「○○を飲むと××の病気が治った」
こんな情報や広告があふれています。その病気の人には思わず飛び付きたくなるものもあります。さまざまな商業的な健康情報をどう判断すればよいのでしょうか。よく質問されます。
ここでは当院でどのように薬を評価して多くの薬の中から採用する薬を決めているかをお話します。
古くから歴史的に長く使われた薬は医学的に評価が定まっています。そんな薬の選び方は比較的簡単です。これからお話するような厳格な基準ではありません。
古くからの薬でも新しい薬でも当院で重要視する薬の評価ポイントは薬の効果、安全性、副作用、製薬会社(信頼できる会社)、製造国(国産優先)などの順番です。最近はそれに価格も加えていますが(安いほうが良い)、価格はあくまで参考程度です。効果と安全性を最も重要視します。
優れた効果ありとする基準
新しい薬が発表された時、その薬の効果を評価する上で以下の7つの条件を考慮します。この基準は薬剤がその病気に効果があるのかどうか判断する際の厳密に科学的な基準です。
この基準に耐えられる薬が本当に有用だと考えますので、その薬だけを採用検討の対象にします。
もしこの基準を満たしていないなら、その薬の効果は必ずしも信頼できるものではないが基本的な立場です。
1)研究論文として医学専門誌に掲載されている
2)病気の患者を対象とした医学研究から得られた結論である
3)対象患者数が充分に多い(1,000人程度以上)
4)対象患者を無作為に分類している
5)長期(2年間以上)にわたる患者の追跡調査をしている
6)研究方法やデータ解析手段の信頼性が高い
7)同じような結論が別の研究でも支持されている
医療の世界では薬剤・食事・栄養素等と健康・病気との関係を調べる場合、この様な非常に手間も費用もかかる研究をすることが普通なのです。新薬の開発や医学医療研究には従って膨大なコストがかかるものです。
自分が飲めない薬は処方しない
薬の効果が確認された上でさらに安全性、副作用、製薬会社(信頼できる会社)、製造国(国産優先)、価格も加えて検討します。
そして最後に自分がその病気になった時、自分でその薬を使うかどうかも考えます。もし自分では飲みたくない薬であれば採用しません。自分の患者に投与はできません。
画期的な薬は6ヶ月間待機
画期的な薬が開発に成功し新しく発売されることが時々あります。学会では注目され私たちも高い関心を持ちます。しかしこのような薬は多くの患者さんに使い始めてから思わぬ重大な副作用が発見されることが時にあります。
そのリスクを回避するため問題が明確になるまでの期間(約半年)は様子を見て採用しないで待機するのを原則にします。
長期的に安全性が確認されてから採用検討を始めます。科学的評価に耐えられた薬剤効果の高い安全な薬だけを患者に使っていきたいと考えています。画期的新薬は発売されてもしばらく使いませんので少しお待ちください。
最終判断は臨床経験で
新しい薬剤を採用する時には以上のような手順に沿って薬剤を評価検討しています。しかし薬が同じ作用で似たようなものが複数ある場合はその中の一つを選ばなければなりません。いろいろの条件を考慮し最後は私の臨床経験から判断します。
使用中の薬も監視
採用し処方している薬でも何か問題があると厚生労働省や新聞テレビなどで情報が公開される時があります。その情報は確かに重要ですが、採用を中止するかどうかは多方面から情報を集め総合的に判断します。
これまで数回、使用中の薬を中止する機会がありました。患者には何も問題がなかったのですが将来の危険性を勘案し理由を説明し薬を中止しました。