血管老化(健康障害)進行の原因は、「高血圧」が最も悪者!
血管の老化にどれが一番悪いかと相談されれば、最悪なのは高血圧だとお答えするでしょう。印象としては恐らくダントツの一番です。2番がなくて3番目あたりに糖尿病とコレステロールが一緒に並び、その次に肥満がくるでしょうか。そうなら高血圧以外は治療しなくてもいいか、ということでは決してありません。病気は血管の老化だけではありませんし、それぞれの様々な治療効果は間違いなく充分あります。血管の老化に関しては、高血圧と比べ相対的に少ないだろうという限定的なお話しです。
ここで開業した18年前、当院では高血圧に対し徹底した降圧治療の方針を採用しました。コレステロールの克服は当時それほど注目されていませんでしたから、これについては力点を置き始めたのがここ10年以内だと思います。
当クリニックでは動脈硬化(血管の老化)による脳卒中と心筋梗塞・狭心症の発症が、日本の普通平均と比べて少なく抑えられました。また介護保険を受けられる方も少なく程度も軽くて済んでいるようです。おそらくその理由は、高血圧の徹底した治療が奏功したのだと思っています。つまり、血管の老化(動脈硬化)には高血圧が非常に悪さをするということです。年齢が上がっても、いつまでも若くありたいと希望されるなら、血圧を徹底して正常化しておくことが非常に重要です。
従って、高血圧を放置しておいて、糖尿病とコレステロールに力点を置いた治療をしても、多分期待するほどの高い治療効果は上がらないだろうと思います。しかし、高血圧を良くコントロールしておけば、糖尿病、コレステロール、肥満は少しコントロールが悪くてもそれなりの成果が得られるかもしれません。そして全部を上手くコントロール出来れば、最高の治療効果が期待できると思います。
高血圧とコレステロールは、薬が多彩、多種類で効果が高い
幸い、高血圧にはよい薬が豊富に揃っていて、患者さんは薬さえきちんと飲んでいれば、苦労なく血圧を正常に維持できる時代になりました。こんな良い時代になったのは最近のことで、以前には血圧のコントロールにかなり苦労したものでした。多くの患者さんにとって、食塩制限やストレスを少なくなどの日常生活指導は、以前に比べあまり気にしなくても良くなっています。薬の組み合わせさえ上手く配合してあれば、多くの患者さんの血圧は正常に維持できる時代です。
コレステロールについても高血圧と同じく非常に良い薬が揃っていて、薬さえ飲めば期待通りに良いコレステロール値に維持できるようになりました。ただ食事療法は高血圧ほど自由ではありません。気をつけて食事しなければいけませんが、良い治療薬がなかった時代と比べ、食事制限には格段に幸せな時代になっています。
糖尿病と肥満は、自力での治療が最も重要
一方、糖尿病治療は良い薬が最近矢継ぎ早に開発されていますが、まだまだ高血圧やコレステロールの薬レベルには到達していません。この治療は薬以上に、患者さんの努力に負うところが大きいです。患者さんが運動や食事治療の努力をしないと十分なレベルに病気をコントロールできないのが現状です。そこで患者さんのやる気の意思の強さが問われるところです。私もお手伝いしますが、最後は患者さん次第になってしまいます。
糖尿病と肥満は、良い薬の開発が期待される。もうしばらくの辛抱
肥満も糖尿病と事情はほぼ同じです。薬がほとんどない分、糖尿病よりさらに治療が困難です。しかし、糖尿病も肥満も薬の研究開発が速いスピードで進んでいますので、そう遠くないうちに今の高血圧やコレステロールの治療薬のレベルに到達できると思いますので、もう少しの我慢だと思います。期待して良いでしょう。