■2017.06.29
突然、首の激痛になって
両親から丈夫な体をもらい、これまで大きな病気と言えば、高校時代に柔道の受け身を失敗して左肘を脱臼したことくらいしかありませんでした。ここに開業して20年以上の間、病気で休診したことは1日もありませんでした。これまでの人生は幸運にも大変元気でこれました。
そんな私でしたが、4月上旬に、10年以上続けているいつもの運動中に首の状態を悪くして、起きられなくなってしまいました。頸椎症性神経根症という病気です。首から肩が強く痛みます。特に起き上がると自分の頭の重みで痛みが更にひどくなります。発症後の3週間は首の痛みのため起き上がれなく、ひたすら鎮痛薬を飲みながら寝てばかりの生活になってしまいました。起き上がると痛みが強くなって10分と起きていられないのです。
静かに休んで病気が回復するのを待つしか方法がなく、鎮痛薬と安静で過ごす日々になりました。発症後3週間が過ぎてようやく2時間程度の診察が出来るまでに回復しました。3ヶ月後の今ではほぼ普通の状態で仕事も出来る様になりました。
病気で健康を損ない休むしかない経験は人生初のことでした。安静ばかりが続く時は佳子先生の仕事の負担が大きくて、何とか早く復帰しなければと焦りもありましたが、どうしようもありません。
一番大変な時期に、陽介先生と彩子先生も臨時で診察のコマ数を増やしてくれました。大いに助かりました。何とか苦しい時期を乗り越えて、今ではほぼ通常の診療体制まで復帰しています。
このブログの更新も、寝てばかりの時は痛みでとても書く気になれず書き溜めてあった記事を発表していました。その書き溜め記事も遂に底を突き、一回だけは投稿できない日がありましたが、今は何とか投稿原稿を書く作業も再開しています。
病気の経験で学んだこと
病気で苦しい3ヶ月間でしたが、良い経験になったこともありました。患者さんの痛みで鎮痛薬を出すことはよくあります。しかし鎮痛薬の副作用を恐れるあまり、患者さんの希望どおりにはなかなか出せませんでした。今回の経験で、このことを深く反省しました。
痛みが非常に辛い時は、医師として鎮痛薬の副作用に配慮しなければならないのは当然ですが、患者さんの立場に立てば、とにかくその辛い痛みを何とかして欲しいのは本当に切実な願いなのです。痛みの辛さの深刻さを、自分の身を以て体験できたことは今後の診療にとって良かったと思いました。
とにかく痛みの辛さは経験した人にしか分かりません。痛みがどれほど辛いかを自分が体験したことは、医師として勲章になったと思います。
病気になりたくないのは誰も同じことです。しかし病気は突然襲ってきます。いろいろな病気を経験し、その苦しみ辛さを体験できた医師は患者さんの気持ちが非常に良く理解できるでしょう。当事者と同じ立場になって親身な治療が出来るでしょう。血の通った医療になると思います。
医師は自分自身が完全に健康でなければ、診療で持てる力を充分に発揮できません。それは今回の経験でよく分かりました。しかし、自らも病気を経験しないと患者さんの病気の辛さが本当に理解できないこともまた確かです。矛盾していますが、良い医師であるためには大切な二面性だと思います。
今回多くの患者さんから、「先生もどうぞお大事にして下さい」と心から慰め励まされました。本当にありがたいことでした。
自分が病気になって診療が出来なければ、多くの患者さんに多大なご迷惑をかけてしまいます。今後は今まで以上に自分の健康に留意して、休まずに診療を続けていきたいと思っています。
・・・ この記事は、<院長の閑中余話> で投稿しました。