現代の日本人は太りすぎと繰り返し言ってきましたが、患者さんも「分かっているんですが、痩せられないんです」とよく言います。実際痩せるのは大変難しいのは事実です。
「食欲」は生きるために最も基本的な本能的欲望ですから、人間にとって最強の欲望でしょう。この強力な本能的欲望に理性で打ち勝って痩せられるわけですから簡単なわけがありません。
皆さんに痩せてくださいと毎日のように申し上げますが、実際に痩せられる方は少数です。男性と女性を比較しますと、明らかに女性が痩せられないようです。
男性では、相当な減量に成功する方がチラホラといます。しかし女性でそれだけ痩せられる方は稀にしかいません。
なぜ女性は痩せられないのか長年不思議でした。女性が男性より意志が弱いわけではありませんし、知的に劣っているわけでもありません。それなのに痩せるに関しては明らかに男性に劣っているのです。
最近この理由は、女性にしかない「妊娠・出産」ではないかと想像しています。その時、女性は必要以上の栄養と体力を保持していなければなりませんから、食欲は男性よりさらに強くなるよう生まれながら脳内に事前設定されているのかも知れません。
そうでなければ男性に比べ、女性の「食へのこだわり」と「痩せられない」理由が見つかりません。
減量は、運動ではなく、減食を中心に
減量をお願いすると、ほとんどの患者さんは「運動しないといけませんね・・」と言いますが、痩せるための運動量は相当な量ですから、運動だけで十分に痩せることはまず不可能です。
たとえば、運動として毎日時速7キロで30分間のジョギングをしても(これはかなりの運動です)、毎日リンゴ一個を食べるか、ご飯を軽く一膳多く食べれば、その運動による体重減量効果は消えてしまいます。如何に運動では減量が困難かの一例です。
普通の社会生活をしている成人では、運動する時間に制約がありますし、減量できるほどの運動量は疲労が残り翌日の仕事にも支障が出るでしょう。決して不可能ではありませんが、ほとんどの方は運動だけで目的の体重まで減量はできません。
私の患者さんでそれが出来た方がいますが、その運動たるやものすごく、毎日会社までの片道15キロを歩いて通勤したのです。毎月3,4キロ痩せていきましたが、こんなことは普通では考えられません。
運動は心肺機能を活性化させますし、全身の筋肉骨格も強化できます。ぜひ続けていただきたいのですが、体重減量に関しては、食べる量を減らすことで実現してください。
減食は確実に減量効果が出ます。ただし、空腹に耐えられるかどうかが最大の壁となります。
減量は、まず目標体重を決めて
目標体重は現在の体重といくつかの因子を加味しなければなりませんので、主治医とよく相談してください。しかし一般的にはBMIが22の体重であると考えてください。
体重の減量は月に2キロ前後で十分ですが、毎月コンスタントに減量してください。この方法には無理がありません。一気に減量するのは危険ですし、リバウンドが出やすいので避けて下さい。
食べる量(カロリー)を減らしてください。自分が毎日食べる量を徹底的に洗い出してチェックしてください。不要で無駄なものを漫然とたくさん食べていることに気付くでしょう。
口に入るものを徹底して減らすことです。一日の摂取カロリを制限しそれ以上食べないことです。その計算式は、
一日の摂取カロリー = 目標体重(Kg)X25Cal
に設定してください。この体重は現在の体重ではなくて「目標体重」です。たとえば75キロの人が目標体重を65キロにするなら、一日摂取は1625カロリーです。
大雑把には、朝400カロリー、昼に500カロリー、夜に700カロリーです。三度の食事だけで、間食は全くなしです。調べると分かりますが、このカロリーはかなり少ないと感じるでしょう。
逆に言えば、いかに今のあなたは必要以上の無駄なカロリーを摂り過ぎているかです(過食なのです)。本当はこの程度で十分なのです。
減食について、晩酌は止める(アルコールが意外に高カロリーです)、デザートや間食はすべて止める、三度の食事のおかずを減らす、カロリーの多い揚げ物、アイスクリーム、チョコレート、ケーキなどは止めるなど、工夫はそれぞれ個人の事情もありますから、自分に合った食事の減量を計画してください。
それを徹底して長期に継続することが大切です。
簡単な道ではありませんが成功を祈ります。
次回は、「◆037 運動療法は、運動機能アップを目標に」です。
以下の「特集」も参考になると思います。