うつ病 ありふれた病気
うつ病は私の専門外の病気です。しかしこの病気はありふれてますので日常の診療でよく出会います。多いですから見つけ次第すぐに精神科へ紹介というわけにもいきません。
患者さんもそれはあまり希望しないので、多くはまず当院で治療することになります。かなり症状が重い方はさすがに当院での治療は難しく精神科専門医に紹介することもあります。
ほとんどの患者さんは当院の治療で回復しますが、重症の数パーセントの人は専門病院で見てもらうことになります。重症でも専門科に行けば全員が治ります。
当院かかりつけの患者さんがこの病気になることもそう珍しくありません。この場合は患者さんのことはよく分かっていますので診断は早く薬の反応も良く、ほとんどが短期間で治ってしまいます。問題は初めて当院を受診する方です。診断に迷います。
よくある症状
当院を初めて受診する患者さんは主に次のような症状があって来院されます。しかし自分はうつ病かも知れないとは自分から言う人は誰もいません。患者さんは女性が多いようです。
・仕事に行きたくない。学校に行きたくない。家事をしたくない。
・朝起きた時体調が悪くてだるい。起きたくない。夕方には少し良くなる。
・眠れない。夜中によく目覚める。
・痩せた。
・体がだるくて何もしたくない。何をするのも億劫。意欲がでない。
・食欲がない。
・笑わなくなった。笑顔が消えた。
・好きだったこともしなくなった。
・ため息ばかりついている。集中できない。
・お腹が痛くて、便秘や下痢が長く続いている。
・毎日のように、ちょっとしたことでドキドキする。疲れやすい。
・頭が痛い、肩が凝る。
・体が火照る、カーとする、ドキドキする、手が震える。
・息苦しい。ハーハーする。
・月経が不順になった。
多くの患者さんは自分がうつ病になっているとは思っていません。胃腸の病気や心臓の病気、女性ホルモン異常、更年期障害か?と予想して当院を受診されます。
しかし診察を進めていくうちにうつ病ではないかと私たちが判断しますと患者の生活の中に少し立ち入って話を聞くことになります。多くの場合、生活の中にその原因がありそれをきっかけに発症したことがわかります。
うつ病でも内科の検査をする場合がある
話を聞いていろいろ質問し体を診察し標準的な一般的検査をしてうつ病とほぼ診断がつくことはよくあります。
しかし症状が内科的な病気でないかどうかを一応確認しておかないと重要な内科の病気を見落としてしまうかもしれません。
症状によっては胃や大腸の内視鏡検査をしたり心臓病の専門的な検査もする場合があります。うつ病とほぼ診断がついても可能性を排除するために内科的病気の検査もする場合があります。
うつ病の薬は非常によく効く
患者さんが医師の説明に納得し薬の内服治療を希望すれば来院したその日からうつ病の薬を開始します。うつ病には良く効く薬がたくさんありますから重くなければ薬だけで回復します。
薬の効果が良いので、みるみるよくなって患者さんは涙を流さんばかりに喜んで大変に感謝します。いかに辛かったかが分かります。死のうと思うくらい苦しかったのですから。
ほぼ一週間くらいで薬の効果が出て1ヶ月くらいで元気な状態に近くなります。しかしここで薬をやめると再発する可能性が高いので、しばらくはやめずに続けることをお勧めします。
良い薬があるお蔭で当院のようにうつ病専門でない内科クリニックでも中程度までのうつ病はほとんどが完治可能です。
薬の問題点について
うつ病で治療薬(SSRIなど)を飲む際に何か問題があるとは考えません。私は内科医でうつ病の専門医ではありませんが薬のお陰で人生が救われた患者さんを多数経験しています。おそらく専門の精神科医は極めて多数の成功例を経験しているでしょう。
この薬を飲まなければ患者さんは長い期間の死ぬほどの苦しみから解放されることはなかったでしょう。
重い健康障害がおこる、学校を続けられない、学校を辞める、仕事が出来ない、仕事を辞める、家事ができない、家庭が崩壊する、離婚する、自殺するなどさらに厳しい状況に直面したかもしれません。これを短時間で救ってあげられたことを私は嬉しく思います。
救われた患者さんの幸福と比較すれば、薬の軽い副作用は取るに足りない問題に過ぎません。うつ病の薬を問題視する人がいるようですが、私は専門外ですけれど、この薬の優れた治療効果の側面を無視してはいけないと思います。
治りが悪い時はうつ病も疑う
本当はうつ病なのに別の病気の治療をしてなかなかよくならない患者さん(隠れているうつ病患者)が全国的に少なくないと言われています。もし上記のような症状で検査をしたり薬を飲んでも治りが悪い場にはうつ病を考えても良いかも知れません。
自分の症状が、胃腸の病気、心臓病、更年期障害、神経症、気のせい等と自己判断している方で治りが悪い時は一度うつ病かも知れないと考えて専門病院を受診しても良いでしょう。
もし精神科や心療内科に抵抗があれば、かかりつけの内科か近くの内科クリニックに相談されても良いでしょう。