摂食障害とは
日本には摂食障害を抱える患者さんは3万人近く。摂食障害の起きる原因の主なものはストレス性ですが、これに様々な相互的要因が重なって発生します。
痩せたいという要因に特化するのであれば、職業的に痩せなくてはいけないモデルやスポーツ選手や、そして若い女性がその他の層よりも発病率が高いと言えます。
しかし摂食障害の必ずしもすべてが「痩せたい」という気持ちから発症するものだけでありません。
現在のストレス社会の中では、老若男女問わず、食べることでストレスを解消しようとする人は決して少なくありません。
そして食べ過ぎてしまう原因がストレスによって引き起こされていることを、本人が自覚していなかったりします。自分が無意識に食べ過ぎてしまっているのは一体なぜなのでしょうか。
拒食症と過食症
摂食障害は大きく分けて、拒食症、過食症に分類されます。実は拒食症から過食症に移行するケースは過半数以上であり、ステージによって症状が変化していくことはよくあります。
拒食症は、己の強い意志で食事をすることを拒み、明らかに痩せていきます。過食症は、自分でコントロールすることができないほどの強い食欲に襲われ、たくさんの量の食べ物を一度に食べてしまいます。
その後で食べ過ぎた罪悪感から嘔吐を繰り返す場合と、嘔吐せずに徐々に体重が増えて行く二つに分けられます。一般外来で比較的多いのは嘔吐のない過食症でしょう。
過食嘔吐症の食事
過食症状は、自分がこれ以上食べられない、という限界まで食べ物を胃の中に入れます。
家の中になければ大量に買ってきてまで食事を続け、お腹がいっぱいになると次は罪悪感で気持ちが落ち込み抑うつな状態になりします。
そして食べたことを「ゼロ」にするため、口に指を入れて嘔吐を繰り返します。この代償行為は、嘔吐でなく下剤を使う場合もあります。
下剤は頻用すると次第に効果がなくなるので、量が増えていきついにひどい便秘になってしまいます。
傍目からではわからない過食嘔吐症
拒食症のように低体重で痩せすぎであれば誰の目にも明らかです。しかし過食嘔吐症は、代償行為のために普通の体型の人も多いので、他人から気づかれにくいのです。
嘔吐をくりかえすことで逆流性食道炎や胃酸で歯が変形を起こしたりします。何よりも自分自身が過食症であることに罪悪感に苛まれ、それでも自分一人の力ではやめられずに辛い思いを抱えています。
どうしてこんなことを?
実は食べ過ぎてしまうやめられない行為は、脳の働きと関係しています。過食症の患者さんで好きで食べ過ぎている人は一人もいないでしょう。そうすることでしか自分の生活のバランスを保てないために、そうせざるをえない状態なのです。
では、次回は食べ過ぎてしまう脳の働きについて、お伝えしていきます。
【神経性過食症/神経性大食症】
A.反復する過食エピソード。以下の両方によって特徴づけられる。
(1)他と区別される時間帯に(例:任意の数時間以内に)、多くの人が同様の状況でその時間内に食べる量よりも明らかに多い食物を食べる。
(2)そのエピソードの間は、食べることを抑制できない感覚(例:食べるのをやめられない、または食べる物の量を抑制できない)。
B.体重の増加を防ぐため反復する不適切な代償行動。(例:自己誘発性嘔吐、緩下剤、利尿剤、その他医薬品の乱用、絶食、過剰な運動など)
C.過食と不適切な代償行動がともに平均して3か月間続いており少なくとも週1回は起こる。
D.自己評価が体型や体重の影響を受けている。
E.その障害は、神経性やせ症(拒食症)の期間にだけ起こるものではない。
(DSM-5の診断基準)