どんな食生活がいけないの?
それでは逆流性食道炎の原因となる食習慣をあげてみましょう。
1. 日頃の飲み会や食事会での食べ過ぎ
もともと逆流性食道炎は欧米に多い病気でしたが、近年は食事の欧米化に従い若年者中心に日本で増加してきました。普段からファーストフードや洋食、ラーメン・炒飯などを多く食べている人はもちろんのこと、外食や食事会、飲み会などでは、普段食べ過ぎに気をつかっている人でも他の人と一緒に食事をすると、ついつい多い量の食事をしがになります。油の多い食べ物や、肉などのタンパク質は胃酸が多く分泌されるため、これらをたくさん食べることで胃が拡張し下部食道括約筋が緩みやすくなるのでさらに胃酸の逆流が助長されてしまうのです。
2. 仕事やストレスでコーヒーが手放せない
忙しくストレスの多いこの現代社会です。特にデスクワークの男性は仕事中にひっきりなしにコーヒーを飲み、7〜8杯も1日にコーヒーを飲んでいるという方がいます。しかしカフェインは胃酸の分泌を促進させるためこの習慣が食道に負担をかけてしまうのです。
3. スイーツ好きと、それから辛党
甘いものの中でも特にチョコレートは胸焼けを引き起こしやすく、他様々な甘いお菓子には脂肪分も含まれているため胃酸の分泌を促進させるとともに食道下部食道括約筋を弛緩させてしまいます。また辛いものでカレーなどは香辛料に加え脂肪分と糖質がふんだんに使われており、逆流性食道炎には天敵の食べ物の一つです。辛いもの好きな人は、カレーやキムチに限らず、いろいろな食事に香辛料を振りかける癖が付いています。お菓子好きや辛い物好きな人は、頻繁に摂取してる可能性がありますので、これらの食事スタイルを控える心がけをするだけで、逆流性食道炎の症状がかなり改善することがあります。
4. お酒は毎日飲んでいる
毎日の飲酒習慣のある成人男性は実に半分以上でしょう。食事の食べすぎはない、という人でも、飲み過ぎているということに思い当たる人はいると思います。アルコールは胃酸の分泌を促進し下部食道括約筋を弛緩させるので、お酒好きな人は要注意です。さらにお酒の中でもビールやハイボール、サワーなどの炭酸が入っているお酒は、げっぷとなり飲んだものが食道に上がってきやすくなるので、食道に胃酸が流れ混みやすくなります。たくさん飲んですぐ寝てしまうと、さらに胃酸が逆流しやすい体勢になるので、好ましくありません。
逆流性食道炎の合併症って?
逆流性食道炎が繰り返されていると、食道の粘膜(扁平上皮)が胃粘膜(円柱上皮)に近い粘膜に置き換わってしまいます。置き換わった粘膜をバレット粘膜といい、このバレット粘膜から腺癌が発生することがあるのです。欧米では食道癌の約半数以上がこのバレット粘膜を発生母地としており、これまで日本では食道癌の90%以上は扁平上皮から発生する癌でしたが、最近はライフスタイルの欧米化で腺癌が発見されるようになり、将来的にはこのバレット食道癌の増加が危惧されているのが実態です。ではバレット食道があるかどうかを確認するにはどうしたらいいでしょう。胃カメラの検査を行い、粘膜の変性を医師が確認するしかありません。実際に確認された場合には、定期的に胃カメラの検査で癌ができていないか診ていくことが、癌の早期発見・治療につながります。もし逆流性食道炎の症状がある場合には、上部消化管内視鏡の検査(胃カメラ)をきちんと行い、自分に粘膜の変性が起こっていないか確認するべきでしょう。
逆流性食道炎を治すには
時々誤解されていますが、逆流性食道炎は、治療をやめてしまうと再発する難治性の場合を除いて、基本的には治る病気です。
まず、前回と今回の二回に分けて生活習慣と食生活での原因をお話してきました。自身で胸焼けや胃酸の逆流や胃痛の症状があるという方は、これらの中で思い当たる原因を取り除くということが、まず初めに行う治療です。そして、肝心の逆流性食道炎に対する専門的な内服薬というと、これは胃酸の分泌を抑制するPPI(プロトンポンプ阻害薬)という市販では売っていない薬の治療です。いくつか種類がありますので、種類を変えたり徐々に薬の量を変更しながら症状が改善するまで内服を続けます。その他、症状に応じてヒスタミン受容体拮抗薬(H2ブロッカー)や胃粘膜保護薬や制酸薬を使います。症状が長年続いていても放置している人もいますが、逆流性食道炎を繰り返すことでバレット食道を発生させ、ひいては食道癌のリスクが出てきます。しっかり治療をすることをお勧めします。