし,コンダクタンスカテーテルから得たE maxも超音波クリスタルから得たEmaxと同様に,心筋収縮性の変化の程度と方向を良く反映するとApplegateら4)は報告しているが,恐らく同じことがEcにも適応されるであろう。
5.5 心不全のEcとLo
少数例(n=16)ではあるが,拡張型心筋症と心筋梗塞の心不全において心臓超音波検査を用いて左室心筋収縮末期力ー長さ関係を調べた117)(図5-24)。左室収縮末期内径とLo値には強い正の相関(r=0.935)があり,またLoを体表面積(BSA)で除した値(Lo/BSA)とEcの値にも正の相関(y=19.0855x + 24.8787, r=0.772)が認められた(図5-25)。Loを体表面積で除すのは各症例の体格の差によるLoの違いを補正するためである。従って,Lo/BSAは体格差とは無関係な左室の無機能心筋の量を表す指標となる。以上の結果は拡大した左室にはその拡大に比例して無機能障害心筋が存在し,その無機能障害心筋の量が多ければ多いほど残された機能心筋の収縮性は増大していると解釈される。左室に無機能障害心筋が増加すると機能心筋の量は減少する。残された機能心筋だけで十分な心機能を確保するためには,機能心筋は正常の心臓で必要な収縮性以上に高い収縮性を発揮しなければならない。残された機能心筋はその収縮性の予備能を消費しながら低下する左室ポンプ性能を正常化するために代償していると考えられる。左室ポンプ性能低下はこの代償機序が破綻したときに発生するのであろう。不全心ではカテコラミンに対する心臓収縮性増大反応が低下しているが,それは心筋細胞膜β受容体数のdown regulation18)によるだけでなく,残された左室機能心筋の収縮性予備能の減少にもその理由があるのかも知れない。
5.6 局所的心筋虚血と再潅流後のEcとLo
急性の局所的心筋虚血によって虚血部心筋は直ちに無機能化する141, 188)。心筋内に植え込まれた超音波クリスタルを用い心筋長を計測した実験では,この時非虚血部の心筋はかえって収縮性が亢進する73, 196, 197)。しかし左室のdP/dtmaxで表される左室ポンプ性能は低下する197)。同様の状態を左室収縮末期圧ー容積関係で評れる左室ポンプ性能は低下する197)。同様の状態を左室収縮末期圧ー容積関係で評価すると,虚血によってVoは虚血領域の大きさに比例し拡大したが,奇妙なことに虚血領域を拡大してもEmaxは変化しなかった165)。一方,冠動脈の潅流圧を低下させる全体的虚血では,こんどはEmaxは潅流圧に比例して低下したがVoは不変であった164)。急性の心筋虚血における心筋収縮性の変化,左室ポンプ性能の変化,またEmaxとVoの変化についての以上の理解困難な奇妙な知見はどのように解釈できるであろうか。
正常イヌにおいて左冠動脈前下行枝の完全結紮15分後の左室心筋収縮末期力ー長さ関係をコンダクタンスカテーテルを用いて調べた171)(図5-26)。局所的心筋虚血によって左室収縮末期容積と拡張末期容積は有意に増加した 。左室収縮末期圧は不変であったが拡張末期圧は増大した。また虚血によっても心拍出量, LVdP/dtmax,Kaは不変であったが,LV駆出率 は減少し,EcとLoはともに増大した(図5-27)。この結果を解釈すると,局所的 心筋虚血によって虚血部に無機能心筋が出現(Lo増大)したが, 左室は拡大 (拡張末期容積増加)し非虚血部の機能心筋の細胞内Ca2+濃度および単位活性連結橋の発生張力が増大(Ec増大)したため 非虚血部機能心筋の収縮性は 亢進し ,結果として心拍出量と左室dP/dtmaxは虚血によっても減少しなかったと推測される。またこの変化は心臓への交感神経活動とは無関係におこる。
6章で詳細に述べるがEmaxの値は左室サイズVoに依存するため,局所的心筋虚血などでVoが変化するような状況では,Emaxという指標だけで左室心筋収縮性の変化を評価することは本来できないのである。一方,Voの変化しない冠動脈潅流圧低下という全体的な左室心筋収縮性低下の場合には,Emaxは全体的な左室心筋収縮性の指標として有用である。
前述の通りLoの値には左室における無機能障害心筋の量を含む。従って,一過性心筋虚血や心筋梗塞の症例でLoが測定できれば,増大したLoが虚血領域や梗塞領域の広さの程度を示すことになる。このLoを用いた虚血領域や梗塞領域の広さの推測方法は,CPK最高値等から推測される方法に較べ,より直接的な推測方法である。しかし,この方法の重大な欠点はLoの測定がCPKの測定に較べ非常に煩雑なことである。虚血性心疾患の診断カテの際にEcとLoを計測し,左室における虚血領域や梗塞領域の広さと残余機能心筋の収縮性亢進状態を把握し,治療方針決定のための検討資料として利用できるかも知れない。
次に冠動脈の結紮を解除し心筋を15分間再潅流すると拡大した左室は縮小するが,EcとLoの値も同時に低下した116)(表2)。この結果は虚血部の無機能心筋量が再潅流によって減少(Lo低下)したが,再潅流によって機能回復した心筋の収縮性はしばらくの間は低下したままなので(myocardial stunning),機能亢進している非虚血部の正常機能心筋との合算では若干収縮性が低下(Ec低下)すると解釈される(図5-28)。
局所的心筋虚血にする前から持続的にCa2+ channel blocker (manidipine)を投与しておくと,虚血前と較べ虚血後15分でもEcは増大せず116)(表2)再潅流後15分では虚血前と較べEcは低下していた(p<0.052)。虚血時の非虚血部機能心筋の収5分では虚血前と較べEcは低下していた(p<0.052)。虚血時の非虚血部機能心筋の収縮性亢進は1)細胞内[Ca2+]の増大,2)単位活性連結橋の発生張力の増大,3)Ca2+のトロポニンへの親和性の増大の可能性が考えられたが,Ca2+ blocker投与の結果からそれは細胞内Ca2+濃度が増大したため起こった現象であることが推測された。対照データに較べCa2+ blocker投与の再潅流後15分におけるLoの増大比率は有意に軽度であったので(表2),虚血前から細胞内の[Ca2+]を低下させておくと虚血による無機能心筋の産生が減少し再潅流後の回復も良いことになる。虚血前からのCa2+ channel blocker投与は心筋虚血による無機能心筋発生に対する有効な保護作用となる。一方,左室収縮期圧,左室dP/dtmaxは対照のデータと較べ虚血後15分と再潅流後15分で進行性に低下した。これは非虚血部心筋の代償的収縮性亢進が得られないためであると思われる(図5-28)。そのために血圧や左室ポンプ性能は心筋虚血時および再潅流時にも進行性に低下し全身的危険を伴うという問題を残すことになる。
5.7 イヌ高血圧性心筋症のEcとLo
one-clip, one-kidney renal hypertensionのため拡張型心筋症様の心臓となった一頭のビ-グル犬のβ受容体遮断後における病的左室心筋力ー長さ関係を図5-29に示す。たった一頭であるが正常のビ-グル犬の左室心筋力ー長さ関係が大変良い直線関係である175)(図5-2)のに比べ,この拡張型心筋症様のビ-グル犬では下に凸となった。その形は正常のビ-グル犬のCa2+負荷時のそれが上に凸である175)のと好対照である。また,左室心筋の力ー長さ関係の傾き(Ec)はコントロ-ルの直線bにおいて153 g/cmであり,直線aでは92 g/cmと正常のビ-グル犬の平均値(73±12g/cm)175)に比較して高値を示した。同程度の体重の正常ビ-グル犬の平均値(0.86±0.29 cm)175)に比較し,力ー長さ関係の長さ切片(Do)も1.86 cmと約二倍の値であった。一方,Ca2+のトロポニンCへの親和性(α)は若干低下していた(α=0.92。正常ではα=0.95169),図5-30,5-31)。正常雑種イヌでの昇圧と降圧から記録したデータとこの病的左室の降圧のデータとの対比は興味深い(図5-32)。以上から,one-clip, one-kidney renal hypertensionのため高度な左室拡大を来したビーグル犬では,収縮機構に関与しない大量の無機能障害心筋が存在するが残余機能心筋は自律神経支配とは無関係に収縮性を亢進していることが想像される。またCa2+のトロポニンCへの親和性も若干低下している。このため張力発生に関与しないCa2+処理のために心筋の発生張力に対するエネルギ-消費(エネルギー効率)も若干悪化していることが予想される。これらのデータはヒト不全心筋のおかれている状態を暗示するかも知れない。
図5-6:心筋を模した正常のバネ(CE)が二つ引き延ばされ,縮んでいる(上段:正 常心筋)。一つのバネが無機能(NE)となった時の状態(下段:病的心筋)。無負荷 時バネが最大限に縮んだ時の長さ(上段がLo,下段がLo’)の違いが,無機能心筋(NE) が出現した時のLoの違いに相当する。例えば,心筋梗塞により左室に無機能心筋が 発生し下段のようにLoが増大した時,左室の残って機能している正常バネ(CE)の弾 性率(Ec)は増加する(バネを太く書いてある)とモデルは予測した。CT:結合組織。 [Takeda K, et al: Jpn. Heart J. 1988;29:689174)]
図5-7:イヌ心臓での機器の装着状態。
表5-1:左室収縮末期力ー長さ関係の傾き(Ec)と長さ切片(Do)のまとめ 。
図5-17:虚血性心筋症(42歳,女性)のMモード心エコー図。BAP:上腕動脈圧, PCG:心音図。ニトログリセリン静注で血圧は低下しているのに,左室内径は通常 の反応とは逆に拡大している(パネルB)。[竹田幸一, et al: J. Cardiol. 1990;20: 1037180)]
図5-18:虚血性心筋症(42歳,女性)の左室心筋力ー長さ関係。[竹田幸一, et al: J. Cardiol. 1990;20: 1037180)]
図5-19:正常イヌの左室力ー長さ関係。降圧(VCO)と昇圧(AOO)との違い。 [Kadota R, et al: Jpn. Heart J. 1991;32:71189)]
図5-20:左室内でのコンダクタンスカテーテルの装着。高さ0.9 cmの5つの円筒の 容積を測定し,このうち計測値の安定しているセグメント2,3,4のデータだけを 採用した。[Takeda K, et al: Dokkyo J. Med. Sci. 1995; vol. 22 印刷中;.171)]
図5-21:円筒セグメント2,3,4の心筋長を算出し3つの左室心筋収縮末期力ー長 さ関係から求めた3つのEc値の平均値(average)と,セグメント2,3,4の合計容積 から高さ1cmの一つの円筒と想定したときの一つのEc値(overall)との相関。 [Takeda K, et al: Dokkyo J. Med. Sci. 1995; vol. 22 印刷中;.171)]
図5-22:左室内の3つの円筒セグメントの個々のEcとLo,3つのEcの平均値 (average),一つの円筒と想定したときの一つのEcとLo (overall),超音波クリスタル を用いて得られたEcとLo (crystal)。*p<0.05。>[Takeda K, et al: Dokkyo J. Med. Sci. 1995; vol. 22 印刷中;.171)]
図5-23:正常ヒトのEcと心筋長との関係(A)。Ecは圧ー長さ関係の傾き(Es)と対称的 に,心筋長に関係せず一定である。[Takeda K, et al: Am. J. Physiol. 1991;261:H1060176)
図5-25:ヒト心不全のEcとDoI(左室圧ゼロの時の左室内径を体表面積で除した値)との相関。[益田俊英, et al: J. Cardiol. 1993;23:371117)]
図5-26:コンダクタンスカテーテルを用いた左冠動脈前下行枝結紮15分前後の左 室心筋力ー長さ関係。心筋長は左室を高さ1cmの一つの円筒と想定したときのもの である(overall)。[Takeda K, et al: Dokkyo J. Med. Sci. 1995; vol. 22 印刷中;.171)]
図5-27:局所的心筋虚血15分後の左室拡張末期容積(LVEDV),収縮末期容積 (LVESV),左室駆出率,心拍出量, LV dP/dtmax,Ec,Lo,Kaの変化率。[Takeda K, et al: Dokkyo J. Med. Sci. 1995; vol. 22 印刷中;.171)]
表5-2:局所心筋虚血と再潅流後のEcとLoの変化。
図5-28:局所心筋虚血15分後と再潅流15分後のEcの変化を表す模式図。 前処置のない例:対照でのEcを100%とする。心筋虚血によって無機能心筋が出現 し(この部分のEcは0%),機能心筋の収縮性は亢進する(この部分のEcは 120%)。従って,計測した機能心筋全体の平均的Ecは120%となる。再潅流によって虚血領域の一部は収縮機能が回復する(この部分のEcは50%)が,一部はまだ 無機能の状態である(この部分のEcは0%)。従って,計測した機能心筋全体とし ての平均的Ecは113%と虚血時に比較し若干減少するが,対照時よりは大きい。 Ca2+拮抗薬前投与の例:対照でのEc100%とする。心筋虚血によって無機能心筋 が出現するが(この部分のEcは0%),機能心筋の収縮性は亢進しない(この部分 のEcは100%)。従って,計測した機能心筋全体の平均的Ecは100%で対照時と変わ らない。再潅流によって虚血領域の一部は収縮機能が回復する(この部分のEcは 50%)がこの回復領域は無前処置例と較べ広範囲である。これは心筋虚血・再潅流 からのCa2+拮抗薬の保護作用と推測される。従って,計測した機能心筋全体として の平均的Ecは91%と対照時よりも減少してしまう。