心房細動があっても病気に気付かず非常に重症な脳卒中になってしまった50歳代男性を紹介します。脳卒中発症後は心臓病も同時にきちんと管理・治療して二度目の脳卒中はなく、また奥様の献身的なサポートで右側の重い片麻痺も相当程度回復しました。そんな例を少し詳しく紹介します。
50歳代で重症な脳卒中に
当院に通院中の発作性心房細動(時々心房細動になるがその不整脈は直ぐ治る病気)です。大手会社に勤める当時50歳代の男性会社員です。比較的軽い高血圧で近くの病院に長く通院し治療していました。
9年前の真夏の夜7時半頃、風呂から出てきたところで突然発症しました。目は開いていますが言葉は出なく、右側の半身が完全に動かない状態です。救急車を呼び近くの脳神経外科に運ばれ入院しました。
心房細動から重症脳卒中に
患者には発作性心房細動があったので、そのために心臓内に血栓(血液の小さな塊で心房細動の時には出来やすい)ができ、その血栓が心臓から血流に乗って流れていき脳のかなり太い血管を詰まらせて突然重症な脳卒中(脳塞栓という)を起こしたものと入院先の病院で診断されました。
急性期の治療を乗り越えた後も重い後遺症が残るため、一年後に遠方でしたがリハビリテーション専門の病院に転院し、機能回復訓練を続けました。
発症して2年が経過し、自立歩行がある程度可能なまで回復しました。自宅で発声訓練と運動機能訓練を続けながら元の近くの脳外科で通院治療を再開しました。
狭心症と心房細動の症状が同時に出現
その頃、以前にもあった胸が痛むとの症状で初めて当院を受診しました。前は短時間でしたが今朝は6時半頃から今まで長く続くと診察室で一緒 の奥さんが話します。
心電図では軽い不整脈と狭心症様の心電図変化があり胸が痛い症状の原因が不整脈なのか狭心症なのか即座には判断がつきません。
その後のホルター心電図(24時間心電図)や症状と薬の効果の関係を総合して、狭心症による胸痛症状、軽い一時的な不整脈の胸の症状、心房細動発作による胸の症状の3種類の胸の症状の混在と判断しました。
この段階で脳塞栓を発症してから既に2年が経過していました。軽い不整脈を抑える薬、心房細動発作を抑える薬、狭心症の治療薬を同時に強化しま した。それまで脳外科で内服していたワーファリンは増量し以後はワーファリン管理も当院で担当することにしました。当院で狭心症と心房細動と軽い不整脈の3つの心臓病の治療を開始しました。
狭心症と心房細動は3年で安定
治療開始後は狭心症発作と心房細動発作の回数や頻度が徐々に減り始めました。同時に軽い不整脈も消失しました。3年後には発作はほとんど消失し安定状態に入りました。現在は当院受診から7年たっています。滅多に発作はおこらなくなっています。
奥さんの献身的な支えで脳卒中後遺症のリハビリを精力的にこなしながら、右側の片麻痺もかなり回復して毎日4~5Kmを60分で散歩できるまでになっています。
ワーファリンのコントロールは良好です。短時間の心房細動発作は年に一回あるかないか、症状はあっても非常に軽くあまり軽いのであったとしても自分では分かっていないかも知れません。狭心症発作は全くありません。薬でかなり抑え込まれています。
当院で治療開始から3年位した頃、心臓の発作がほぼ消えたためか診察中に笑顔が多く見られ始め会話は依然として不完全ですが表情は明るくなりお元気そうです。
この様に心房細動には症状が軽いか無症状に近いステルスの患者がかなり多くいますから、こんな危険な患者をどう治療に結びつけていくかが大きな悩みです。
軽い症状で放置する不幸
非常に軽いか無症状であれば心房細動を発見できず治療も出来ません。結果的にの患者の様に重い後遺症の残る重症脳卒中(脳塞栓)を起こす悲劇になります。心房細動の軽い症状はかえって不幸だと思います。
突然症状が起こるが直ぐに治ってしまう発作性心房細動であれば、心房細動になっている時間が短くて病気を自覚しにくいだけでなく、その時でなければ検査しても異常所見がなくて病気を発見しにくいことです。
症状が軽かったり無症状なら患者が病気を見つけることは至難です。残念なことです。
心房細動症状の特徴は別の項でしました。>続きを読む
続く・・・
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