要約:今回はお腹を壊す代表的な病気である急性胃腸炎の時の食事についてのお話です。基本的には食事自体が胃腸の刺激になって症状を悪化させますから、重症であればあるほど、しっかりと絶食して、点滴による栄養補給をお勧めします。嘔吐や腹痛がよくなったあとの数日間の回復期の食事については、胃腸に刺激の少ない消化吸収のよい食べ物を摂取して、症状の再発を防ぎ病気の治癒を促すのがよいでしょう。
”彩子先生執筆”
”彩子先生執筆”
大きく分けて、胃腸炎の原因にはウィルス性と細菌性とがあります。ウィルス性の流行期としては冬に多く、例として貝の生カキによるノロウイルスなどが挙げられます。感染した人の嘔吐物の処理やタオルを共有することでうつるため感染が広がります。細菌性の胃腸炎は夏に多く、食べ物の加熱調理の不足や、暑さでいたんだ食品によっておこることがあります。
ウイルス性は比較的早く発症します。症状も軽く治癒までの期間が短く、治療の抗生剤は必要ありません。 自然の経過で治ってしまうこともしばしばです。細菌性はウィルス性と比べて症状が強く重症になることがあり、治療は抗生剤投与が勧められます。
風邪に似た症状が先行することがあり、喉の痛み、鼻水、咳、発熱、頭痛、関節痛などを呈する場合があります。胃の症状として、胸焼け、胃のあたりの痛みや不快感、吐き気や嘔吐です。腸管に炎症が及ぶと、5~15分おきに痛みが波のように押し寄せては消えていく間欠性の下腹部痛、そして泥状から水の様な下痢になります。種類によっては血便を呈する場合があります。一日十数回ほどあった下痢が徐々に減ってお腹の症状が収まってくれば、ピークは過ぎたと考えます。
治療は、脱水に対して一般的には点滴による補液を行いますが、嘔吐が軽く口から食べられるなら十分な水分を取ることが大切です。一日に2リットル以上の水分摂取が必要ですが、下痢の時に飲んだ水分が吸収されずにそのまま便から排泄されてるなら、腸管の炎症が強く水分の吸収が悪いので点滴による補液を行う必要があります。原因となる菌を速やかに体外に排泄したほうが治りが早いので、下痢止めの薬は使わないのが普通です。
症状がひどければ、基本的には絶食して点滴による治療がベストです。嘔吐や腹痛が改善したあと数日間の回復期は、普通食より胃腸に刺激の少ない消化吸収のよい食べ物を摂取して、再発を防いで改善を促すのがよいでしょう。食物は少しずつ少量を5〜6回に小分けして摂取しましょう。摂取するものは一般的には、おかゆ、うどん、バナナなどのやわらかくて消化のよいものを少しずつ食べるのがよいでしょう。チョコレートや飴を一口食べるのも糖分摂取としてはカロリーが多くよいでしょう。
胃腸を刺激するような飲み物・食べ物は避けます。固いもの、辛いもの、冷たいものはよくありません。具体的には、脂の多い食べ物、肉類やカップラーメン、消化に悪い根菜類やきのこ類、柑橘系のフルーツなどです。刺激の強い香辛料系やカレーなどもよくありません。食物繊維の多いものや、スナック類もやめましょう。意外に知られていないのが乳製品です。これも消化に悪いので避けましょう。
腹痛や下痢がひどい場合には、細菌性胃腸炎の可能性がありますので速やかに医療機関で治療を受けましょう。特に高齢者や乳幼児では脱水による体力低下が著しいため、家族がそれに気づいてあげることが大切です。