ワーファリンかプラザキサ(新経口抗凝固薬)か?
心房細動になったので、心臓の内に血栓ができるのを防ぐため、血液をサラサラにする薬を飲まなければならなくなりました。
薬は昔から使われているワーファリンと最近開発されたプラザキサ(新しい経口の抗凝固薬)がありますが、「どちらがいいですか?」と患者さんから尋ねられます。その時の当院の考え方をご紹介しますので、参考にして下さい。
心房細動になったので、心臓の内に血栓ができるのを防ぐため、血液をサラサラにする薬を飲まなければならなくなりました。
薬は昔から使われているワーファリンと最近開発されたプラザキサ(新しい経口の抗凝固薬)がありますが、「どちらがいいですか?」と患者さんから尋ねられます。その時の当院の考え方をご紹介しますので、参考にして下さい。
心配な時は医師に相談ください。
◆222 心臓病 症状から自己診断は、リスクあり危険
■長所
・長年の間、患者さんは毎月血液検査してきたので生活スタイルで効き方がどう変わるか自身でよく理解している。
・古くから歴史があるので、医療関係者(医師、歯科医師、薬剤師、検査技師、看護師、介護士など)が薬の使い方をよく分かっている。
・万一誤って量を2倍飲んだ時には(朝飲んだのに飲んでないと錯覚してもう一度昼に飲んでしまった)、効き過ぎて大変危険になりますが(重大な脳出血、消化管出血などが起こり易くなる)、自分で納豆や緑色野菜を急いでたくさん食べればその危険を回避することができる。または病院でビタミンK拮抗薬を注射するなどでも対応ができる。対処法が比較的簡単。
・古くからある薬なので価格が非常に安い。
■短所
・ワーファリンは最適な投与量が生活条件によって変わる。それをモニターするため毎月採血検査が必要である。
・ワーファリンはビタミンK含有の食品を控えないといけないので、そのような食品(納豆、クロレラ、昆布、緑色野菜、その他にもたくさんある)の摂取にかなり注意しなければならない。
■長所
・ビタミンK含有の食品には無関係なので、納豆でも緑色野菜でも何も制限なしに食べられる。
・一般的には用量調節が必要ないと言われているので、毎月の採血は原則的にはしなくて良い。
・ワーファリンより脳塞栓発症は少なくて、副作用の脳出血、消化管出血も少なかったと報告されている。
■短所
・毎月の検査はないが、これまでワーファリンを使ってきた方には効き方が不明なので不安を感じる。
・投与量は年齢によって変わるが、体格差には無関係に一定量を投与する。この薬の効き具合を評価する検査にまだ確証がない。従って、検査しても本当に効き具合をモニターしているのか不安で、効いているのかいないのか、よく分からない。
・確実なモニターが出来ないので、腎機能低下や問題のある併用薬剤を服用中の患者さんには投与が難しい。
・間違って2倍飲んだ時、効果を打ち消す方法が透析くらいしかないので、過量投与時の対応が困難。
・薬が高価で、ワーファリンの10倍以上する。医療費負担が重い。
プラザキサは用量調節が不要と言われていますが、「本当にそれでよいのか?」とする意見もあります。過量投与時の危険な副作用があるので、やはりその効果は個人ごとに毎月モニターしたほうが良いとする意見です。私もそのように感じる一人です。実際、当院では内服している患者さんに、APTT(これでいいのかも未確定ですが)をチェックしていますが、この値は患者さんでかなり大きな差があります。年齢だけで投与量を決めてよいのか不安です。
ワーファリンは価格が非常に安いですが、新しい薬はかなり高価です。患者さんにとって自己負担額はかなり問題となる場合があります。
心房細動の脳塞栓発症率は、当院では一般平均より低いので(100人弱の心房細動患者さんがいますが、脳塞栓発症はしばらく見ませんので年間発症率は1%前後だと思われます)、発症率をワーファリンよりさらに下げる意義はそれほど大きくありません。従って、それ以外の点で両者を比較検討してみます。ポイントは以下のようです。
・納豆や野菜をどれくらい好むか。制限されても我慢できるか、できないか?
・月一回のモニター検査をどう考えるか。負担か、そのほうが安全で安心か?
・自己負担金の違いをどう考えるか。多い負担は避けたいか、問題ないか?
・過量投与時の対応の差について。心配するか、あまり気にしないか?
・ただし原則として、認知症になったらどちらの薬も継続は困難となります。間違いが起こりると危険です。
まず患者さんご自身がこの検討ポントをよく考えてから主治医と相談し決めてください。医療の側だけで決められません。
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