どんな病気も当院ですべて検査して治せるのが理想ですが、それは不可能です。現代の医療は高度に専門化しており、私たちが責任を持って検査治療できる範囲はほんの限られたものです。
「餅は餅屋に」と言いますが、病気の診断検査治療もまったくその通りです。その病気の専門医が最も正しく早く治すことが出来ます。
自信を持って治療ができないと感じた時、遅くならないうちに（出来れば少し早めに）その病気の種類や段階に応じた専門病院に紹介したいと考えています。その時期は早すぎず遅からずのタイミングでなければなりません。
病気の種類と重さの段階を判断するのは専門的です。患者さんから見て「自分はまだまだ大丈夫！」と思っても、私たちが他の病院受診を勧める時はそれなりの根拠があるのです。
患者さんによっては「先生を信じているからここでいい」、「まだ大丈夫だからここで診て欲しい」、「そんな遠くには行けない。連れて行ってくれる人がいない」、「入院して検査は嫌だ」とか、直ちには受け入れて頂けないこともよくあります。
他の病院を紹介する判断の背景は個々のケースで様々ですから、その根拠をここで一般的にお教えすることは出来ませんがいくつかの例をお話します。
１）当院の専門分野の病気ですが、段階が進んで大学病院などで検査治療したほうが良い
２）当院ではできない検査や治療が必要なので、できる病院を紹介する
３）当院でもできる検査や治療だが、事情から専門病院でしたほうが良い
４）治療に特別な薬が必要だが、副作用等で専門医が始めたほうが良い
５）当院の専門外の病気で、検査も治療も経験がないので紹介する
６）緊急の処置が必要で、体制がそろった病院へ紹介する
７）入院治療したほうが良いので、入院できる病院を紹介する
などです。もしその様な状況になった時には判断の背景を詳しくお話ししますので、私たちの助言を信じて頂きたいと思います。
紹介した後で、その病院の専門医が詳しい検査をして、時には結果として「問題なし」や「時期的にまだ早いので、少し様子を見ても良い」などの結論で戻ってこられる方もいます。しかし、そんな時は「難しい問題がなくて良かったですね」とお話しします。少なくとも手遅れにはなっていませんでした。
患者さんができる限り長く健康で元気に生活できるために、少し早めかなと思っても疑わしきは念の為に検査して調べる、少し早いかなと思う段階でも治療を開始するようにしてきました。
この姿勢を長く続けた結果、患者さんは皆お元気で介護や入院が少なくて済むようになりました。