脈は手首で測りますが測ったことがないなら難しいかも知れません。最近は家庭血圧計で血圧と同時に一分間の脈の数(脈拍数)も表示されますから簡単に測れるようになりました。
脈の拍動は心臓の拍動と同じリズムです。脈の速い遅いは心臓の拍動の速い遅いを、脈の乱れは心臓拍動の乱れそのものです。
安静時の一分間の脈拍数は50~80回が正常です。規則正しく打つ脈に異常がでる時があります。その異常とは、脈が速い(多い)、遅い(少ない)、飛ぶ、抜ける、止まる、ない、弱い、強い等です。今日はこの脈の異常についてお話しします。
心配な時は医師に相談ください。
◆心臓病 症状から自己診断は、リスクあり危険
正常の脈
脈とは何か
脈とは、心臓から送られてくる血液を血管内の圧変化で拍動として触れる事ができるものです。割り切って言えば、心臓が一回血液を送り出せば、血管に一回の脈が生じます。脈は心臓の拍動そのものを手首の血管で触っていると考えて下さい。「脈を診るとは、心臓の拍動を診る」と同じことです。
脈の拍動は心臓の拍動です。心臓の拍動リズムを脈はそのまま反映します。脈の速い遅いは心臓拍動の速い遅いを、脈の乱れは心臓拍動の乱れなのです。
脈は「安静時に測る」
脈は体の状態で瞬時に数が変化します。どんな状態の時に測ったかが大切です。測定の基本は安静時です。座った姿勢で少なくとも5分間以上静かにして下さい。そこで測る脈が安静時の脈で脈拍数判断の基本になります。
もし興奮したり、睡眠中、運動中、会話中などに測れば、それは安静時の脈とは違う値となるでしょう。基本は安静時の脈拍数です。
毎日測定するなら、朝起きてすぐ(起床時)か寝る直前(就寝前)の二回のタイミングが最適です。この時が安静の条件に合致しています。普通はこのタイミングで家庭血圧を測定しますから、同時に表示される脈拍数を観察すれば安静時の脈拍測定としてよいでしょう。
脈を測れる場所
脈は体のどこでも測れる訳ではありません。測れる場所は限定されます。医療職が最も普通に測る場所は、手首の親指側です。ここを上から指で強く押すと血管の拍動を指で感じることができます。この拍動が脈です。普通は拍動を一分間測りその回数を脈拍数と言います。
この脈を測る場所は手首以外にも幾つかありますが、多分皆さんにはここ以外で測るのは技術的に難しいでしょう。もし手首で測れない時は顎の真下で首の左右で測ることもできます。
脈を自分で測ってみると、意外に難しくて測れないかも知れません。そんな時にお勧めする測り方は、家庭血圧計で血圧を測れば脈も同時に表示されますから、その値を見るのがやさしい方法です。
脈の正常値、50<脈拍数<80
一般的には、一分間の脈拍の数(脈拍数といいます)は生まれた直後が最も速く(多く)成長するに従ってゆっくりと遅く(少なく)なっていきます。高齢者では50以下になっていることも珍しくありません。
健康な成人なら、安静時の一分間の脈拍数は、約50回以上で80回以下でしょう。この回数は心臓の拍動回数と全く同じです。
異常な脈
自分で脈を測った時、正常ではなく異常な脈であったら不安になるでしょう。脈にはどんな異常があるのかお話しします。
●速い(多い>80)、遅い(少ない<50)
一分間の脈拍数が多かったり少なかった時です。安静でありながら80以上に多い時と、50以下に少ない時はそれが一時的でなく長く続くなら注意が必要です。
100以上や45以下が長く続くなら病気が潜む可能性もあります。詳しくは次のコラムで調べて下さい。 特集:心臓病 速い脈・遅い脈
●飛ぶ、抜ける
脈拍は心臓の拍動と全く同じです。非常に規則正しく時計で計ったように正確に拍動しています。脈が一瞬消えてしまったり、飛んだように、一回抜けたように触ることがあります。こんな事が数秒ごとに繰り返し起こるのもよくあります。
この異常な脈は、恐らく期外収縮という異常が心臓に起こったことが原因と予想されます。 特集:期外収縮 症状・リスク・誘因
*注意:脈が飛んだり抜けたり乱れた時には、家庭血圧計では脈の音が一瞬消えたり規則的な音の間隔が乱れます。機械には「不整脈」や「エラー」等が表示されるでしょう。
●止まる:3秒以上脈がない
心臓が一秒に一回拍動すれば脈拍数は一分間で60回になります。一分間に60前後の脈拍なら心臓の動く回数として正常です。
もしこの動く間隔が2秒間に延びたら、脈拍数は30回と極端に遅く(少なく)なってしまいます。これは重症な病的な状態です。脈拍数が一分間に30回なら動くとひどく疲れやすくなっているはずです。詳しい解説は次の記事を読んで下さい。 Web 心臓病■04 気を失う(徐脈ほか) 2017改
脈を触っている時、ほぼ等間隔で拍動していた脈が一瞬だけ2秒に伸びても、すぐに元の1秒間の等間隔に戻るなら重大な問題ではないと思います。もし拍動間隔が一回でも一瞬でも3秒間以上に伸びたなら、これはかなり異常な状態と考えて下さい。
3秒間以上脈がない(心臓の拍動がない)場合、これは一時的ですが「脈が止まった」(心臓が止まった)といっていいでしょう。これを見つけたら、何も症状がなくてもすぐに医師の診察を受けて下さい。心臓病の危険なサインです。
●弱い、脈がない(脈が見つからない?)
脈があるべき場所にないなら病気です。そこに血液が流れていないことになります。調べなければなりません。しかし多くは脈の探し方が悪く見つからないだけだと思います。不安なら医師の診察を受けましょう。
たとえ脈が弱くても現在元気で健康な体なら、まず心配ないと思います。単に血管が深いところにあるためで病気ではないでしょう。脈が弱いのを気にすることはありません。ただ前と比べて弱くなっているなら少し気になります。診察を受けて下さい。
もし現在何かの病気があって脈が弱くなったのなら、血液の流れが悪くなったか血圧がひどく下がったサインかも知れません。心臓が弱ったか血管が細くなったのかも知れません。*注意を見て下さい。
●強い
運動、興奮、緊張した時に脈が強く触れるのは病気ではありません。体の正常な反応です。
不安や興奮しているわけではないのに、穏やかな安静時に脈が強い拍動なら、病気の可能性があります。心臓弁膜症、甲状腺機能亢進症などの可能性があります。原因を調べて下さい。*注意を見て下さい。
*注意:脈を測り慣れていない人が、脈が「強いか、弱いか」を判断するのは難しいと思います。標準の脈の強さの幅を知らないからです。不安なら診察を受けて下さい。
まとめ
家庭血圧を測定する時には、同時に表示される脈拍数にも注目して下さい。毎日それを記録しておけば、その変化から潜んでいるいろんな病気を早期に発見することもできるのです。
以下の「けやき坂スタイル」も読めば、生涯の健康人生実現に大いに役立つと思います。
*参考情報
脈拍を家庭血圧計で測定する限界
家庭血圧計は簡単に脈が測れる機械として非常に優れています。しかし正常な脈の計測には力を発揮しますが、「病的で異常な脈」や「脈の性質」を知る事ではほぼ無力です。
脈の性質とは、脈の強さ、弱さ、乱れの性状等です。これは自分で直接脈を触って感じるしかありません。
脈が乱れた場合にはほぼ無力で、表示される脈拍数さえ正しいとは限りません。もし脈拍数の表示に「エラー」や「不整脈」が表示された時は、表示された脈の値は参考値として下さい。特に心房細動の脈拍数なら信用しないで下さい。
結局、家庭血圧計で測定する脈拍数は、「乱れのない正常な拍動」という条件で正しく値が表示されると考えて下さい。
危険な心房細動を、自分で発見する!
家庭血圧計で、脈拍数に「エラー」や「不整脈」の表示が何度も繰り返して表示されて、血圧がいつもよりかなり低いなら、危険な無症状の心房細動である可能性が高くなります。 ◆危険な心房細動 無症状を自分で見つける方法
心臓に不安なら、専門医を決めておく
短時間だけ一時的におこった心房細動(発作性心房細動)なら、しばらくすると自然に消えて正常に戻りますから、もし発見した時には急いで心電図をとって証拠を確認しなければなりません。
心電図をとって診断するため、すぐ近くの医療機関に行き「いま心房細動になっています。すぐ心電図を取って下さい」と受付で申し出て下さい。
もし融通が利く親切な医療機関なら意味を理解して、すぐに対応してくれるでしょう。
大学病院や大病院でそんな対応を期待するのはほぼ無理です。受付での押し問答で終わってしまうかも知れません。
当院のような小さなクリニックで循環器が専門なら、希望に沿った対応をしてくれる可能性が高いと思います。
心房細動に限らず、心臓の病気に不安を持っている人なら、急な場合にすぐ対応してくれるクリニックを近くで目星を付けておくとよいと思います。一度診察しておくのをお勧めします。
そして、速い脈と遅い脈では・・
速い脈と遅い脈の五部作
脈が異常になる種類は?:
◆379 脈の異常:速い、遅い、飛ぶ、抜ける、止まる、弱い、強い
脈が80以上ならどんな病気がある?:
◆141 頻脈?:安静で脈80台以上、長く続く時は病気が潜む?
脈が100前後なら心臓の病気か?:
◆283 脈が100前後、速くて気になる どんな病気?
脈が異常に遅く、すごく疲れるのは?:
◆303 動くとひどく疲れる、脈が遅い。これはどんな病気? ー脈の遅い心不全ー
めまいや気を失って、脈が遅いと危険か?:
◆314 心臓病や低血圧でおきる「危険なめまい」とは?
心臓病の究極予防:
◆369 心臓を健康にする ー心臓病・心不全の超予防ー