画像:Alfred Hitchcocks監督、映画「めまい Vertigo」, 男優 James Stewart, 女優 Kim Novak
よくある「めまい」で周りが激しくグルグル回る
日常の診察でよくみる病気の一つに「めまい」があります。めまいで来院される人は非常に不安そうな表情で、大変なことが起こったように考えているようです。しかしめまいの多くはその症状が激しい割りに病気として軽いものがほとんどというのが現実です。
逆に、症状が比較的穏やかに見えて患者さんが病院に行くほどではないと自己診断しているめまいの方が実は重大な病気が隠れているのかもしれません。実際は見ていませんので本当のことは分かりません。 ◆314 心臓病や低血圧でおきる「危険なめまい」とは?
典型的な症状
当クリニックに来院される患者の代表的な症状をお話しします。
突然周りがぐるぐると回って立っているのが辛くなった。気分が悪く吐き気が出て来たと思ったら吐き出してしまった。横になって休んだが少 し体の向きを変えようとしたり起き上がろうとすると激しくめまいが起こり、起き上がれない。
横になって休んでいたが吐き気もひどく、時々胃液みたいな物 を吐いていた。目を開けただけで気分が悪くなった。やっと起き上がったが下を向いたり後ろを振り返ったりするとめまいがひどくなり普通に動けない。
頭痛は最初から全然ない。脳卒中にでもなったかと思い血圧を測ったらいつもより異常に高かった。初めての経験で本当に心配になって家族に付き添われて来院した。
この様な経過が当クリニックではよくみるめまいの患者さんです。
そんなめまいは軽い病気が多い
患者は驚いて来院します。血圧も異常に高くなって大変に心配していますが、一通りの話を聞いて診察すれば、大変な病気が起きたのではないことが診断できます。
いくつかの検査をして治療を始めますが、めまいがひどくて立っていられないならベッド安静にして点滴や注射をしながら内服薬も同時に飲みます。2~3時間も点滴で休んでいると終わり頃にはかなり体調は改善し来院された時よりずっと穏やかに帰宅します。
この様なめまいの原因はほぼ耳にあります。以前に中耳炎などを経験して中耳炎はその時いったん治ったのですが、内耳に炎症が波及してそこも軽く傷めてしまいました。その障害が残って後年になってから、何かのきっかけでこのような発作的なめまいとなって発症するケースが多いように思います。古い中耳炎の経験がありかなり以前から耳鳴りもあり現在でも続いているようです。
めまいが突然に起こるきっかけははっきりしません。軽い風邪にかかっていたり、過労が重なったり、睡眠不足であったり、ストレスが多かったり、体調不良があったり、寒い日だったりなどが重なると引き金になるようです。
当クリニックでは若い人は少なく中高年がほとんどです。めまい症状が強い場合には内耳機能の老化もそこに一つの因子として加わっているのかなと思います。
治療は注射や内服薬ですが数日で完全に治ることがほとんどです。しかししばらくしてからこのようなめまい発作が再び繰り返し起こることもあります。この時も同じような治療で軽快します。
めまい:その他の症状
「めまい」と言われる症状はさまざまですが、以下のようなケースが想定されます。
・足腰がしっかりしないために、ふらついている状態、
・自分の体全体がふらついている状態、
・頭がぼーっとしているため、体がしっかりしない状態、
・歩けるが、まっすぐに歩いていけない状態、
・歩こうとしても、うまく足を運べない状態、
・体がふわふわして、雲の上にでもいる様な状態、
・姿勢の変化や頭を動かすと、周りがグラグラする状態、
・天井や周りの風景がグルグルと回って、立ていられないような比較的強い症状、
・等々、
それぞれは別の病気が原因と考えられます。しかし天井や周りがグルグルと廻っているような症状の「めまい」は原因が耳から来たものがほとんどで慌てて大騒ぎしなくても大丈夫なことが多いと思います。